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死んだら猫った!  作者: 青藍蒼
神さまと猫
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39.赦されざる失態(side:エクラ)




昨日の夜、スキアーがフィオ―レの部屋に行きにくいだろうから身支度は明日の昼までは自分が変わろうと申し出てくれた。

少しの間であったとしても、エクラにとってそれはありがたい申し出だった。


どんな風にして、どんな顔をしてフィオ―レに接するべきか接しなければならないかエクラわからなくなっていた。


「だが、貴女には貴女の仕事があるのでは?」


「気にしなくていいです」


笑う女の全体の顔は見えない。口だけが目には映る。


「ありがとう、明日の昼まで頼む……」


今思えば、彼女は知っていたに違いない。グローム王がここに来ると。でなければ、こんな風にフォーレが逃げ出せるはずも、何もなかった。






猫の鳴き声にエクラは足を走らせる。


さきほどまで自分が居た場所から声は聞こえてくる。走って、走って彼女は知る――また、自分は間に合わなかったのだと。


白い猫は横たわり、フィオ―レは泣きながら悲鳴をずっと上げている。自分の主である男だけが冷やかな目で全てを見ていた。


(いつもなぜ、守れない!?)


心音の煩さと頭痛で倒れそうだった。




「ソラさん! ソラさん!」


フィオ―レのピンク色のドレスは赤を吸ってどんどん汚れていく。


「フィオ―レ様、離れてください。お召し物が汚れます」


「なんて、酷いことを……み、んな私のことなど、放っておいてくれればいいのに!!」


想良は既に手遅れだ。息をしてない。

名前を呼んでももう、聞こえていない。


「立て、フィオ―レ」


「嫌です、いや!」


無理やりオーディオがフィオ―レを立たせたために小さな猫の体はべちゃりと地面に落ち、醜く形を変える。


(手の届かないところへソラをやらねば……)


目の届かぬ所へやればフィオ―レは落ち着くだろう。

主に合図を送り、猫の体へ手を伸ばす。


「ない……」


すぐそこにあったはずのものがない。


血の跡もなく、何もない。

フィオ―レの服に付いている汚れは、土の汚れだけだ。






「無理やり女を手にする男は屑だと知りなさい」






聞いたことのないほど、涼やかな声だった。

フィオ―レの手を掴んでいたオーディオの手の上に、別の誰かの手が加わる。


「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


空間がえぐられたように、オーディオの手が消える。


白い髪、青い瞳。

先ほど死んだ猫と同じ配色をした青年がいつの間にかそこに居た。



「アーグア」



誰が口にしたのか、エクラにはわからない。


オーディオは地に伏し、いつの間にか、シャルロットとスキアーが目の前に立っていた。


「屑の味方ですか? どうでもいいですよ、もうこの世界を生かすことはしませんので」


全てが遠く、冷ややかだった。


「すでに、生と死は等しくなりました。何もかももう、――手遅れです」



次、閑話。こんなことをしておいて、閑話!!

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