34.自称神さま現る!3
部屋を出てようとして、エクラに捕まったのは想良にとっては不意の出来事だった。
なので首を掴まれたのに対し、独り言ちってしまった。
『ちょ、メイドさん来るの遅いから! いや、今だと早い……?』
「あ」っと言う声と同時に、部屋の中の跡がばれたことに項垂れる。
(俺じゃないんだけど……)
エクラにも言葉が通じればいいと心底思った。
「これはなんだ、馬鹿猫」
『違うって、俺じゃないって変な自称神さまがやったの!』
今回ばかりは悪いことをひとつもしてないので、怯むことなく叫ぶ。言葉が通じなくても、とにかく訴える。
『シャルロット、言ってやって、俺じゃないって』
「さあ」と促すとシャルロットはバタバタと羽根を振った後、想良を指した。
「ぐげえ!」
『それじゃ、俺犯人!!』
肉球のついた手で頭を抱える。
(えー、マジ使えない。何コイツぅー)
シャルロットの使えなさに涙が出て来る。居てほしい時は居ないし、助けてほしい時はピンチに陥れてくる。
(俺、絶対こいつと相性悪い……)
「一体どうやってこんなことをしたんだ、まったく」
『ホントに無実なんだってばぁー』
ブツブツと怒るエクラ。
怒る姿は嫌いだと思っていたがしょげている姿よりかは好ましく思えて、嗤う。
食卓で既に席についていたフィオ―レはエクラから事の顛末を聞かされて、目が零れ落ちそうなほど驚いていた(家が燃やされて驚かないわけもないけれど)。
「ソラさんがやったの?」
『やってなーい』
首をブルブル振る。
「誰がやったかはこの際置いておきましょう。家の中には誰かが入って来た様子はないようですが……万が一のことを考えフィオ―レ様、当分の間はお部屋から出ないようにお願い申し上げます」
「裏庭にこの後、ソラさんと行く予定なのだけれど」
「やめていただきます、御身のためです」
フィオ―レが大きな溜息を吐く。わざと吐いたのだ。
「大事にする身でもないのですけれど……ね。食欲が失せたので、下げてください」
席から立ち上がると彼女は、扉へと歩く。
(えー、食べないの?)
料理は運ばれてすら来ていない。昼間は食べた姿を見たが、朝はわからない。
細い体が一日一食では更に細くなってしまうではないか。
「あ、そうだ。部屋から出ない代わりにソラさんを部屋に居れてもかまわないわよね?」
「……ご自由に」
「よかったわ」
にっこりと差し出された手に想良は、重たい足取りで向かう。
さっき逃げ出した手前腕の中は、居心地が悪かった。
でも、逃げ出さなければ一緒に裏庭に行けただろうし、家の中に焦げ跡を二つ作ることもなかったわけだと思うと非がこちらにあるような気もする。
(けどさ、俺が家の中に居たからこそ二人に被害がなかったわけで……)
『にゃー』
逃げ出したいと思って、意味もなく鳴く。
音が溜め息の様に聞こえた。




