31.何も考えない猫3
(「ずっとソラさんとここでこうして居たいわ……」)
(「もしかして、私の心配をしてくれているの?」)
(「優しいのね」)
頬張った菓子はまるで砂の様に味がしない。
(打算だっつの)
顔の周りを舐め、手で拭く。
案の定、外から戻ったフィオ―レは疲れたようでロッキングチェアに深く身を沈めながら紅茶だけを飲んでいる。
(熱中症とか……。普通に考えたらわかんだろ、気温高ぇし、ここ)
おくびにも出さず心の中だけで思う。
「ソラさん美味しい?」
『ぜーんぜん』
可愛らしく声を高めで鳴く。
「そうよかった」
(俺のこととか理解しようとしなくていいっての……)
穏やかに微笑まれるほど、その笑顔が嫌いになる。
自分だけへの優しさ――ソラへの優しさ。
(猫のソラだって割り切れなくなりそー)
段々心が重くなる。
(部屋に帰りたい。もう、布団かぶって寝たいし)
眠ることを考えたせいで、あくびが出た。
「眠いの?」
『にゃー』
猫語で頷く。本当はここに居たくないだけだけど。
(だから、うんな顔すんなつーの)
突き放せばすぐに悲しげな顔をする。
他の誰が同じことをしてもそんな顔をすることなどないくせに。
「おいで、部屋まで運んであげるわ」
優しい手、傷つける手。
『一人で行けっから平気よ、おやすみん』
温もりを避け、歩き出す。
「あ」
決して振りかえらない。猫だから。
☆★☆★☆★
(布団かたーい)
甘い匂いはフィオ―レを思いだすので、部屋に置かれたソファーのクッションの上で丸くなる。寝具のそれとは違いだいぶ堅い。
『シャルロットー、ひまいー』
相変わらず居ない奴に怒りの矛先を向ける。
(退屈は猫をも殺す!!)
夕飯まで陽の傾きから二時間はある。
この暇な時間をなんとして潰すべきか、それが問題である。
『よし、死んだら次は鳥になる、俺は自由に飛ぶ!!』
鳥だって羽を休める木がなければ自由などないと、知っているけれど。
空を飛ぶ鳥は地に這うだけの存在からすれば自由に見える。
(今度、シャルロット見たら羽根に乗って空飛ぼう! 口じゃなくて!)
窓の外をただ、見つめる。
(海の匂いのしないこんな場所など、雨に濡れてしまえばいいのに)
何も考えたくないのに、考えをやめることすら許されない。
(世界うざすぎる)
あざとく猫の口で笑う。
言葉がわからないことをいいことに、嘘ばかり吐く。
想良視点がやたらと面白くない。そして、ゲームしてたら投稿忘れてた。明日こそ、神出す!