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死んだら猫った!  作者: 青藍蒼
猫の暮らしも楽じゃない
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閑話:友達(side:ヒロ)




「生きてて、ごめんなさい」


そう言った子供をおれは殴りたかった。

「じゃあ死ぬか?」と、殺したかった。


しなかったのは単に、想良がせっかく守ったものだったからだった。






前島広人が、おれの名前。「ヒロ」って想良からは呼ばれていた。


あだなだと思えばそれでいいのだろうけれど、想良は人の名前をいい加減にしか覚えないやつだった。

十時はきっと此方ってのを間違えられたまま「小坂」って呼ばれているんだろう。


訂正すればいいかと思うだろうけれど、想良は訂正を「わかった」って聞いたフリしかしない。


酷く適当で、残酷なことも平気でする無神経な性格で、いいところなんて皆無に近かったけれど、普通とはどこか違ったカリスマ性みたいなもんがあった。




でも、ほんとのところそんなことはどうでもよかったんだ。

やつはおれにとって初めてできた友達だったから。




想良と会ったのはおれが十歳の夏だ。隣に水縁一家が引っ越して来たのだ。


おれは同い年の子供よりもずばぬけて体格が良かった。

遊ぼうとするといつも誰かを怪我させて友達がいなかった(同じような体格の歳上の子も怪我させた)。


だから、遊び相手になってくれるだろうかとすごく期待して会いに行った。

青い目をした子供は、日本語を一切喋らなかった。


おばさん曰く「日本語はわかるから一緒に遊んであげて」って言われて、遊び相手が欲しかったおれは素直に頷いた。

確かに、想良は日本語がわかるようだった。決して、喋る時は英語でしか喋らなかったけれど。


「何して遊ぶ?」


と聞けば。


「Whatever you take(なんでもいいよ)」


と答える。


「何ってるか、わかんねぇ」


と言えば。


「……チッ……」


と舌打ちする。


今は随分と明るくなって……無神経さが顕著になったが、昔は人に絡むのさえ嫌っていた、どこか捻くれた子供だった。


よく「優しさ」が足りないって言われていた俺だけど、こいつに逃げられたらもう友達作りもできそうになくなるし、怪我だけはさせないようにしようと優しくした。






想良が日本語を初めて喋ってくれたのは「学校でも日本語を喋らないけど、広人くんの前では喋ってる?」とおばさんに相談されて「なんで日本語喋んねぇの?」って聞いた時だった。


わけのわからん長い英語を言われた。もちろん、理解できなかった。


「そうか、お前も大変なんだな」


って、適当に言った。


「……わからないのに、返事すんなし、うぜ」



初めての会話である。



「やっぱ、お前日本語喋れるじゃん」


と、笑ったら。


「はー? 意味わからんし、喋れるに決まってんじゃん。俺、日本人嫌いだから喋んないだけ。グランマのために覚えた日本語をなんで、知らん奴に使うのか理解不能ー」


と、まくし立てられた。


「もう、日本語喋んねぇの?」


と、尋ねたら。


「……考えとく」


と、だけ子供はそっぽ向いた。



翌日から想良は日本語を使うようになった。

「友達になってやる、お前馬鹿だから日本語しかわからないだろうから日本語で喋ってやんよ」と、威張って言うので殴った。

「痛い」ってローキックされた。


喧嘩した、友達になった。






あとで聞いた話。

想良は友達になる前からずっと言われたらしい。「前島広人は乱暴者だ」とか、「怪我させられる」とか、いろいろ。


それらをやつは鼻で笑う「で?」って。


仮に前島広人ってのがおれだってわかってなくても、おれのために日本語で喋るようになったことが嬉しかった。


友達でいてくれたことが嬉しかった。


ずるずると悪いほうへいっても一緒に今でも遊んでくれた。




(お前に想良の代わりに生きる権利なんてないのにっ!)




あとから聞いた話。

あの時なんてまくし立てたかは家族について愚痴ったらしい。



弟のことを好きかと聞けば想良は答える。


「嫌いじゃないけどムカツクー」


って、笑う。






青い目は閉じられたまま、開くことはもうない。

似てない子供を睨みながら、おれはただ血がにじむほど拳を握る。



子供はさびしがり屋。次から、三部!

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