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00.スローモーション
初投稿。重要なのはどこまで、はっちゃけれるかだと思ってる。
スロー再生したように世界がゆっくりと流れていた。
目に見えているものや耳に聞こえる音、何一つとして現実味というものはなかった。
水縁想良はこんなことが現実にあるのだなと、思うよりも先に弟の体を思いっきり突き飛ばす。
有らん限りの力で突き飛ばしたので、弟は望んだとおり反対車線に居た。口の端が思わず上がるが、安堵する間もなく、激しい衝撃が体に襲いかかってきた。
一瞬の激痛と浮遊感、視界の片隅に向日葵色の傘が見えた。
「来世は猫になる。しかも金持ちの猫。ゴロゴロして一生過ごすから」と、友人たちに言ってからまだ一時間も経っていない。
馬鹿なことを言ったものだ。死んだら終わりだ。本当に馬鹿なことを言った。
(誰だって死んだら終わりなのに……)
頬を雨が叩いているはずなのに、音もしなければ感覚もない。
痛いと思わなければおかしいはずなのに、何も感じない。
(十七で死ぬとか……)
小さく嗤って、想良は目を閉じた。