25.人間と猫、小さな世界4
メイドさん二号とのお風呂バトル――なかった。
生温いお湯で恥ずかしくなるほど丁寧に洗われただけだった。
『それまではいいとしても、洗ったら外に出すとかー皆鬼畜ぅ』
猫の手では開けることのできない重厚感のある扉の外から吠える。
(今頃、中ではフィオ―レさんがふふふなことに!! だあああぁっ、入りたい!)
スキアーにもまさか、性別差別を受けることになるとは思ってなかった想良だった。
(絶対に覗く!)
やましい下心もあるが、フィオ―レをスキアーと一緒にしたくないという気遣いもその中には含まれている。どちらが大きいかはあえて言わないでおく。
(問題はどこから戻るかだけど……うーん)
扉には入れそうなところはないが、部屋を見渡した限りでは出入り口はここだけ。
(つまり、一端外に出て窓から覗くしかないと)
尻尾をくるんと廻して、開いている部屋を目指す。
☆★☆★☆★
三階を見た限りだと開いているのは端の部屋だけだった。様々な荷物と更に上に続く小さな階段があることから物置部屋として使われているようだ。
『ベランダは出れるっかなー』
早く部屋への通路を見つけないと、フィオ―レの入浴が終わってしまう。
薄らと埃を被った窓枠を押す。案の定、鍵がかかっていた。
『下に一個か、これはいいとしてもどうやって窓持ち上げよう』
かんぬきのように棒を一本通してあるだけの錠なので、こちらは爪で頑張ればいけるだろう。問題は窓を押し上げるような力が想良にないことだ。
しかも、外を覗いても十センチほどの縁があるだけでベランダのようなものはないし、大きな木が邪魔で道を塞がれている。
(ちょっとやっかい? 一応、上も見てみますかね)
上に続く階段を上る。
こちらも似たような窓の造りだ。唯一違うのは、この部屋には天窓があるぐらいだ。
『いけそうになーい、ない』
(女の人が長湯って言っても、もう上がっちゃったかな。えー、どうしよう。いっそのこと、外に出て木登る?)
似たような気が確か、フィオ―レの部屋からも見えていたはずだ。
『うっし、外、外』
意気込んで尻尾をぶんっと振った。
二階までそろりと下りて、エクラが居ないことを確認する。
この階にはシャルロットが外に出るための小さな押し戸がある、うまくすればあそこから出られるはずだ。
(んふふー、今行くからねー)
『なんてこったい』
押し戸の外には一メートルくらいの踊り場があった。
それ以外は何もなかった。
(見渡しよくて泣けるんですけど)
空を飛ぶために見晴らしがよくなっているのだろうけれど、ここからにはフィオ―レの部屋には行けそうにない。
ここの階にも同じように十センチほどの縁がある。行くならば、これを伝って木がある場所まで行くしかなさそうだ。
『男はやる時はやるんだぜ』
小さな足で小さな踏み場を歩く。