07.異世界の街並み
登録、観覧、感想ありがとうございます。これ、意外と読まれてるんだなぁって思いました。
ごっとん、ごっとん。
揺れる馬車。揺れる尻尾。
(なんか、ドナドナな気分ー)
おんぼろな荷馬車ではなく普通よりも少し豪華な馬車で移動しているのだが、生憎こう言う乗り物で移動したことのない想良の頭の中に流れるBGMは有名なあの歌だった。
当初はピクニックに持って行きそうな藁のかごに入れられてから馬車に乗せられたのだが、乗るなり想良はそこから出た。
(狭いし、暗いし、少し臭かった。絶対普段は、食べ物を入れるために使ってるに違いない、間違いない!)
それからは、窓枠に前足を乗せて外を見ていた(ちゃっかりフィオ―レの横を陣取ったのは言うまでもない)。
フィオ―レはクスクス笑っていたし、エクラに頭をひっつかまれたりもしたけれどずっと見ていた。
(ビバ、ヨーロッパ風。……にしても、ここやっぱアニメとかゲームみたいな異世界っぽいなぁ)
最初は、緑ばかりでやや退屈していたもののエクラへの反抗の意思もあり踏ん張って見ていた。
楽しくなったのは街が見えてきた頃だった。
赤レンガの建物、見たことのない形の街灯。カラフルな配色の服。物や人を見る度にわくわくせずには居られなかった。
尻尾も気持ちと連動しているようで、ぶんぶんと音をたてそうなほど左右に揺れている。
『しっかし、ヘンテコな生物が多いんでない?』
始めは見間違いかと思ったが、目に入って来るのはシャルロットのようにいくつもの種類の生物を掛け合わせたようなものばかりだった。
例えば道を歩いている犬もどき。主体は犬なのだが、がっしりとした足は犬というよりもライオンのそれに近い。
(俺みたいな猫もいないしー、変なの)
市場に売っている魚のどぎついカラフルは熱帯魚として許せたとしても、虫の翅や足みたいなものがくっ付いてたりしていた。「うへー」っと言ってしまったのも、食欲がまったく湧かないのも日本の素朴な魚を見慣れているせいだろうが、想良が首をかしげる理由は他にもあった。
人間は至って普通なのだ。
見慣れたアジア風の顔立ちも居れば、西洋風の顔立ちも居る。髪だって、どぎついピンクをした人なんて居ない。黒や茶色、金髪。派手なのなんてエクラのような赤毛ぐらいだ。
「フィオ―レ様、そろそろ神殿です。馬鹿ね……ソラを駕籠に入れましょう」
「そうね、ソラさん。駕籠に入ってくれるかしら?」
『んー、あいよー』
反対側に置かれているかごに向かう。
尻尾が2回ほど、エクラにぶつかったが「事故」である。
次回は神殿。今回短かったのは、ストック作りなんかじゃないですヨ……切りをヨクシタカッタ、だけ。