フシアナ審査員へ鉄槌を
実際に、某私設コンテストに応募するつもりで、にぎやかしに書いた短編です。
主催者様は、このくらいで怒るような人じゃないと思います。たぶん(笑)。
――第二回私設小説コンテストのお知らせ――
SNSでの告知を見て、私は苦笑した。
ふーん、またやるのか。埋もれてる小説家の支援をしたいみたいだけど、しょせんは金持ちの道楽だ。
だいたい、小説家でも編集者でも読書家でもない、「愛読書は四季報」の奴が審査なんかできるもんか。
いや、できてないことは明白だ。なぜなら、第一回で、私の小説を落選させたのだから!
私のような天才の書いた短編を選外にするなんて、見る目がないにもほどがある。
どこの小説賞でも落ちてるけど! どいつもこいつも、なぜ私の才能がわからない!
もしかすると、時代が私に追い付いてないのか!?
だとすると、このコンテストでもたぶん私は落選するだろう。
なにせこの世は、私の小説の良さに気づかない、ボンクラだらけだからな!
そうだ、どうせ落選するなら、嫌がらせの小説を書いて応募してやろう。
タイトルはもちろん、一行目で読む気をなくすような小説。
それでも「必ず目を通す(超大作以外)」と断言したからには読まなければいけないはず!
読むのが拷問のような小説を、力の限り書いてやる。ひひひひひ。
まずは内容だな。ストーリーはどうでもいいのにしよう。何の特徴もないような男女が、どうでもいいことをする、どうでもいい話。うわー、いい感じに内容のない話ができたぞ。やっぱ天才だな私は。
この話に合ったタイトルもつけないとな。とりあえず、ものすごく長いのに、まったく興味をひかれないようなタイトルがいいよな。このどうでもいいストーリーをそのまま書くか。あっラストまで全部タイトルに入っちゃった。ま、いいか。
どうせなら、めっちゃ難読漢字だらけで読みづらくしてみたいが、私の能力的に言葉を知らないので無理だな。残念だがここはひらがなで攻めることにしよう。タイトルは100文字の上限ぴったりで変えられないから、本文のほうを全部ひらがなに変更しちゃえ。
おお、めっちゃ読みにくくなっていく。
うわー書いてても目がチカチカする。読みにくいのはいいけど、書きにくい!
ついでによくわかんないけど旧かなづかいも混ぜておこう。句読点もカギカッコもとっちゃえ。ははは! どこからどこまでがセリフなのかもわかんなくなったぞ! 暗号みたいでおもしろいな! もうなにがなんだか。
よしできた! 完璧な嫌がらせだ! 読めるもんなら読んでみろ! へっへっへ!
◇◇◇
タイトル:好きな人と歩いていたらあっちに行けと言われたのであっちに行ったらなんで行くんだと言われたのであなたがあっちに行けと言ったからだというとそんなことは言っていないというので言いましたよと言ったら謝られた話
本文:やうやうしろくなりゆくそらをみながらわたしはだいすきなをのことてをつないでいつしよにあるいていましたとつぜんをのこがみぎがわをゆびさしあつちにいけといつたのでいわれたからにはいかなければとおもつたわたしはをのことつないでいたてをはなしてあつちへいきましたそしたらをのこがおいかけてきてなんでいくんだとおこるのでなんでもなにもあなたがあつちへいけといつたからではないですかといひましたらばおれはそんなことはいつていなひというのですわたしはおののいていひましたよあなたはいひましたとうつたへたらおれはあつちにいけがあるからいつしよにいこふといつたのだといふのですいけというのはいけじやなくていけだつたのですなんとなんとそれはなんたるかんちがひかとわたしはをのことおほわらひしましたそしてをのこはてれくさそうにかんちがひしておこつてごめんとあやまつてくれたのでしためでたしめでたし
◇◇◇
この小説は「審査員特別賞」に選ばれた。
入賞の理由は「一番印象的だったから」らしい。
なかなか見る目がある審査員のようなので、第三回があったらまた応募してやるか。ふっ。
念のため書いておきますけど、フィクションです。




