花
あなたに咲いた言葉が、私を枯れさせました。
誰にも気付かれず、余生となったのです。
迷いながら、空を見つめていた日々を、よく覚えております。
ずっと閉じていた扉を、こじ開けられたような気持ちです。
色もつかない日々を、歩いていました。
灰色でも、黒でも、白でもない日々を、嘆いていました。
透明だと思っていたのです。
しかし。違いました。
私はもう、塗れるところがなかった。
それは、既に塗られていたなんてものじゃなくて。
描くことができるものが、なかったのです。
キャンバスがありません。画用紙がありません。原稿用紙がありません。
描くことが、出来ないことだったのです。
ええ、そうでした。
枯れたのではないのです。
枯れていたのでした。
咲くこともなく、枯れた姿で生まれたのでした。
一瞬の、生命の煌めきを、感じました。
私にはできないと、わかりました。
道端で急に叫んでやりたいと、思っていました。
目が悪くて、星が降るところは、見たことがありません。
天体の重なりだけは、私にも見ることができました。
幽霊に恐怖したことがあります。
いないいないと思いながら、そこにいる実感がなくならなかったのです。
目に入る髪を、頭を振ってどかしました。
頭から飛び出したいと、思いました。
そこがずっと、好きだったのですが。
誰かが笑っていました。晴れだったようです。
一直線でした。道をずれることはありませんでした。
勝手に歩いていただけですが。
ベッドが好きではありません。
浮いた気がするからでした。
布団が好きではありません。
嫌な思い出があるからでした。
考えることが好きでした。
忘れられるからでした。
自分以外のことに、集中できたからでした。
憶えておきたいものが、ありませんでした。
ですから、今憶えているものを、そうだと思い込むことにしました。
私の意思だったんだと、思うことにしました。
光景が、浮かびました。
もう、戻れませんでした。
音がしません。
いえ、声が聞こえません。
自然の音しか、聞こえません。
パチパチと鳴っていました。
それはもう、息を飲むほどでした。
多くを、憶えていました。
ええ、そうだったのです。
私もう、手遅れでした。
はにかんでしまいました。
それが、証拠のようなものでした。




