醸成される親近感について
襲撃してきた従魔を業火で焼き尽くして、探知魔法を展開した。半径五百フィートには仲間以外の魔法使いの気配は無くて、術者はロック鳥との接続が切れた途端逃げ出したと判断する。
護衛任務を請け負って、最初に殺害された伯爵令嬢はキャンデロロ家の長女だった。主を失ったロジェは、次女であるレナ・キャンデロロの契約者となった。だからメルテンス公爵の手先と戦い続けている。
本当は王都から逃げ出したかった。最早彼が生きるために命をかける理由がないからだ。しかし婚約者と娘を失った今、生き延びる理由も見つからず、自棄になって殺戮に浸ることで時を浪費していた。
そして何より、守護すべき少女は保養になる。甘い匂いと可愛い顔で心を楽しませてくれた。
「守ってくれてありがとう。お怪我はありませんか? よく見せて」見上げながら手を伸ばして身体に触れてきた。レナに無事を確かめさせてから、ロジェは彼女を屋敷へと連れ戻す。
「やはり外は危険です。庭園を散歩なさるのはお止めください。ヴォルケ王国との戦争が終結するまでは」
「私が自由になれるのはいつかしら?」
「わかりません」ロジェは即答した。
レナは自室に戻るまで無言だった。女中のハリマトゥが迎える。「お帰りなさいませ」
「キャンデロロの娘は十六になれば他家に嫁ぎます。私は十二歳だから、乙女を謳歌できる時間は多くないわ。この家を出される前に、生まれる前からの侵略を止める目処は得られず、花を愛でることもできないのね」
「お嬢様のお命には、代えられません」
「ロジェはお姉様を死なせてしまったというのに。覚えておいて。あなたが美男子でも、怒りの炎は消えることは無いわ」
レナは繋いでいたロジェの手をほどいた。その日はそれ以降、身体を合わせてこなかった。
しかし、彼女の心変わりに安堵するはずの愛しい人は、もういない。




