最期の言葉
愛する人の亡くなった夜を振り返るのは、とても勇気が要る行動だったが、自分と関わりのある者を失うことに、比較的慣れているロジェは、彼女の最期を仲間と共有することは必要な過程だと判断する。
そして向かい合っているのは、イェレナ・キノンだ。不帰の客となったリラ・ベクティの親友には、真実を伝えておきたい。
「彼女を救うことができなくてすまなかった。護衛対象だった依頼人の令嬢は先に殺されていた。僕が駆けつけたときには、リラも虫の息だった」
「あなたが首を刎ねた魔法使いは、どんな攻撃をしたの? 二人の遺体は武器で刺されたような痕跡があった」
途中でイェレナのグリフォンが空から舞い降りてロジェを威嚇したので、彼女が落ち着かせて夕日へと放したのを見届けてから答える。
「屋敷に侵入したクリストフ・ベルタンが氷の魔法で貫いて、イザリンは即死したんだ。即座にリラが応戦した後に、凍てつく槍で胸を刺されたみたいだった。彼女が息を引き取る前に、僕が加勢し、奴を討った。そして別れを済ませた」
敵が透明化の魔法を維持していれば、自分も仕留められていただろう。そして残る三人の令嬢も、命を失っていたかもしれない。
「リラは手も足も出なかったの? 反撃するときに手傷を負わせた?」
「彼女は男の右腕を炭化させた。相手は魔力もかなり消耗していたと思う」
「きっと幸せな人生だったわ。ロジェの傍で眠れたのね。……それで、あの子の娘は……?」
ロジェは息を呑む。「知っていたのか」
イェレナは頷いた。「あなたとだけの秘密だと思った? 私は特別な関係なのよ」
「……出産できる期間ではなかった」
「私が知りたいのは、墓石に名前が刻まれたかどうかなの」
「彼女が決めてくれたんだ」ロジェは、リラが言い残した名前を伝えた。「イリーナ」




