表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の組織に人体改造された俺、目覚めると組織が壊滅していたので、ヒーローを目指してみようと思います。  作者: 銀猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/32

第17話

「しっかりしろよ!!今病院に連れていくからな!!」


 改めて近くで見たが、見た目ほど傷は深くない。体調さえ良ければ、あの状況も1人で切り抜けられただろう。

 改めて、鬼神楽の強さを再確認した。これは、どの組織も欲しがるわけだ。


「ん、あっ……」

「ミカ!!」


 運んでいると、ミカの目が僅かにだが開いた。


「今病院に向かってるからな!!」


 まだ太陽も昇っていてない時間。公共交通機関は動いておらず、タクシーも見かけない。ミカを抱えて全力で走る。


「……め」

「ん?なんだ?」

「だめ、だ……」


 ミカの手が、弱弱しく俺の服を掴む。


「びょういんは、だめ、だ……」


 あの気の強いミカが、懇願するように俺に頼み込む。


「ダメっていったって、お前」

「頼む、お願い、だから……!!」


 ぎゅっと服を握りしめると、ミカはまた気を失ってしまった。


「っ!!あー!!もう!!!!」


 このまま病院に運びたいが、本人が望んでいない。

 ミカを手伝うと決めた以上、今は彼女に従う事にした。俺は目的地を病院から、自宅に変更する。


 病院と異なり、帰り道の途中だったこともあって自宅にはすぐについた。

 腕の中で眠るミカをベッドに寝かせて、これからどうしようかと頭を悩ませる。


「しょうがない、こんな時間だけどソラに、って、そうだった、今いないんだった……」


 一度ソラに相談しようと考えたが、ソラは三日前から仕事で家を空けていたのを思い出す。

 確かココロも同行すると聞いていたので、今頼める知り合いはいない。


「お前のせいだからな、文句は聞かねえぞ」


 俺はベッドで意識を失っているミカに近寄ると、不慣れな手つきでボロボロになった彼女の服を脱がせる。和服なんて触ったこともなかった為、少しばかり手間取ったが、どうにか全て脱がせることが出来た。


 ベッドの上で赤い下着姿になった少女が、荒い息を吐きながら眠っている。

 他の男にとっては歓喜の状況なのだろう。艶やかな下着姿だとか、意外とスタイルが良いとか考えるかもしれないが、今の俺には余計な情報を頭に入れる余裕なんてない。今はとにかく彼女の傷をチェックする。

 服の上から見た感じでは、深い傷はなかった。しかし、服の中までどうなっているかは分からない。特にやけどなんて最悪だが、運がいいことに大きな傷は見当たらなかった。しかし、細かな傷も多く血が流れている。


「えーっと、確かこの辺りに……」


 救急箱から消毒液と包帯を取り出して応急処置を施す。綿を消毒液で浸して傷を消毒し、包帯を巻いて止血する。この程度しかできないが、やらないよりはマシだろう。


「ふー、まあこんなもんだろ」


 最後にまだ使っていない新品のTシャツを着せて終了。

 ミカの顔を見てみると、少しだけましになったようにも見える。


「疲れた、寝よ寝よ」


 慣れない作業で疲れた。ベッドはミカが使っているので、適当に離れて床の上に寝ようと思ったのだが、いつの間にか俺の服の端をミカの手が掴んでいた。

 起こさないように優しく振りほどこうとしたが、しっかりと握られていて放す気配がまるでない。


「しょうがねえなぁ……」


 離れるのは諦めて、ベッドの傍で座りながら眠ることにした。

 床に座り、ベッドに背中を預けて目を閉じる。


「なんとも、ままならないもんだ」


 俺に体を癒す力はない。もっている力は全て、壊すための力。結局、怪人ってやつは世界を壊す為だけに生み出された存在だ。怪人の力をいくら集めた所で、できるのは破壊のみ。

 最強の怪人だろうと。一人の女の子を看病するだけで手一杯。これのどこが最強なのか。


 自分の無力さにため息を吐きながら、意識を眠気に委ねる。気が付かない内に俺にも疲れが溜まっていたのか、こんな状況でも直ぐに眠ることが出来た。


 **********


 カーテンの隙間から日差しが差し込む。

 春の暖かな陽気に当てられ、俺は目を覚ました。


「んー!!」


 無茶な体勢で寝たせいか、体がバキバキだ。思いっきり伸びをすると、体のあちこちから音が鳴る。


 立ち上がってみると、まだミカは俺の服を掴んだまま。離れる事諦めて、もう一度座りなおす。

 眠っているミカの表情はとても穏やかだ。最近眠れていなかった事を考えると、こんな形でも眠れただけ、幾分かマシになったのだと思う。


 俺が眠りから覚めて1時間ほど経った。

 朝の10時頃、ようやくミカに動きが見える。


「ん……」


 もぞもぞと体が揺れ、ゆっくりと瞼が開く。


「ここ、は」


 ミカの意識が覚醒すると、ようやく俺の服を掴んでいた手が離された。


「ようやく目覚めたか」

「オワ、リ……?はっ!!怪人は!?お前、無事なのか!?」


 俺の顔を見た事で、昨日の事を一気に思い出したミカは必死な形相で詰め寄ってくる。


「大丈夫、俺もお前も無事だから、一旦落ち着け」

「あぁ、そうか、良かった……」


 どうにかミカを落ち着かせることに成功した。

 ミカはようやく冷静になって焦っていた思考が戻り、状況を把握しだす。


「ここは何処だ?あの後どうなったんだ」


 三人の怪人に機械兵。絶対絶命なピンチだったはずなのに、二人とも無事なのが不思議でしょうがないのだろう。

 

「あの後、間一髪でヒーローが助けに入ってくれてな。お前の代わりに倒してくれたよ」

「そう、か。良かった……」

「なんか色々聞かれそうになったけど、適当に誤魔化しておいた。病院も俺が連れて行くって言って無理やり離れたってわけ」


 いささか無理がある嘘な気もするが、こういうのは勢いが大事。

 まるで本当かのように語って聞かせる。余裕がある状況ならともかく、今のミカなら勢いだけでどうにか誤魔化せそうだ。


「病院には本当に行くつもりだったんだが、お前が行きたくないって言うから、ここに連れてきたってわけ」


 前半はともかく、後半については本当だ。


「これ……」


 俺の話を聞いて、ミカは自分の体に起こった変化に気づいた。

 血が滲み、ボロボロだった和服は脱がされ、サイズの合ってないぶかぶかのTシャツに変わっており、体中に不格好な包帯が巻かれている。


「お前が病院に行きたくないって言ったせいだからな。怒るんじゃねえぞ」


 勝手に服を脱がされ下着姿を見た事を怒られるかもと、先に予防線を張ったが、意外な事にミカは怒ることなく、穏やかな表情で腕に巻かれた包帯を撫でるだけ。


「ミカ?」

「ん?ああ、なんだ?」

「いや、怒らないのかなって」

「怒んねえよ。別に見られたって減るもんじゃねえし。オレの為にやってくれたんだろ?むしろ感謝してる」


 気の強いミカの事だから何かしら言われるんだろうなと思っていたが、返ってきたのは優しい感謝。いつもと違う様子に、少しだけ調子が狂う。


「まあいいか、今度はこっちの番だ。昨日、何があった」

 

 ミカが気にしてないなら、あまり深堀する話題でもない。

 話題を切り替え、今度は俺が質問する。昨日、ミカに何が起こったのか。


「……昨日、お前が来るまでに軽く周りを見て回ったんだ。すると、ようやく見つけたんだ」

「見つけたって、売人をか」

「ああ、間違いなくあの時見たやつと同じ格好をしていた。だから、捕まえようと追いかけたんだが、罠だった」


 売人を追いかけた先に待っていたのは、3体もの怪人と機械兵。


「後は、オワリの知ってる通りだ」


 怪人達と戦ってピンチに陥った。

 本当は無茶をするなと叱るべきなんだが、俺を守るために戦ったであろう事を考えると、あまり強い言葉は使えない。


「いっ……!?」


 何を言うべきかと悩んでいると、ミカが体を押さえて蹲る。


「おい!!大丈夫か!!」

「大丈夫、ちょっと傷が痛んだだけだ……」


 処置と言っても素人がやった簡単なもの。ミカは嫌がったが、やはりここは一度病院に行って診察してもらった方がいい。


「やっぱり病院に行った方がいい」

「っ、ふー……、そうだな、そう、するか」


 驚くほどに、今のミカは素直だ。今のうちに病院に連れて行ってしまおう。


「じゃあ行くか、って言いたいが、今の恰好じゃな」


 とりあえずTシャツを着せてはいるがぶかぶか。ちろんながら俺の部屋には彼女にあうサイズの服は無く、元の服もボロボロ。今の恰好では外に出られない。


「ちょっと待ってろ」

「どこに行くんだ?」

「コンビニ」


 最近のコンビニは凄いもので、拘らなければ全ての物が揃う。

 近くのコンビニでTシャツとスウェットを購入し、家に戻ってミカに渡す。おしゃれとは言えないが、外を出歩くぐらいなら問題ない。

 ミカが着替える間、家を出て玄関先で待っておく。

 

「待たせたな」


 ミカが着替え終わって出てきたので、今度こそ病院に向かう。


「そうだ、病院なんけど、行きつけがあるんだ」


 ミカが口にした病院名は聞いた事もない。どうやら先代が懇意にしていた個人医らしく、ミカもお世話になっているらしい。

 色々と事情があるのだろう。俺としても診てもらえればいいので、異存はない。


 近くでタクシーを呼び止め、ミカの言う病院に向かうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ