第10話
「因子模倣:ガンロック・シュバル!!」
シュバルシャドーが両手を地面につけると、俺を大きな影が覆う。
岩石で出来た巨大な手がオワリの背後から現れ、上から押し潰すために勢いよく振り下ろされる。
「因子解放、爆弾怪人ダイナマイン」
振り下ろされる巨大な岩石の手に対して、俺は受け止めるように右手を開いて頭上にかざす。
岩石の手が俺の手に触れると、爆音が鳴り響くと共に、岩石の手は内側から爆弾が爆発したかのように勢いよく砕け散り、バラバラの石に形を変えた。
「因子解放、烈風怪人タツマキ」
爆破の異能により砕け散った岩石は、小さな石ころから大きな塊と多様な大きさをしている。
俺は空中に飛び散った石達を風の異能を使い、纏めてシュバルシャドウに撃ち出す。
「因子模倣:アイアーン・シュバル!!」
散弾の如く襲い掛かる石片達に、シュバルシャドウは体を鋼に変えて迎撃する。
一つ、二つ、三つ、脅威となる大きな塊を両手で撃ち落とす。小さな破片は鋼の防御力で無視しながら次々に砕くと、最後にシュバルシャドーの視界を丸々塞ぐほどの大きな石の塊が飛んできた。
高速で飛んでくる巨大な質量。十分な脅威となりえる塊を、シュバルシャドーは鋼の拳でなんなく砕いて見せた。が、
「選択が間違ってるぞ!!」
岩石が砕かれシュバルシャドーの視界が開けると、すぐ目の前まで迫っている黒い怪人が映し出される。
「因子解放、爆弾怪人ダイナマイン」
「ガッ!?」
シュバルシャドーの胸に俺は掌を当て、異能を起動する。
爆破の異能が掌から放たれ、衝撃と破壊をゼロ距離でシュバルシャドーに叩き込む。
体を鋼に変化させても防ぎきれないダメージを食らいながら、巨大な衝撃に吹き飛ばされるシュバルシャドー。
「因子解放、岩石怪人ガンロック!!」
更なる異能を起動しながら、俺は地面に向かって拳を振り下ろす。
先ほど使われた岩石の異能を、今度はこちらが使い、吹き飛ばされるシュバルシャドーの真下から巨大な岩石の拳を作り出し、地面から突き上げる事でシュバルシャドーを大きく空に打ち上げた。
「因子解放、重力怪人グレイホール!!」
空に打ちあがったシュバルシャドーの体に、巨大な重力が襲いかかる。
数倍にまで膨れ上がった重力は、空中のシュバルシャドーを勢いよく大地に叩きつけた。
「ガッ……!?」
近距離爆破、岩石による殴打、強化重力による上空からの急速落下。並大抵の怪人なら戦闘不能になるほどのダメージを受けるだろうが、流石は結社の秘密兵器。
ボロボロになりながらも立ち上がってみせた。
「どうした、もう終わりか?」
「マ、ダァ!!!!」
圧倒的な練度の差。同じ数の力を持っているからこそ、遠距離同士の撃ち合いでは勝負にならない。
全ての攻撃が相殺、打ち破られて利用される。
遠距離勝負で勝ちの目がないならば、当然選ぶのは近距離戦闘。
シュバルシャドーは飛びつくように距離を縮め、拳を構える
「良いぜ、付き合ってやる」
怪人と怪人。人の領域を超えた膂力がぶつかり合う。
「アァ!!!!」
「はぁっ!!!!」
拳同士の激突、音が響く。
威力は互角。
「アァァァーー!!!!」
乱打乱打乱打乱打乱打。
余計な思考を挟ませない身体スペックのゴリ押し。まさに暴力の嵐だ。
俺も両手を握りしめて迎え撃つ。
捌き、ぶつかり、相殺され、また打ちつける。
お互いにまったく譲らない殴り合い。勝負の鍵を握るのは、どのタイミングでより効果的に異能を挟み込むか。
「因子模倣!!」
先に仕掛けたのはシュバルシャドー。
「ダイナマイン・シュバル!!!!」
拳に仕掛けた爆発の異能。
同じように撃ち合えば、ダメージと共に大きく体勢を崩し大きな隙を与える事になる。
「因子解放、鋼鉄怪人アイアーン」
俺が選択したのは鋼の異能。
鋼と爆破、さっきと似た状況だが、発動した異能は真逆。
俺とシュバルシャドーの拳がぶつかり合う。
拳同士が触れた瞬間、当然シュバルシャドーの拳が爆発し、俺に襲いかかる。
いくら腕を鋼で硬化しても、爆破で弾かれてしまえば意味はない。
「フキトベ!!」
「甘い!!因子解放、怪力怪人マッスラー!!」
襲い掛かる炎と衝撃に対し、俺は怪力の異能を重ね掛ける事で弾かれそうになる右腕を強化。弾かれそうになる右腕の筋力を異能で強化することで真正面からごり押し、逆にシュバルシャドーの腕を弾く。
「ナッ……!?」
「吹き飛べ」
がら空きとなったシュバルシャドーの胴体に、左腕の拳を叩き込む。
鋼と筋力、二つの異能で強化された左腕はシュバルシャドーの腹部にめり込み、シュバルシャドーをボロボロになった建物の奥まで吹き飛ばす。
「ッ……アッ……」
瓦礫と化した建物の残骸を押しのけ、どうにか這い出したシュバルシャドーは誰がどう見ても満身創痍。
対する俺はほとんど傷を負っていない。もはや勝負はついた。
「勝負ありだ」
「マダ……!!」
だが、シュバルシャドーは諦めていない。
「因子模倣:ヘルフレイム・シュバル……!!」
両手に宿る炎の異能。
「因子模倣……!!タツマキ・シュバル……!!!!」
炎の異能を起動したまま、更に風の異能を起動するシュバルシャドー。
俺もよく使う異能の多重発動。炎と風が合わさり、さらなる破壊力を生み出す。後は俺に向けて撃ちだすだけ。
「コレ、デ……!!」
今まさに解き放とうとした瞬間、シュバルシャドーの体が大きく痙攣したかと思うと、二つの異能は消え去さった。
「ナ、ナゼ……!?」
「設計の差だよ」
ダークマターが作り出した怪人因子。適正がある者に巨大な力をもたらすが、適正が無いものには破滅をもたらす。
俺は全ての怪人因子に適性を持つ特異点。しかし、全てに適性を持っていたとしても、人体改造を施さなければ怪人因子の力に耐える事は出来ない。
ましてや全ての怪人因子をこの身一つに集約するなど、普通の人体改造では不可能だ。
俺の肉体は、結社ダークマターの技術全てが詰め込まれた正真正銘の特別製。
「俺の力をコピー出来ても、俺の肉体まではコピーできなかった。それだけの話だ」
あくまで力だけをコピーするシュバルシャドーの肉体では、力の反動に耐える事は出来なかった。複数の因子を同時発動などもってのほかだ。
俺の力は、俺の肉体でこそ真の力を発揮できるのだから。
「クソ、クソッ!!クソォ!!!!」
もはやシュバルシャドーは異能を使う事すらできない。傷つきボロボロの体では、コピーした力を押さえつけるだけで限界だ。
押さえ込んだとしても、暴れる力に体の内側からボロボロになるだけだろうに。
「ッ!!こうなれバ……!!」
シュバルシャドーの敗北を察したドクターは、全速力で駆けだした。目指すは変身が解けて動けないソラ。
こうなればソラだけでも確保しようとしたのだろう。
「因子解放、植物怪人グリーンローズン」
だが、ソラに手を出すなど俺が許さない。
ソラに迫るドクターの足元から、複数の植物の蔦が勢いよく飛び出したかと思うと、ドクターの体に絡みつき動きを封じる。
「させるわけないだろ」
「カッ……!?」
植物によって拘束されたドクターの腹部に拳を叩き込む。だが、帰ってきたのはおかしな感触。ドクターを構成するのは人の肉ではなく、機械仕掛けの鋼の肉体。
「こうなったなら仕方なイ……!!」
「ちっ!!!!」
明らかにドクターの表情が変わった。向けられる視線は俺ではなく、ソラ。何か仕掛けてくる気だ。
俺はドクターの顔面を掴むとわ砲丸投げの要領でシュバルシャドーの近く目掛けて投げつける。
「ドクター!!」
「グッ…!!」
ボールのように投げ飛ばされたドクターをシュバルシャドーはどうにか受け止める事には成功した。
「だガ、甘イ!!この体と引き換えにここら一帯吹き飛ばしてみせましょウ!!」
ドクターの体から発せられる高エネルギー。間違いない、ここで自爆する気だ。
「させるか!!!!」
ここで自爆されれば、俺はともかく生身のソラは無事では済まない。守るにしても限度がある。
「因子解放、白光怪人ホーリー×黒闇怪人ダークネス!!」
白と黒、光と闇の力を一つに合わせる。
相反する二つの力は混ざり合い、灰色の破壊に姿を変えた。
「今でス!!!!!!!!!!ゲートを開きなさイ!!早ク!!今すぐニ!!!!」
ドクターが準備を終えるよりも早く、灰色の破壊を解き放つ。
「吹き飛べ、カオスインパクト!!」
「ッ!!ドクター!!!!」
上級怪人の異能を二つかけ合わせた破壊の一撃。
灰色のエネルギー弾がドクターに着弾する瞬間、ドクターもまた機械仕掛けの体を爆発させ破壊を撒き散らす。
二つの破壊エネルギーは互いにぶつかりあい、相殺される。やがて爆発は収まり、残されたのはドクターだったと思われる壊れた機械のパーツだけ。シュバルシャドーの痕跡は何も残っていない。
「……逃げた?あそこから?」
かなりの破壊力を生んだが、シュバルシャドーの全てを塵に変える程ではなかった。俺の攻撃をドクターが相殺している間に、何かしらの方法を使って途中で逃げたようだ。
生身のソラを巻き込まない為に威力を調整してあれ以上の破壊力は出せなかったとはいえ、まさか逃げられるとは。
外部から何かしらの異能で助けられたようだ。
だが、確かに手ごたえもあった。
例え相殺されていたとしても、シュバルシャドーもまた爆心地にいたため無事では済まない筈だ。
「とても完璧とは言えないが」
一応首謀者と思しきモノを破壊し、ソラも無事。
町も一部破壊されてはいるものの、人的被害は奇跡的に少ない。
「最低限、かな」
守りたいものを守り切った。
最近は失ってばかりだったが、今回は守りきる事ができたのではないだろうか。




