表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の組織に人体改造された俺、目覚めると組織が壊滅していたので、ヒーローを目指してみようと思います。  作者: 銀猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/13

3話

 順調に決まったタコパだったが、ここに来てまさかの懸念事項が発生した。


「場所はどこでやるんですか?」

「今のところ私の部屋の予定だけど」

「エ……、先輩の部屋、ですか……?」


 提案された場所を聞いて、ココロの表情がピタリと固まる。


「先輩……、無理はよくないですって……」

「無理じゃないけど!?」

「ボクの部屋でやりましょう。そうしましょう」

「ダメダメ!私の部屋でします!」


 さっきまであれほど仲が良かったのに、場所の話になると途端に立場が二分した。

 自分の部屋でやりたいソラと、絶対に認めないココロ。両者共絶対に自分の意見を譲ろうとしない。


「絶対に無理ですって。現実見ましょうよ先輩」

「ココロちゃんなんか辛辣じゃない!?」

「先輩の事は大好きだし本当に尊敬してますけど、これに関しては別です。三日後は絶対に間に合いませんって」


 凄い。絶対とまで言い切った。

 後輩からの拒絶に、薄っすらとソラの目元に涙が見えた気もする。


「なら、俺の部屋でやるか?最近来たばっかだから荷物もないし汚れてもない」


 お互いが譲る気がないので、第三の案を出す。

 場所はソラの隣の部屋だし、荷物も少なく来たばかりなので汚れてもない。男の部屋というのがマイナス要素だが、妥協案としては悪くないのではなかろうか。


「まあ、先輩の部屋じゃないなら……」

「ダメ、私の部屋以外認めません」


 ソラの部屋じゃなければ良いというココロに対し、ソラは頑なに自分の案を曲げない。


「先輩、なんでそんなに折れないんですか」

「だって、これってココロちゃんの退院祝いだし、オワリ君に対する感謝でもあるじゃない?こういうのってさ、家主がつい気をつかっちゃうと思うんだよね」

「……」

「ココロちゃん、絶対気を使って色々動くでしょ」

「……まあ、否定はできないです」

「オワリ君も」

「そうかもしれないな」


 ソラの言う通り、こういったパーティをする時、家主は気を利かせて色々一人でやってしまう傾向にある。飲み物を取り替えたり、細かく掃除したり、洗い物をしたりと色々だ。

 また、飲食を伴うパーティでは部屋が汚れがちになる為、こう言った面でも家主に負担を強いる事になる。


「二人には変に気を遣わず楽しんでもらいたいんだよね」

「どうする桜乃」

「……分かりました。そこまで言われたら、何も言えないじゃないですか」


 純粋に気を遣ってくれるソラの優しさを知ってしまえば、ココロは断れない。


「そもそも、なんでそんなに嫌がったんだ」


 二人の関係が悪いなら、まあ分からないでもないが、今日だけでも二人のやりとりは仲の良い先輩後輩にしか見えなかった。


「あぁ、常世さんは知らないんですね……」

「ん?」

「先輩、たこ焼き器ってもう買ってるんですか?」

「ちょっと前に買ってあるよ」

「なら、ちょうどいいですね」


 ココロが俺に笑顔を向ける。

 ただの笑顔のはずなのに、被害者に向ける憐憫やら、仲間が増える嬉しさやら、とにかく複雑な感情が感じ取れた。

 流石に俺も、なんだか少しだけ嫌な気がしてきた。


「常世さん、先輩の部屋でたこ焼き器探すの手伝っていただけませんか?」

「それくらい一人でできるけど」

「先輩は黙っててください。ボクは今常世さんに聞いているので」

「ココロちゃん……?」


 ソラの言葉を無視してゴリ押ししてくるココロ。


「別にいいけど。特に予定も無いし」


 どうせ今日は予定がないので、手伝いの一つや二つは何も問題ない。


「良かった。じゃあお願いします。色々と」

「了解。……ん?色々?」


 言葉の最後に何か含まれていた気がして聞き返してみるも、ココロは静かに微笑むばかりで返答してくれない。

 時間も時間なので、俺とソラは病室を出て帰宅する。見送りまで見せたあの笑みは、一体何だったのだろうか。


 帰りも同じくバスに揺られ、何事もなくマンションに帰った。


「まったくもう、ココロちゃんったら失礼しちゃうよね」


 言葉だけ聞くと文句だが、彼女の表情はニコニコの笑顔だ。

 元気な後輩の姿を見られたのが、よっぽど嬉しかったのだろう。


「上がって上がって」


 ソラは部屋の鍵を開け、俺を中に招いてくれる。

 ココロとやの約束で、たこ焼き器を探す事になった俺は、招かれるままに部屋に入る。


「お邪魔します」

「どうぞどうぞ」


 部屋の作りは俺の部屋と同じ。

 だけど、なんだろう。この嫌な予感は。

 玄関からリビングに繋がる廊下に積み上がっている段ボールの山を見てから、悪い予感が止まらない。


「少し散らかってるけどごめんね、最近忙しくて掃除できてないんだ」

「……あぁ、なるほどね…………」


 リビングに入ると、ココロの言っていた言葉の意味が全て分かった。

 積み上げられた段ボールの山。纏めて放り投げられている衣服。机の上は色々な物と書類が散乱しており、シンクにはカップ麺と弁当の空が大量に置いてある。ちゃんと洗ってあるだけマシだが、正直年頃の少女が住んでていい部屋ではない。

 総合すると、この部屋は所謂汚部屋に分類される。


「えーと、確かこのあたりに……」


 ソラがクローゼットを開けると、これまた大量に詰め込まれた段ボール。


「……なあ小日向」

「なに?」

「最後に掃除したのっていつだ?」

「んーと、本格的にしたのは確か一週間前くらい?最近忙しくて全然時間とれなくて」

「なるほど……」


 どうやら、ソラは想像以上に多忙な様子。

 シンクに積み重なった弁当やカップ麺からも忙しさが見て取れる。


「……小日向」

「どうしたの?」

「俺も手伝うから、今から掃除するぞ」

「え?いやいいよ。私一人でなんとかするし」

「いいからやるぞ、いやマジで」


 残念な事に、パーティ会場は決まってしまった。

 残された時間は三日。ソラの忙しさが据え置きだとすれば、残された時間はずっと少ない。

 ココロが退院する前に、この部屋を綺麗にして出迎える準備をしなければ。


「そんな、オワリ君に手伝ってもらうなんて」

「気まずいかもしれないけど、ここは無理矢理いかせてもらうぞ。なんせ時間がないからな」


 細かな所はともかく、目立つ部分は今日中に片しておきたい。

 ソラの静止を跳ね除け、部屋の掃除に取り掛かる。


 衣類の洗濯やシンクをソラに任せ、俺はとにかく積み上がった段ボールの山を片付けていく。

 中身を取り出し、段ボールを折り畳んではビニール紐でくくる。


「小日向、これは?」

「あー、この前買ったカップ麺だ。台所に持ってっちゃうね」


 ひたすらに段ボールを開封しては、中身を置く場所をソラに聞いて片付ける。

 途中、衣類と書かれた小さな段ボールを開けようとして、顔を真っ赤にしたソラに強奪されるなんて事もあったが、意外と順調に掃除は進んだ。


 掃除を始めてからどれくらい時間が経っただろう。明るかった窓の外は、いつの間にか暗闇に変わっていた。


「んー!!疲れたぁ」


 なんとか全ての段ボールを片付ける事に成功した。後は縛り上げた段ボールやゴミ袋をゴミ捨て場に持っていけば終了だ。


「お疲れ様オワリ君」

「小日向もお疲れ様」


 ソラも掃除が終わったのか、麦茶の入ったコップを二つ持ってきて、片方を俺に渡してくれる。

 

「ごめんね、こんな事手伝わせちゃって」

「良いよ良いよ、どうせやる事なかったし」

「本当は一人で片付けるつもりだったんだけど、オワリ君のおかげでこんなに早く終わっちゃった」


 麦茶を飲んで一服する。

 労働の後に飲む麦茶のなんて美味しいことか。

 

「それで、ちょっと相談なんだけど」

「ん?何だ?」

「私、当分忙しいのが続きそうなの。それでさ、週一くらいのペースでまた手伝ってくれない?家政婦のアルバイト的な感じで。ちゃんとお金も払うから」

「おーけー。どうせ暇だしいつでも手伝うよ」


 手伝いというよりは、家政婦のアルバイトみたいなもの。お金も払ってくれるみたいだし、仕事を探している今は渡りに船だ。


「ありがとう!!本当は家政婦とか雇いたいんだけど、中々信頼できる人が見つからなくて」

「俺は良いのか?正直あまり信頼できないだろこんな怪しい奴」


 戸籍も記憶もない異性とかいう信頼の真反対にいるのが俺だ。ソラの言う信頼できる人に分類される理由は皆無に等しい。


「オワリ君は大丈夫。私、こう見えて人を見る目には自信があるの」


 あまり信用できない理由だが、本人にとってはこれ以上ない理屈なのだろう。


「だから、改めてこれからよろしくね」

「こちらこそ、よろしく」


 差し出されたグラスに、こちらもグラスを差し出して軽く当てる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ