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悪の組織に人体改造された俺、目覚めると組織が壊滅していたので、ヒーローを目指してみようと思います。  作者: 銀猫


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2話

 ピンポーン。


「んんー……」


 聞き慣れないチャイムに、沈んでいた意識が覚醒する。

 重い瞼をゆっくり開けると、カーテンの隙間から強い光が差し込んでいた。朝よりも明るい光、恐らく時間は昼頃と言った所。


「ここは……、あぁ、そっか」


 見知らぬ天井、見覚えのない部屋。一瞬自分がどこにいるか分からなかったが、眠気が覚めてくると昨日のことを思い出す。

 昨日からこの部屋が、俺の住む場所になったんだ。


 ピンポーン。

 

 二度目のチャイム。

 少し疲れの残った体を起こし、欠伸を噛み殺しながら来客を出迎える。

 扉を開けると、ソラが立っていた。


「ごめん、起こしちゃった?」

「いや大丈夫、丁度起きる頃だったから助かった」


 時間としては少々寝すぎで、起きなければならない時間帯。

 起こされたというよりは、起こしてくれたの方が感覚として近い。


「それで、どうかしたのか?」

「えっとね、この後予定ある?」

「いや、別にないけど」


 今日の予定と言えばバイトを探すことぐらいで、これも別に予定と呼べるものではない。つまり、暇だ。


「オワリ君が良ければ、この後ちょっと付き合ってほしいんだ。君に会わせたい人がいて」


 突然のお誘いをするソラをよく見ると、昨日のカジュアルな服装とは違い、少々気合の入ったおしゃれな服装に身を包んでいた。

 

「別に良いけど」

「やった!じゃあ部屋で待ってるから、準備が出来たら呼んでね」


 部屋が隣と言うこともあり、無駄に外で待たせる事が無いのは良いことだ。

 だからと言って、無駄に待たせる必要はないわけで、素早く準備を進める。生憎と、俺は服装の選択肢が多くない為、準備にはあまり時間がかからない。

 必要最低限の身なりを整えて、隣で待っている彼女をインターフォンで呼び出す。


「ごめん、待たせた」

「全然、じゃあ行こっか!」


 俺とソラはマンションを出ると、近くのバス停からバスに乗車する。

 土曜日の昼頃だが、バスに乗る人は思っているよりも少なく、俺達はなんなく席を確保できた。


「この辺りのスーパーが結構安くて〜」


 バスに乗っている間、ソラが窓から見える景色を指さしてこの辺りの事を教えてくれる。

 知らない街の情報を聞くのは意外と楽しいもので、時間はあっという間に過ぎてしまった。


 大体40分ぐらいだろうか?バスに揺られていた俺達は、ソラの目的地に到着してバスを降りる。


「ここは……」


 降りた先に見えたのは、ここら辺で一番大きい病院。


「少し前に大きめの怪我しちゃってて、今入院してるの」


 ソラがここに来た理由は診察などではなく、お見舞いだった。

 部屋の番号を確認しながらゆっくり移動し、お目当ての部屋を見つけた。


 コンコン。と軽くノックをすると、扉の向こうから「どうぞ」と女性の声が返ってきた。


「お見舞いに来たよココロちゃん」

「先輩!!来てくれたんですか!!」


 扉を開ける。部屋の中は個室で、窓際に備え付けられたベッドに少女が横になっていた。

 明るいブランドのショートカットに、どこかボーイッシュに感じる顔立ちをした少女。彼女の事は知らない筈だが、何故か見たことがある気がする。


「先輩、もしかしてそちらの方が」

「あ、紹介するね。こちら常世オワリ君。昨日話した、あの時の警備員さん」

「どうも」


 ソラの紹介に合わせて軽く会釈する。


「こっちが桜乃ココロちゃん。私の一つ下の後輩」

「桜乃ココロです。常世さん、あの時はどうもありがとうございました。どうしてもお礼を言いたくて」

「えっとぉ、申し訳ないけど心当たりが……」

「あの時のホテルで、怪人と戦ってた魔法少女が彼女なの」

「……あぁ!!」


 ソラに言われて気がついた。

 あの燃えるホテルで怪人と戦った魔法少女。

 フリフリの可愛らしい服装にピンク色の髪をしていたから気が付かなかったが、確かに顔はあの時の魔法少女だ。


「すまん、気がつかなかった」

「ココロちゃん、変身前と後でガラッと印象変わっちゃうからね」

「あはは……、ボクと魔法少女ハートは、別人と思ってもらえれば……」


 ココロの言う通り、変身前と後ではまるで別人だ。今はボーイッシュでどちらかと言えばかっこいいと言った印象だが、変身後の彼女にはとても可愛らしい印象を持っていた。

 ヒーローはほとんどがコードネームを使っているから、変身後はまさしく別人なのかもしれない。


「改めて、常世さん。あの時はありがとうございました」


 ココロはベッドで上半身を起こし、俺に向かって頭を下げる。


「いやいや!俺何もしてないですから!」

「あの後、ボクの事をホテルから運んでくれたと聞きました。先輩も無事に連れ出してくれて、感謝しかありません」

「それを言うなら、あの時俺達を守ってくれたじゃないか。お互い様だよ」


 俺達を守るために勝てる筈のない戦いに挑んだ彼女。一人なら逃げられたかもしれないのに、あの場に残る決断をした彼女こそ、感謝されて然るべきだ。


「ストップストップ。、このままじゃ一生終わらないよ」


 お互いが譲らない感謝フェーズに入ろうとしていた所を、ソラが待ったをかけてくれた。


「別にどっちか片方だけが受け取らないといけないわけじゃないでしょ?お互いに送って受け取ってでいいんじゃない」

「そうですね、ボク少し意固地になってました」

「そうだな。それが良いか」


 感謝してされて。少し変わった終わり方だが、お互いに気分の良い終わり方でもある。


「よし!じゃあ楽しい話しよっか!」

「楽しい話ですか?」

「ココロちゃんもうすぐ退院でしょ?お祝いにタコパしようよタコパ。前にやりたいって言ってたでしょ」


 タコパと聞いて、ココロの笑みが三割り増しに輝いて見えた。


「もちろんオワリ君も一緒にね」

「え、俺も?」

「もちろん。これはココロちゃんの退院祝いでもあるけど、私から二人へのお礼も兼ねてるんだから」


 ソラはココロとオワリ両方に助けてもらった。

 今回の提案はココロの退院祝い兼助けてもらった二人に対する感謝な気持ち。と、言われてしまうと断りづらい。


「いや、二人でやった方が良いんじゃないか?」


 気持ちは嬉しいが、新人の、しかも異性がいきなり退院祝いに混ざるのは気まずいのではないだろうか。

 旧友二人の方が遠慮もなく楽しめると思い、辞退の形をとる。


「三人でやりましょうよ。ボクもそっちの方が嬉しいです」

「こういうのは、人数が多い方が楽しいんだよ」

「……二人が良いなら、俺も参加させてくれ」

「もちろん!」

「是非来てください。先輩の言う通り、人が多い方がきっと楽しいですから」


 当人達が良いと言うなら、俺も断る理由はない。

 こうして、俺達はココロが退院する三日後に退院祝いとしてタコパをする約束を交わしたのだった。

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