モンスターが攻めてきたので、タレット(自動迎撃)を設置します
洞窟を改修した「タワマン風ハウス」のリビングで、俺とリリスがくつろいでいた時のことだ。
視界の端に、警告ウィンドウがポップアップした。
[Warning: Hostile_Entities_Detected]
Count: 300+
Type: Goblin_General, Orc_Soldier, Wyvern...
Direction: South
「……おいおい、大行列だな」
どうやら、俺が地形データをいじくり回したせいで、局所的に魔力濃度が高まり、それに釣られて近隣の魔物たちが「スタンピード(大暴走)」を起こしたらしい。
俺はマグカップを置いて立ち上がった。
「主様! 敵襲ですね!」
リリスが目を輝かせて立ち上がる。その手には既に、あの大鎌(データ消去ツール)が握られていた。
「私が行きます! あの薄汚いデータを、1バイトも残さず消去してやりますわ!」
「ストップ。お前が行くと、森ごと消えるだろ」
俺は慌ててリリスの首根っこを掴んで止めた。
300体の魔物を相手にリリスが暴れれば、この辺一帯が更地になってしまう。
せっかく作ったリンゴ園や温泉まで消されてはたまらない。
「でも、主様の安眠を妨げるバグどもですよ?」
「だから、効率的に処理するんだよ。見てろ」
俺は家の外に出ると、入り口付近に転がっていた手頃な岩を数個ピックアップした。
そして、空中にコンソールを展開する。
記述するのは、単純な条件分岐のループ処理だ。
// 自動迎撃システム Ver.1.0
while (Enemy_Count > 0) {
Target = Get_Nearest_Enemy();
Lock_On(Target);
Cast_Magic("Fire_Arrow", Multi_Shot);
}
俺は岩のデータを書き換え、**「自動砲台」**へと変化させた。
岩の表面がガチャガチャと変形し、SF映画に出てくるような無機質な砲身が現れる。動力源は、空気中の魔力を無限循環させる設定だ。
「よし、稼働開始(Run)」
Enter.
ズガガガガガガッ!!
四台の岩砲台が火を噴いた。 ただし、発射されているのは弾丸ではなく、圧縮された炎の矢だ。 正確無比なオートエイムで、迫りくるゴブリンやオークの眉間を次々と貫いていく。
「ギャアアアッ!?」 「ブヒィィィッ!?」
魔物の悲鳴が重なる。
空を飛ぶワイバーンに対しては、対空モードに切り替わった砲台が「ウィンド・カッター」を連射し、ハエのように撃ち落とす。
俺は腕を組んで、その一方的な虐殺(処理)を眺めていた。
「すごい……主様、指一本動かしていません……!」 「プログラマーってのは、自分が動いたら負けなんだよ。機械にやらせるのが一番確実だ」
十分とかからず、300体の魔物の群れは全滅した。 あたりには魔物が消滅した後に残る「魔石」や「素材」が山のように積み上がっている。
「さて、次は『回収』だな」
俺は散らばったドロップアイテムを一括選択(Select All)し、倉庫へと転送するスクリプトを実行した。 山のような戦利品が、一瞬で俺のストレージに吸い込まれていく。
「ふぅ、片付いたな。戻ってお茶にするか」
「……主様」
「ん?」
リリスが頬を膨らませて、ジト目で俺を見ていた。
「私の出番、ありませんでした」 「いいんだよ。お前は俺の護衛(最後の砦)なんだから」 「……むぅ。次は絶対、私がやりますからね」
拗ねるリリスをなだめながら、俺たちは平和なマイホームへと戻った。
しかしこの時、俺は深く考えていなかった。
「300体分のドロップ素材」が、どれほどの資産価値になり、市場を混乱させるかを。




