洞窟をコピペして、タワマンの内装を実装しました
食料と風呂(温泉)は確保した。 次はいよいよ、衣食住の要である「住居」だ。
最初は木材を組み合わせてログハウスでも作ろうかと思ったが、建築知識のない俺が一から設計するのは骨が折れる。
そこで俺は、領地の端にある小高い丘の斜面に目を付けた。 そこには、手頃な大きさの洞窟があったのだ。
「よし、あの洞窟をリフォーム(魔改造)するか」
俺は洞窟の前に立ち、内部構造のスキャンを開始した。 中は湿っぽく、コウモリのフンだらけだ。
<Object: Cave_Small>
Size: 20m x 30m
Cleanliness: 5 (Dirty)
Wall_Material: Rock
</Object: Cave_Small>
「まずはクリーニングだ。中のゴミデータを一括削除」
Select All: Garbage -> Delete.
一瞬で洞窟内の汚れが消滅し、無機質な岩肌だけの空間になった。 さて、ここからだ。 俺は前世の記憶にある、とあるデータを呼び出した。 かつて仕事でシステムの保守を担当したことのある、港区の超高級タワーマンションの内装データだ。
「壁の素材は『岩』から『高級クロス』に変更。床は『大理石』。照明は……発光するクリスタルを埋め込んで、間接照明風にするか」
俺はキーボードを叩き続ける。 洞窟という「枠」の中に、異質の「中身」を流し込んでいく作業だ。
Texture_Mapping: Luxury_Modern_Style Furniture_Set: Import_Grade_A
Enter.
空間が歪み、再構築される。 ゴツゴツした岩肌が滑らかな白い壁に変わり、湿った地面はピカピカの大理石になった。 中央には革張りの大きなソファセット、奥にはキングサイズのベッド。 洞窟の入口には自動ドア(ガラス製)が設置され、外の光を取り込んでいる。
「できた……『洞窟式タワーマンション 101号室』だ」
「主様……!? こ、ここはどこですか!?」
温泉から上がってきたリリスが、タオル(これも俺が生成した)を巻いた姿で絶句している。 彼女は恐る恐るリビングに入り、フカフカのソファに腰を下ろした。
「ふわふわです……! 雲の上に座っているみたいです!」 「気に入ったか? 今日からここが俺たちの家だ」
俺はキッチンエリアに向かった。 見た目だけ整えても意味がない。ライフラインが必要だ。 水道の蛇口(のような魔道具)に、以下のスクリプトを記述する。
if (handle.status == 'open') {
Water.generate({ amount: 10, temperature: 'cold' });
}
ひねると水が出た。完璧だ。 同様に、コンロには火属性のコードを、照明には時間帯で明るさが変わるコードを埋め込む。 魔力消費なし、メンテナンスフリーの全自動システムだ。
「主様は、神様なのですか?」
リリスが、冷蔵庫(氷魔法で冷却中)から冷えた水を取り出しながら、真剣な顔で聞いてきた。
「ただのエンジニアだ。神様ってのは、もっと適当な仕事をする奴のことだよ」
俺は窓の外を指さした。 空にはまだ、時折テクスチャの継ぎ目が見える。
こうして、バグだらけの荒れ地に、世界一快適な「事故物件」が完成した。
だが、俺たちはまだ知らなかった。 この異常な魔力反応(主に俺の改変作業のせい)を感知して、近隣の魔物たちが大移動を始めていることを。




