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次の町へ向かう途中、俺の作った道路が有料化されていました

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無限ループの街「クロノ」を脱出した俺たちは、浮遊キャンピングカー(改造馬車)で快適な旅を続けていた。  車内は冷暖房完備。揺れもなし。  だが、空気はドロリと淀んでいた。


「……レン様。お昼ご飯ですが」 「なんだ、エリア」 「目玉焼き以外なら何でもいいです。黄色と白の円形を見ただけで、動悸と眩暈と吐き気が……」


 聖女エリアが死んだ魚のような目で訴える。  50回以上のループ朝食は、彼女の精神に深い傷跡トラウマを残したらしい。


「奇遇ですね、エリア。私もですわ」


 向かいの席で、リリスがナイフを片手に、虚空を見つめながら低い声で呟く。


「あの女将……私の目の前で、50回も主様に手料理を振る舞いました。50回です。許されません。……最後の方は、彼女が『おはよう』と言う前に、どの角度で首を刎ねれば返り血が主様にかからないか、そればかりシミュレートしていました……フフッ」


「ひぃっ!? リ、リリスさん!? 目が据わってますよ!?」 「主様の胃袋は私の領土テリトリーです。それを侵す者は、概念ごと消去デリートすべき……ですよね?」


「おい、リリス。ナイフをしまえ」


 俺はハンドルを握りながら冷や汗をかいた。  どうやらループ中、食堂の空気が重かったのはガトのせいだけじゃなく、リリスが発していた殺気のせいでもあったらしい。  危うく世界崩壊のトリガーを引くところだった。


「まあ安心しろ。今日の昼はサンドイッチだ。……っと、そろそろ『あの道』が見えてくる頃だな」


 俺は話題を変えるべく、モニター(地図アプリ)を確認してハンドルを切った。  この先には、以前俺が「地形操作のテスト」で作った、ショートカット用の道路があるのだ。


 ◇


 森を抜けると、そこには異様な光景が広がっていた。  鬱蒼とした雑木林の中に、突如として出現する**「片側一車線の綺麗に舗装されたアスファルト道路」**。  白線まで引いてある、完全な現代日本の公道だ。


「うわぁ……。何度見ても世界観がバグってますね、この道」 「仕方ないだろ。土の道だと馬車のタイヤが汚れるから、テストついでに舗装データ(国道1号線)をコピペしたんだ」


 俺たちはその快適なアスファルトの上を滑るように進んだ。  ガタガタ道とはおさらばだ。  ……そう思っていたのだが。


「チッ。……何かありますわ」


 リリスが不機嫌そうに舌打ちをして前方を指差す。  まだ「殺意」が収まっていないらしい。


 道路の真ん中に、丸太で作られた粗末なバリケードが置かれ、道を塞いでいた。  そして、その周りには薄汚い男たちがたむろしている。


「ヒャッハー! 止まれ止まれぇ!」 「ここは俺たち『黒鉄くろがね盗賊団』のシマだぜぇ!」


 絵に描いたようなモブ盗賊だ。  俺が馬車を止めると、リーダー格の男が窓ガラスをドンドンと叩いた。


「おい金持ちそうな兄ちゃん! この『魔法の石畳』を通りたきゃ、通行料を払いな! 金貨10枚だ!」


「……は?」


 俺は窓を開け、眉をひそめた。


「通行料? この道、誰が作ったか知ってるのか?」 「あァ? 知るかよ! ある日突然できたんだ、見つけた俺たちのもんだろ! 早い者勝ちだ!」 「そうだそうだ! 嫌なら森の中を通りな!」


 盗賊たちが下卑た笑い声を上げる。  なるほど。所有権を主張するわけか。


「主様。……っていいですか?」


 リリスがスッと立ち上がった。  その背後には、どす黒いオーラ(ループのストレス)が立ち昇っている。


「ちょうど今、ムシャクシャしていたんです。何かを壊したくてたまらないんです。あの汚い男たちを、素粒子レベルまで分解して『最初からいなかったこと』にしても?」


「ひぃッ! リリスさん、八つ当たりは良くないですよ! ……でも、神聖魔法で浄化(物理)するくらいなら神もお許しになるかと……!」


 エリアまでストレスで好戦的になっている。  このパーティー、精神衛生状態が最悪だ。


「待て二人とも。ここで殺り合うと、アスファルトに血痕がついて掃除が面倒だ」


 俺は盗賊たちに向き直った。  怒りはない。ただ、エンジニアとしての冷徹な判断があるだけだ。


「おい、お前ら。フリーウェア(無料素材)だと思って黙認してたが、俺のコードを使って『商売』するなら話は別だ」


「あ? 何をごちゃごちゃ言って……」


「それは明確な**『ライセンス違反』**だ。利用規約(俺の気分)に基づき、サービスの提供を停止する」


 俺はコンソールを展開した。  対象は盗賊たちが立っている「バリケード周辺の道路データ」。


 Select Area: Road_Asphalt  Change Texture: Swamp (Deep_Mud)  Property: Friction = 0


 Enter.


 ズブッ……!


「「「へ?」」」


 盗賊たちの足元。  硬いアスファルトだったはずの地面が、一瞬にして**「底なしの泥沼」**へと変質した。


「うわっ!? な、なんだこれ!?」 「沈むっ! 足が抜けない!?」 「ツルツル滑るぞぉぉ!?」


 しかも摩擦係数はゼロだ。  彼らは泥の中でもがけばもがくほど、ローション相撲のようにツルツルと滑り、泥沼の深みへとハマっていく。


「た、助けてくれぇぇ!」 「道が! 道が腐ったぁぁ!」


 パニックになる盗賊たち。  俺は冷ややかに彼らを見下ろした。


「安心しろ、死にはしない。ただ、腰まで泥に浸かって反省するんだな。……行くぞ」


 俺は馬車を再発進させた。  もちろん、俺の馬車が通るルート(轍)だけは、リアルタイムで「硬度なアスファルト」に再構築しながら進む。


「あ、あいつ……魔法使いか!?」 「覚えてろよぉぉぉ……ブクブク」


 泥に沈んでいく捨て台詞を背に、俺たちはバリケードを突破した。


「チッ……。主様は優しすぎますわ。私なら全員の座標を上空1万メートルに変更しましたのに」 「……リリスさん、やっぱり疲れてますね。あとで甘い物でも食べましょう」 「そうだな。次の町に着いたら、美味いケーキでも食おう」


 俺はハンドルを握り直す。  リリスのガス抜きをしないと、次は町の一つや二つ消し飛びかねない。  俺たちは、ジョーカーの手がかりがあるという「カジノ都市・ベガス」へと急いだ。

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