表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/33

犯人は、食堂の隅でずっとため息をついていました

作品評価&ブックマークをお願いします!

60回目の朝食。  俺たちはもう食事に手を付けず、食堂全体をジロジロと観察していた。


「いいか、よく見ろ。この世界にあるオブジェクト、NPC、環境音。全ての中に『ループの起点』があるはずだ」


 俺の指示に従い、リリスとエリアも目を光らせる。  女将さんが配膳するルート。  窓の外を歩く村人のタイミング。  壁に掛かっている時計の秒針。


 全てが完璧に同じ動きを繰り返している。  その中で、一つだけ「違和感」のある存在がいた。


「……レン様。あそこの男性、気になりませんか?」


 エリアが小声で指差した。  食堂の隅っこ。観葉植物の陰に隠れるように座っている、一人の陰気な冒険者風の男。  彼は一口も食事に手を付けず、ひたすら宿の入り口を見つめ、深いため息をついている。


「……はぁ。来ないな……」


 男が呟く。  そのタイミングは、毎回微妙にズレていた。  他のNPCが録音テープのように同じセリフを繰り返す中、彼だけは**「感情の揺らぎ」**のようなノイズを発している。


「あいつだ」


 俺は確信し、管理者権限で男の内部データをスキャンした。

<NPC: Quest_Giver_04 (Role: Villager_C)>

Name: Gato

Status: Waiting

[Event_Flag: "Love_Letter_Reply" = False]

Loop_Condition: If (Time > 08:00 AND Flag == False) -> System.Reset()


「ビンゴだ……!」


 俺は膝を打った。  この男・ガト。彼は特定のイベントフラグ「ラブレターの返事」が回収されない限り、世界をリセットし続ける特異点だったのだ。  彼が「手紙が来ないまま8時になる」という事実に絶望した瞬間、世界は「失敗」と判定されてやり直しになる。


「なんて迷惑な男なの……! たかが失恋で世界を巻き込まないで!」  エリアが殺意を込めてガトを睨む。


「主様、殺りましょう。彼を消去すればループ条件も消えます」  リリスがナイフとフォークを構える。


「待て。原因は分かったが、対象ターゲットの殺害は最終手段だ」


 俺はさらに深くコードを解析した。  彼が待っているのは「隣町のパン屋の娘」からの返事。  しかし、マップデータ検索をかけても、この町に向かう配達員や手紙のデータが存在しない。  恐らく、開発者が手紙のデータを入れ忘れたか、配達員が途中でバグって消滅したのだろう。


「……正規ルートでのクリアは不可能だ。手紙は永遠に届かない」 「じゃあ、やっぱり殺るしか……」 「いや、ないデータは作ればいい」


 俺はニヤリと笑った。これがデバッガー兼チーターの特権だ。


「リリス、便箋とペンだ。俺が今から**『最高に情熱的で、世界を納得させるレベルの偽ラブレター』**を作成する」 「えっ……主様が、ですか?」


「ああ。送信元データを偽装し、筆跡鑑定スキルも騙せる完璧な偽物を作る。……中身(文章)は、エリア、お前が考えろ」


「はぇっ!? わ、私ですか!?」


 エリアが素っ頓狂な声を上げる。


「聖女なら愛の教えとか説いてるだろ? 男が読んだ瞬間に『うおおおおっ!』ってなるような、感動的な愛の言葉を捻り出せ!」 「む、無茶です! 私、神様への愛しか知りませんし、そもそも恋愛経験なんて……!」 「やるんだよ! 61回目の目玉焼きを食いたいのか!」 「……っ! や、やります! 書きます!」


 こうして、ループ脱出の鍵を握る「偽造ラブレター作戦」が始まった。


どんどん更新していきますので作品評価&ブックマークをお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ