太陽を沈めても、サーバー同期で強制リセットされます
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「おはようございます、お客様! 朝食の目玉焼きが焼けましたよ!」
51回目の朝。 聖女エリアがベッドの上で「キェェェェッ!」と奇声を上げ始めた。 限界が近いらしい。
「落ち着けエリア。今回は『技術的アプローチ』で行く」
俺は窓を開け、空を見上げた。 抜けるような青空。爽やかな朝日。 この「朝」という環境設定そのものが、ループの檻だ。 物理干渉がダメなら、システム側から時間を飛ばせばいい。
「時間を無理やり進める(タイム・リープ)」
俺は管理者コンソールを展開した。 町の「時間経過」を管理するローカルエリア設定にアクセスする。
System_Time: Set 18:00 (Evening) Sun_Position: West
Enter!
シュンッ! 世界が一瞬で暗転した。 窓の外は夕焼け……いや、星が瞬く夜になった。強制的に夜にしたのだ。
「や、やった! 夜です! 朝を越えました!」 エリアが窓に張り付いて歓喜の涙を流す。 食堂に降りて確認すると、女将さんも「あら、もうこんな時間? 晩御飯の支度をしなきゃ」と驚いている。皿を割るイベントはスキップされた!
「勝った……! ループ脱出だ!」
俺がガッツポーズをした、その直後だった。
ジジッ……ザザッ……。
空の星が、ノイズのように点滅し始めた。 空間全体に、不気味な赤い警告ログが流れる。
[Error: Time_Sync_Failed]
Server_Time (06:05) does not match Client_Time (18:00).
Initiating Auto_Correction...
「な……サーバー同期エラーだと!?」
俺の顔が引きつる。 俺が書き換えたのは、あくまで「このエリアの表示時間(クライアント依存)」だけ。 世界全体を管理しているメインサーバーの時間は「朝のまま」だったのだ。
グニャァァァ……!
夜空がゴムのように引き伸ばされ、強引に剥がされる。 西に沈めたはずの太陽が、バチンッ! とゴムパッチンでもされたかのような勢いで東の空に戻ってくる。
「待て! やめろ! 俺の努力をロールバックするな!」
俺は必死にコードを打ち込むが、巨大な修正パッチの奔流には勝てない。 女将さんの動きが早送りで逆再生される。 俺たちは階段を後ろ向きに登らされ、ベッドに吸い込まれる。
――ブォン。
「おはようございます、お客様! 朝食の目玉焼きが焼けましたよ!」
52回目の朝。 俺たちは三人並んで、虚無の目で天井を見つめていた。
「……主様。もう、この宿を爆破して更地にしませんか?」 「……エリア、お前、聖女じゃなかったか?」 「目玉焼きを見るくらいなら、地獄の業火で焼かれる方がマシです……」
聖女が闇落ちしかけている。 俺も精神的に追い詰められていた。 小手先のチートや改変では、この「確定した運命」は覆せない。 バグを直すには、バグの原因(根本)を見つけるしかないのだ。
「……初心に帰るぞ」
俺はフラフラと立ち上がり、食堂へ向かった。 目玉焼きを食べるためではない。 この狂った世界を、デバッガーの目(観察眼)で見直すために。
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