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時間がループする街で、宿屋の朝食を50回食べさせられています

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「おはようございます、お客様! 朝食の目玉焼きが焼けましたよ!」


 元気な女将さんの声で目が覚める。  俺はガバッと起き上がり、脂汗を拭った。


「……50回目だ」


 隣のベッドでは聖女エリアが「うぅ……もう食べられない……」と夢見心地でうなされ、リリスは「ふふ、主様の寝顔、50回見ても飽きません」とニヤニヤしている。


 宿場町クロノ。  この町は、朝6時から始まり、朝食後の「皿が割れる音」をトリガーにして、再び朝6時に戻るという『無限ループ』に陥っていた。


「よし、今度こそ脱出するぞ」


 俺たちは食堂へ降りた。  テーブルには、湯気を立てる目玉焼きとベーコン、焼きたてのパン。  最初の数回は「美味い」と感動したが、50回連続ともなると、それはもはや「茶色と黄色の暴力」だ。


「レン様……私、もう吐きそうです。味が……味のゲシュタルト崩壊が……」 「我慢しろエリア。食わないと『空腹イベント』が発生して、女将さんに心配される(タイムロスする)」


 俺たちは無言で機械的に朝食を胃に流し込んだ。  この数日間(ループ内時間)、俺たちはただ手をこまねいていたわけではない。ありとあらゆる「脱出方法」を試しては、世界に弾き返されてきたのだ。


【試行その1:物理的脱出】  馬車で全速力で町を出る作戦。  →町の境界線を越えた瞬間、視界がホワイトアウト。「おはようございます!」の朝に戻された。どうやらこの町自体が閉鎖空間インスタンス・ダンジョン化しているらしい。


【試行その2:トリガーの阻止】  時間が巻き戻る原因である「女将さんが皿を割る」のを物理的に防ぐ作戦。  →リリスが超高速で動き、転ぶ女将さんを支えた。  →成功したかと思いきや、その衝撃でテーブルが揺れ、花瓶が落ちて割れた。ガシャーン。「おはようございます!」


【試行その3:オブジェクトの全消去】  「割れるもの」がなければいい。  →俺が先回りして、厨房の皿、コップ、花瓶など「割れ物属性」を持つ全アイテムをインベントリに収納した。  →手ぶらで転んだ女将さんが、勢い余って窓ガラスに頭を突っ込んだ。パリーン。「おはようございます!」……世界は何が何でも「割れる音」を鳴らしたがっている。


「……くそっ。物理も運命改変も通じないとはな」


 俺は50回目のベーコンを飲み込み、空になった皿を睨みつけた。  このループは、単なるバグじゃない。もっと根深い「シナリオ上の強制力」が働いている。


 その時、隣でリリスがスッと立ち上がり、あの大鎌を取り出した。


「主様。お皿や窓ガラスを消してもダメなら……『割る人』の方を消しましょう」


 彼女の瞳には、一切の慈悲がない。  リリスは殺気立った足取りで、厨房の方へ向かおうとする。


「あの女将というオブジェクト(NPC)を削除すれば、転ぶイベント自体が発生しなくなります。簡単なことですわ」


「待て待て待て! ストップ!」


 俺は慌ててリリスの腰に抱きついて止めた。


「物理削除は最終手段だ! それに重要NPCを消すと、フラグ管理がおかしくなって永遠に進行不可ハマりになるリスクがある!」 「ですが主様、これ以上あの方に目玉焼きを食べさせられるのは我慢なりません。主様の胃袋は私の料理で満たされるべきです」 「動機が嫉妬かよ! とにかくステイだ!」


 暴走するリリスを必死に抑え込んでいると、厨房から運命の足音が近づいてきた。  女将さんが足を滑らせる。


「あらいやだ!」  ガシャンッ!


 ――ブォン。


 視界が白く染まる。  クソッ、またダメか。  薄れゆく意識の中で、俺は次なる「悪あがき」を画策していた。

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