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そのマグロ丼、解像度不足につき

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当たり判定の消失事件を解決した俺たちは、町一番の料理屋で、約束の報酬である「特選・海鮮マグロ丼」を待っていた。


「お待たせしやした! これが当店自慢、朝獲れの最高級マグロ丼でさぁ!」


 威勢のいい店主が、ドンッとテーブルに丼を置く。  俺とリリス、そして聖女エリアは、その丼の中身を覗き込み――そして固まった。


「……主様。これ、まだロード中ですか?」


 リリスが小首をかしげるのも無理はない。  丼の上に載っていたのは、艶やかな刺身――ではなく、「真っ赤な立方体の集合体」だった。  カクカクとしたポリゴン状の赤いブロックが、白米の上に積み上げられている。表面のテクスチャは粗く、モザイクがかかっているようにさえ見える。


「……恐らく、さっきの『重力無限大』の影響でメモリ不足になって、アイテムの描画処理を軽量化(低画質化)したまま戻ってないんだな」


 俺は冷静に分析した。  見た目は完全にレトロゲームのアイテムだ。あるいは、赤いレンガの欠片。食欲をそそる要素が皆無である。


「こ、これを食べるのですか……? どう見ても『赤い四角』ですが……」


 エリアが恐る恐るスプーンを伸ばす。  俺も箸で「赤い四角」をつまみ上げた。プルン、としなる感触はある。


「まあ、パラメータ上は『最高級』のはずだ。いただきまーす」


 俺は意を決して、赤いブロックを口に放り込んだ。


 ――ジュワァァァ……!


 その瞬間、口の中に濃厚な脂の旨味が爆発した。  舌の上で瞬時にとろける食感。鼻に抜ける上品な磯の香り。  それは間違いなく、前世でも食べたことがないレベルの「大トロ」だった。


「うまっ!? なんだこれ、見た目に反して味の情報量が凄まじいぞ!」 「んんっ……! 美味しいです主様! お口の中でとろけますわ!」


 リリスも目を丸くし、次々と赤いブロックを頬張っている。  エリアに至っては、「四角いのに……味がする……?」と脳がバグりかけながらも、スプーンが止まらない様子だ。


「見た目は低ビットのドット絵だが、味のステータスはカンストしてるな。……ある意味、目隠しして高級料理を食ってる気分だ」


 俺たちは視覚情報マズそうと味覚情報(激ウマ)のギャップに脳を揺さぶられながら、幻のマグロ丼を完食した。  この世界、五感の整合性すらバグっているらしい。

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