王様の依頼で、世界を直す旅(デバッグ・ツアー)に出ます
聖女エリアが「デバッグ班(研修生)」として加わってから数日。
俺の領地は平和だったが、王都の方はそうでもなかったらしい。
再び国王からの使者がやってきた。今度は「SOS」のメッセージを持って。
「レン殿! どうか我が国を救ってはくれまいか! 実は……国内各地で『怪奇現象』が多発しており、流通や生活が麻痺しているのだ!」
国王からの手紙には、悲痛な叫びが綴られていた。 曰く、「港町で人が地面に沈む」「鉱山で時間が進まない」「街道の橋が見えない壁で通れない」などなど。 「……完全にバグ報告の山だな」
俺は手紙を読みながら苦笑した。 この世界、リリース直後の大型アップデートでも失敗したのか? 至る所で不具合が噴出しているらしい。
「主様、放っておきましょう。そんなバグだらけの世界、滅んでしまえばいいのです」
リリスが冷たい紅茶を淹れながら、物騒なことを言う。 俺も基本的には引きこもりたい派なのだが……手紙の最後の一文が目に留まった。
『解決の暁には、報酬として王家の宝物庫の好きなアイテムと、特産品(最高級の海産物、幻の肉、極上の酒)の永久無料パスを進呈する』
「……海産物」
俺の箸が止まる。 今の領地は内陸だ。野菜は美味いが、新鮮な刺身や寿司はない。 それに、バグを放置すると、いずれ俺の領地にも「処理落ち」などの悪影響が及ぶ可能性がある。
「……仕方ない。行くか」 「えっ、行くのですか?」 「ああ。世界が重いと快適なスローライフが送れないからな。ついでに美味いものを食いに行くぞ」
俺が立ち上がると、部屋の隅で正座させられていた聖女エリアがガバッと顔を上げた。
「わ、私も行きます! 私の『悪探知』スキルがあれば、バグの場所がすぐに分かりますから!」 「そうだな。お前はカーナビ(道案内)代わりにちょうどいい」
こうして、俺たちは領地を黒装束の農夫たちに任せ、旅に出ることになった。 もちろん、徒歩や馬車で行くつもりはない。
俺はガレージ(洞窟の一角)にあった荷運び用の馬車のデータを呼び出し、書き換えた。
Base: Wooden_Carriage
Add: Anti-Gravity_Engine
Add: Auto_Drive_System
Interior: Luxury_Camper_Van
Enter.
ゴゴゴ……プシューッ。 木造の馬車が、タイヤのない「浮遊するキャンピングカー(外装は木目調)」に変形した。 サスペンション完備、冷暖房付き、キッチン・ベッド完備の魔改造車両だ。
「さあ乗れ。世界修復ツアー(デバッグ・キャラバン)の出発だ」




