解釈違いの過激派が来たので、アクセス権限を剥奪します
教団員たちをこき使い始めて三日。
彼らの働きぶりは優秀だった。荒れ地は見事な農園になり、温泉の更衣室まで完成していた。 俺がテラスで優雅に彼らの労働を眺めていると、空から突然、爆音が響いた。
「偽物がァァァッ!!」
ドォォォン!!
農園の中央に黒い雷が落ち、作業中だった教団員たちが吹き飛ばされる。 土煙の中から現れたのは、全身に刺青を入れた狂気的な男だった。
「貴様か! 我が教団を誑かし、神聖なる魔力を『農業』などに浪費させる愚か者は!」
男が俺を指さして吠える。 吹き飛ばされた教団員の一人が、血を流しながら叫んだ。
「枢機卿! あのお方は本物です! あの方の御力を見れば分かります!」 「黙れ! 魔王様とは、もっとこう……恐怖と破壊の象徴であるべきだ! スローライフなど解釈違いだァァッ!!」
どうやら「解釈違い」でキレる厄介なオタク(過激派幹部)が来たらしい。
<Enemy: Cardinal_Zalgu>
Level: 80
Magic: Dark_Thunder (S-Rank)
Status: Berserk
</Enemy: Cardinal_Zalgu>
レベル80。勇者アレンより遥かに格上だ。 男の手から、漆黒の雷球が膨れ上がる。
「死ねぇぇ! 貴様の存在自体を、この『冥府の雷』で消し炭にしてくれる!」
バリバリバリッ! 空気が焦げるほどの高出力魔法が、俺のテラス目掛けて放たれた。 リリスが反応する。
「主様ッ!?」 「座ってろ、リリス。……うるさいから『ミュート』にする」
俺はカップを置くことなく、片手でコンソールを操作した。 迫りくる極大魔法。そのデータ構造に割り込む。
Target: Magic_Hell_Volt Access_Control: Deny (Read/Write/Execute)
Enter.
フッ……。
俺の目の前、鼻先数センチまで迫っていた雷撃が、唐突に「消失」した。 爆発も、衝撃もない。 ただ、最初から無かったかのように消え失せた。
「……あ?」
枢機卿が間の抜けた声を上げる。
「な、何をした? 防いだのではない……魔法そのものを無効化したのか!?」 「無効化じゃない。『実行権限』を剥奪したんだ。俺の領地で、俺の許可なく重い処理を走らせるな」
俺は面倒くさそうに立ち上がる。 男は顔を引きつらせながら、再び魔力を練り上げようとした。
「ば、馬鹿な! ならばこれはどうだ! もっと強大な……」
「……っ、んぬぅぅ!?」
男が呻く。魔法が出ない。 当然だ。俺は今、この空間の設定を書き換えた。
[Area_Policy]
Magic_Use: Administrator_Only
「あ、あれ? 魔力が練れない? なぜだ!?」
「お前のIP(魔力波長)はBANした。二度と魔法は使えん」
俺は指先を動かし、男の座標(Y軸)を指定する。
「さて、騒がせた罰だ。少し頭を冷やしてこい」
Target: Cardinal_Zalgu Set_Position: Y + 5000m
シュンッ!
男の姿が一瞬で消えた。 そして数秒後――遥か上空、雲の切れ間から「点」となって落下してくる姿が見えた。
「ヒィィィィィィィッ……!!」
ドォォォォン!!
遠くの荒れ地に土柱が上がる。 まあ、レベル80なら即死はしないだろう。全身複雑骨折くらいで済むはずだ。
静寂が戻った庭で、俺はリリスと教団員たちに向き直った。
「……で? まだ何か文句ある奴はいるか?」
俺の問いかけに、教団員たちは涙と鼻水を流しながら、額が地面にめり込む勢いで平伏した。
「い、一生ついて行きますぅぅぅ!!」 「魔法を『禁止』する魔法……! これぞ真の魔王の御業!」 「農作業に戻ります! トウモロコシ最高!」
リリスが誇らしげに胸を張る。
「さすが主様。物理的な削除ではなく、権限による支配……勉強になります!」
こうして、教団内の反乱分子は排除され、俺の領地には「極めて従順で優秀な農夫たち」が定着することになった。 平和なスローライフの再開である。




