ドロップアイテムが多すぎて、経済を破壊しかけました
翌日。
俺たちは最寄りの交易都市「ゼオ」を訪れていた。
目的は、昨日の自動迎撃で手に入った大量の魔石と素材の換金だ。
生活基盤は整ったが、やはり調味料や衣類など、店でしか買えない物もある。
「ここが人間の街ですか……やはり解像度が低いです」
フードを目深に被ったリリスが、不満そうに呟く。
彼女の美貌は目立ちすぎるため、認識阻害のコードを付与したローブを着せて隠している。
俺たちは街の中央にある冒険者ギルドへ向かった。 カウンターには、気だるげな受付嬢がいる。
「いらっしゃいませ。買取ですか?」 「ああ。少し量が多いんだが、大丈夫か?」 「はいはい、大丈夫ですよ。後ろの査定台に出してください」
彼女は事務的に答えた。
量が多いと言っても、精々袋一つ分くらいだと思ったのだろう。
俺は査定台の前に立ち、ストレージを開放した。
「じゃあ、出すぞ」
Output: All_Items
ドサッ。 ガラガラガラ…… ドゴォォォォォン!!
一瞬で、ギルドのホールが埋め尽くされた。
オークの牙、ワイバーンの皮、そして高品質な魔石の山。
天井に届くほどの巨大な山が出現し、受付嬢が悲鳴を上げて椅子から転げ落ちた。
「きゃあああっ!? な、何ですかこれぇぇ!?」 「え、全部出せって言ったろ?」
ギルド内が騒然となる。 その騒ぎを聞きつけて、奥から恰幅の良い男――ギルドマスターが飛び出してきた。
「な、なんだこの騒ぎは! ……って、なんじゃこりゃあ!?」
ギルドマスターは素材の山を見て、目玉が飛び出しそうになっていた。
「ワイバーンの皮が五十枚!? それにこの魔石の純度……『Sランク』相当だと!? 国宝級じゃないか!」
彼は震える手で魔石を拾い上げた。
昨日の自動迎撃システムが急所にしか当てていないため、素材の状態が異常に良いらしい。
「き、君は一体何者だ!? これほどの魔物の群れを、どうやって……まさか軍隊でも連れてきたのか?」
周囲の冒険者たちが、畏怖の眼差しで俺を見る。 俺はポリポリと頬をかいた。
「いや、家の近くに湧いたから、害獣駆除しただけだ」
「害獣駆除でドラゴンの亜種を狩るやつがいるか!」
ギルドマスターが叫ぶ。
その時、俺の背後でリリスが一歩前に出た。 フードの下から、冷ややかな殺気が漏れ出す。
「主様に声を荒らげないでください。……その口、バグとして修正しますよ?」
空気が凍りついた。 リリスのプレッシャー(威圧スキルLv.999)に、歴戦の冒険者たちがガタガタと震え出す。
「おっと、待てリリス」
俺は慌ててリリスを制止した。 ここでギルドを壊滅させては換金ができない。
「すまない、連れが過保護でな。……で、買い取れるのか?」 「か、買い取ります! 買い取らせてください! ただ、金額が大きすぎて今すぐには用意できません!」
結局、この素材の山はギルドの年間予算を吹き飛ばすほどの価値があったらしい。
俺は当座の生活費として金貨100枚だけ受け取り、残りはギルド預かり(という名の貸し付け)にすることで合意した。
帰り道。 懐が温かくなった俺は、リリスの機嫌を取るために屋台で串焼きを買ってやった。
「主様、これ美味しいです!」 「そうか。低画質だけど味は悪くないだろ?」 「はい! 主様と一緒に食べるなら、何でも最高解像度です!」
リリスの笑顔を見ながら、俺は思った。 トラブルだらけだが、悪くない異世界生活だと。
だが、俺はまだ気づいていなかった。
ギルドに持ち込んだ素材の中に、「魔王復活の鍵」となる重要アイテムが混ざっていたことに。
そして、それを探していた「とある勢力」が、俺たちに目を付け始めたことに。




