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若葉入隊 一

 何が何だかさっぱりわからない。

 俺は、今しがた投げかけられたあまりにも衝撃的な「一つ目の謎」について、頭の神経を全力フル回転させながら、案内人の後ろを歩いていた。

 一生忘れることはないであろう入隊試験に合格した…らしい俺は、「二つ目の謎」こと零番隊の隊室に向かっている。

 俺が「一番目の謎」について、一分の解答も出せないでいると、進む先の廊下を一人の青年が歩いてきた。


「お!きみが新入隊員の、…えーと…」


「あ、御守戸若葉と申します!先ほど近藤勇殿に零番隊への入隊を許可されたものです!」


「零番隊?そりゃ、本当かい!?いやぁ、助かるよ!零番隊は特殊な分、人手が足りなくてねぇ。」


「あ…、ということは、あなたは…」


「ああ!俺は九十九に一二三と書いて、九十九一二三つくもかずふみ零番隊隊員。よろしく、若葉くん!」


 差し出された手を握りながら、俺はその青年を観察していた。

 おそらく俺より三つ四つ上かと思われるその青年は、意志の強さを表すような太い眉毛と自信にあふれた笑顔をしている。

 ヤマアラシのようにピンツンバラとした髪は錆や血の色に似た深い赤色で、特に俺の網膜に焼きついたのは、銀白金属リチウムとの炎色反応を起こした炎のような、鮮やかな紅の瞳だった。


「さて、若葉くん。せっかくだからこっからは俺が案内しよう。」


 案内人に「もういいよ」と声をかけ、九十九さんは俺を零番隊へと案内するのであった。



「新入りさんが来たぞおぉぉーーー!!」


 障子戸をサァァァンッ!と思いっきり開け、九十九さんは元気溌剌げんきはつらつに隊員たちに「お知らせ」した。


「さ!若葉くん、あいさつしてー!」


「あ、はい!…えぇと、御守戸若葉と申します。本日より、零番隊隊員としてご奉仕させていただきます。よろしくお願いします!」


 長方形の隊室。俺の入ってきた障子戸の奥のほうで談笑していた藍色の髪の青年が、


「こちらこそ、よろしくー。」


 と軽い抑揚ノリで返してくれた。

 その談笑相手。かなり若く見える、日に焼け脱色した感じのこげ茶の髪の少年も、


「よろしくおねがいします。」


 と一礼。

 「若いのにえらいなぁ」などと年長者の言葉セリフのような感想すら覚える。


 と、そこで、ふと「三番目の謎」こと「深緑への賞賛」について、答えとおぼしきものに気付いた。

 九十九さんの瞳は紅。藍色の青年の瞳は、明け方の空のような蒼。こげ茶の少年は、星明かりに似た金色をしている。

 これは要するに、外国人の血を受け継いだものでは?と思ったわけだ。それなら、「一番目」を除く謎は解決する。

 そこで、俺は部屋のちょっと奥のほうで座禅を組む青年に目を向けた。…目をつむっている。

 視線をさらに左奥に向けると、その先の少女は戸惑いつつ会釈した。彼女の瞳は鳶色だ。が、若干薄いような…。…彼女?


「あのぉ…九十九さん?」


「一二三でいいよ!」


「あ、はい。…一二三さん。新撰組隊士って、男性限定じゃ…」


「ああ!あんずちゃんは特別でね!」


 視線合図ウィンクつきで、一二三さんは底抜けに明るく、当たり前のように答えた。

 しかし、俺の脳内は、隙間がないくらい疑問符号クエスションマークで埋め尽くされている。

 このまま、過負荷オーバーヒートでぶっ倒れるんじゃないだろうか。


「一二三さん。零番隊って…いったい、どういったものなんですか?」


 三つの謎の真相に迫る質問。


「んー…。説明するとめんどく…ややこしいから…、…うん。ちょうど任務が入ってるから、見学するかい?実際に見れば、すぐ理解できると思うよ?」


 俺は否応なしに首を縦に振った。

 これ以上、思考のとぐろに絡めとられているのは限界だったのだ。

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