セリナの告白【前編】
あちこちでチラチラ出てくるセリナがカズサに告ったエピソード。その全容前編です。後編は…前編の内容からも分かる通り『ウラ』扱いです。
カズサが部屋から出たところで、足元に駆け寄ってきた小さな『何か』。
それは猛ダッシュでカズサへ近づくと
「カズサ! あのっ! これっ!」
と去っていった。
セリナである。
これ、と言ってセリナがカズサに渡したのは一通の封筒。
「…手紙?」
カズサへ、との宛名書き。
「何?」
開けてみる。
[今日午後2時
談話室で待ってます]
と、少し丸みがあるもののきれいで読みやすい字で、それは書かれていた。
「…ラブレター…?」
カズサは首を傾げるが…
◆
その午後2時。
カズサはトレーニングルーム横にある談話室へ行ってみた。
周りにひと気は無し。
ドアを開け、入ると、小さな女の子が窓際に立っていた。
普段見ないような服。いかにもがんばってオシャレをしてきました、という感じの。
言うまでもなく、セリナ、である。
カズサは中へ入り、ドアを閉める。
「あ、あの、来て…くれたんだね…ありがとう…」
今にも消え入りそうな小さな声。
「まぁ来いって言われたから。で、何?」
字面で見ればぶっきらぼうだが、実際ぶっきらぼうだ。
普段からこんななので、これにいちいち腹を立てる者はいない。セリナとて、それは承知している。
「あのね、あの、その、なんというか、あの…」
ほぼ同じ言葉を繰り返し、すでに一〇分ほど経過。
「あの、だから、その…」
「俺、帰っていいかな…」
「あのッ⁈ 待って、その、あの、言いたいこと、っていうか、その、伝えたいというか」
「ワケわかんねぇよ…」
「うん。わかんないよね、うん、そう、あの、お願いっていうか…」
「なんか俺、悪いことでもしたかなぁ?」
「いえ、そうじゃなくて、その、あの…」
「言いたいことあんなら言ってくれねぇかなぁ?」
「…うん…分かった…」
すぅぅぅぅと長い深呼吸の後セリナは言った。
「あの! 私を抱いてくださいッッッ!」
「…は?」
「カズサ! 私を抱いてくださいッッッ!」
「はぁぁぁぁっ?」
(コイツの言ってる意味がわかんねぇ…何だ? 何かの暗号か? あるいは分かりやすく、抱っこして高い高いするとか…コイツちっこいからそういう…いや、そうじゃねぇ、よなぁ…だったら…)
「…それって…ストレートに言って、セックスするとか、そういう意味で?」
コクコクコクとすごい速さで頷くセリナ。
「…マジで言ってんの?」
コクコクコクとすごい速さで(略)
「マジか……なぁ、お前、俺のこと好きなの?」
まさか肯定が返ってくるとも思わず聞いたカズサだったが
コクコクコクと(略)
「…俺はお前のこと、よく知らないんだけど」
「うん…分かってる…」
「それでも?」
「…うん…」
「あのさぁ、ミキヒサから助けたってぇの、あれはナシな。そういうつもりでやったんじゃないし、それで恩着せるつもりなんかないし、まして恩をカラダで払え、とか思ってないぜ?」
「…うん…カズサはそういうこと、言わない人だって分かってる…」
「えー…それじゃ何でよ? わけわかんねぇよ…」
「うん…おかしなこと、急に言ってるって思われるの、分かる。でも、でもね! 私、抱いて欲しいの、カズサに。もっと端的に言って、その、せ…せ…せっくす…したいというかして欲しい、というか…」
「うーん…そりゃ俺も女の子からモテるのは嫌じゃない、むしろ嬉しいけど、いきなり抱けって言われても…」
「分かってるっ! 分かってるの! 変なこと言ってるって、おかしな子だなって思われてるって、分かってるの! …私…私…ここに、アンジェラスに来る前、パパ活ってしてて…知らないおじさんと…お金のためだけど、それは承知だったんだけど、でも…知らなかったの…パパ活ってデートして終わりじゃないって…カラダを求められて…キス…初めてだったのに…カラダを触られるのも、大事なところ見られるのも…セ…セックス…するのも初めてだった…そういうのって大好きな人とするものだ、って思ってた…でも…そんなの関係なしに失って…みんなみんな失って…私、初めてを…みんな…知らないおじさんに…お金で…分かってるけど、お金のためって…分かってるけど、でも…でも…あの、でも、それでも…私、大好きな人に抱かれたいって…そういう幸せって、味わいたいって…あの、それで…私、カズサのことが好きになって…最近気付いて、大好きだって…あの、ミキヒサから助けてもらって、それはそれで感謝してて…でも、そうじゃなくて…カズサがミキヒサに言った言葉、私、とても感動して…そういう風に考える人っているんだって…私、とても感動して…それで、そういうこと、カズサって考えるんだって…それで、カズサのこと見てたら、気持ちが止めらなくて…今までずっと、誰かを好きになったこととかなくて、だからこの気持ちが何だか分からなくて…でもこれが恋なのかなって思って…もうどうしようもないの。もう止まらないの。もう、もう、カズサのこと思うだけで、心が弾け飛びそうなの! でも私、カラダを売ってて、汚いカラダで、その、初めてじゃなくて、だけど、その」
「ストップ! ストーップ! ちょっと待てッ!」
「…あの…」
「それ以上言うな! …あのさ、ここにいる女の子って、大体ここに来るまでの経歴っていうか、みんなカラダ売ってってぇのは俺たちみんな知ってる上で今みたいに接してる。普通に。ウリやってたからとか、そんなんで低く見るとかねぇよ。汚ぇなんて思ってねぇよ。だから言うなよ、自分で。積極的に好きになる理由にはならなくても嫌いになるとか、そういう理由にはならねぇよ。今が、そしてこれからが良ければ、それでいいだろうって思うんだ。だからその、ウリしてたとかで自分を下げるな。女の子一人一人、みんなアンナさんに認められてここに居るんだ。自信持てよ。胸張れよ」
「…うん…ありがとう…でもね、それとは別な話で、私の気持ちは止められないの…お願いです。私、大好きな人に抱かれたい。それで何もかもなかったことになんかはできないけど、それでも、大好きな人に抱かれたって記憶は残るから…私のカラダは大好きな人のために使えたって、思えるから…お願いカズサ。私を助けると思って私を抱いてください。土下座でもなんでもします。だから…」
「ってするな! お前バカか? そんなことで土下座とかすんなよ…分かったよ…抱けば…いいんだろ…?」
「うん…無理言ってるの、分かってる。こんなみそぼらしいカラダを抱けって無理言って」
「いやいや、そういうこと言うなって! その、俺が言いたいのは、その、体型差ってあるじゃんか。身長差っていうか。それで、その、大丈夫なのかなって…」
「うん…大丈夫、だと思うよ。そもそもソコって、赤ちゃんが出てくるところだし。入れるものより出てくる方が大きいからね」
「そ、そういう考えもあるのか…で、どうすんだ? どこでやるんだ? 今ここでか?」
「さすがに今ここでっていうのは…」
「うーん…それじゃ俺の部屋、他のメンバーが出払った日に、でどうだ?」
「いいの…?」
「…仕方ねぇだろ…」
「うん。分かった。ありがとう…」
「それじゃ、日にち決まったら連絡すっから…」
「うん。ありがとう…ご迷惑をお掛けします…」
「…そういうのダメって、アンナさんから言われてんだろ…」
「うん、そうだね。うん。ありがとう、カズサ」
「あ、ああ…」
◆
後半へ続く




