聖女召喚について
今、聖女召喚がちょっとした流行りになっているらしい。
まるで国の権威を競うかの様に聖女を異世界から召喚している。
もしかしたら天変地異の前触れかもしれない、という噂が巷に出ているぐらいだ。
「……という訳で我が国でも聖女を召喚しよう、という話が出ているんだ」
婚約者である王太子様がそんな話をしてきた。
「そうですか……」
「浮かない顔をしてるね、余り賛成ではないみたいだね」
私の表情を見て王太子様が言った。
「聖女は魔王が現れた時に必要とされる、と聞いております。 今は魔王もいませんし必要性を感じられません」
「備えがあった方が良いと思うんだが」
「それにわざわざ異世界から召喚する、というのも意味がわかりません。 自分達の世界の危機を余所者に託すというのはどうか、と」
「現地の者だけでは限界がある」
「後、異世界からの召喚て、簡単に言ってしまうと誘拐にあたります。 聖女様だって向こうに家族や友人がいるかもしれません。 それを絶ってしまう事は……」
私がそう言うと王太子様はハッとした表情をした。
気づいてなかったのね……。
「まぁ聖女様を返す方法があれば良いんですが無ければただの犯罪です。 そんな犯罪の片棒を担ぐ様な方とは結婚は無理ですね、犯罪者の仲間とは思われたくありませんから」
「いやいやいやっ!? まだしてないからっ!? あくまで仮定の話をしているだけだからっ!?」
「王太子様は聖女召喚には賛成しているのですか?」
「正直決めかねていたけど、君と話して考えを改めた。 もし聖女召喚をしようとするなら絶対に阻止する! 無理矢理決行しようものなら例え父親でも首根っこ掴んででも引きずり落とす!」
そんな風に力強く宣言してくれた。
私はそんな王太子様を見てクスッと笑った。
その後、本当に王太子様は国王様と真剣に話し合ったそうだ。
結果として我が国は聖女召喚はしない、と公に宣言した。
流行には乗らず我が国は独自の道を行く事を会議で決めたそうだ。
(そこまで宣言しなくても良かったんだけどなぁ……)
王太子様はどちらかに振り切るのである意味単純だ。
さて、これは蛇足になるけど聖女を召喚した他国では召喚した関係者に良くない事が起こっているそうだ。
事故にあって大怪我を負ったり最悪命を落とした方もいるそうだ。
(異世界にも神がいて、自分達の世界の人間を勝手に呼んだら怒りを買う事を忘れていたのかしら?)
まぁ他国の事なので私には関係無い。