ダンスパーティー
表彰式が無事に終わり、ホールでは生徒たちによるダンスパーティが始まっていた。
華やかな音楽が流れる中、参加者たちは思い思いの相手とペアを組み、ホールの中央で踊り始めている。
フローレンスの隣には、ニグレスがいた。
ダンスの相手として、彼を選んだのだ。
一方、会場の反対側では――ヴィオレッタが、ラファエル大魔導士をパートナーに選んでいた。
曲が始まると、それぞれのペアが向かい合い、ゆったりとしたリズムに合わせて踊り出す。
フローレンスとニグレスもまた、ぎこちないながらもステップを踏んでいた。
運動神経のあまり良くないフローレンスは、ダンスの習得にも手こずっていた。
案の定、足がもたつき、何度かリズムを崩してしまう。
(こんなことなら、もっとたくさん練習しておけばよかったわ……)
そんな彼女を、ニグレスは慣れた手つきで優しくエスコートしていた。
人間の文化に疎いはずなのに、彼はどこか自然に振る舞う。不思議なくらい、様になっている。
ふと気づけば、会場中の視線が彼らに向けられていた。
寮対抗試合での華々しい活躍もさることながら、「ドラゴンとその美しい主人」という絵のような組み合わせは、多くの者の好奇心を惹きつける。
フローレンスは顔から火が出そうなほどの羞恥心を覚えながら、ただただ目の前のステップに集中しようとしていた。
だが、ふと視線を向けた先――
そこでは、ヴィオレッタとラファエルが優雅に踊っていた。
二人のステップには一切の乱れがない。
ヴィオレッタの動きはまるで絵画のように洗練されており、その姿に見惚れる生徒も少なくなかった。
そしてラファエルもまた、そんな彼女を慈しむような眼差しで見つめていた。
その様子を目の当たりにした瞬間、フローレンスの胸にチクリとした痛みが走る。
「フィフィ、よそ見をしないで」
唐突に声をかけられ、フローレンスははっとして振り向いた。
ニグレスが、悲しげな瞳でこちらを見つめていた。
「どうして僕のことを、見てくれないの?」
その目には、抑えきれない焦燥が浮かんでいた。
「君がそんな顔をするから……僕はまた、君を攫ってしまいたくなる」
「……っ」
その言葉が終わるや否や、ニグレスはフローレンスの腕を取って窓辺へと引っ張っていった。
突然の行動に、会場中がどよめく。
彼はそのまま外のバルコニーへと飛び出すと、宙に向かって高く跳躍し――
大きな旋風が巻き起こる。
その中で、ニグレスは黒き竜の姿へと変じた。
そして、鋭い鉤爪でフローレンスの身体を優しく、しかし確かに掴み上げると――
大空へと、高く、高く、飛び立っていった。
星空の下、ひときわ目立つ黒竜の姿と、その背に乗る銀のドレスの少女。
会場に残された人々は、呆然とその光景を見上げるしかなかった――。




