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魔法学校で魔女と姿を入れ替えられて無実の罪で追放された私ですが、突然現れたドラゴンを下僕に従えて無双できました  作者: 秋名はる
第二章

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寮対抗試合‐初戦‐

寮対抗試合は、各寮の代表生徒によるリーグ戦形式で行われる。

フローレンスの初戦の相手は、水属性寮の生徒だった。


「初戦は、僕の教えた呪文を使えば君ひとりでも勝てるはずさ。でも用心して。危ないと思ったら、すぐに僕を召喚して。」


「わかったわ。」


二人は、試合に備えて夜遅くまで闇魔法の特訓を重ねてきた。習得した魔法のいくつかは、かつてヴィオレッタの屋敷で見つけた古い魔導書から読み解いたものだ。難解な古代文字の呪文だったが、フローレンスはコツコツと時間を見つけては解読し、ようやく実戦で使える段階に仕上げていた。


そして迎えた一試合目。

対戦相手として現れたのは、水属性寮の最上級生――ロクサーヌという名の女子生徒だった。戦闘力よりも知略に優れるタイプで、冷静かつ鋭い視線が印象的だった。


「下級生だからって手加減なんてしないわよ。水柱!」


試合開始の合図とともに、ロクサーヌが鋭く呪文を唱える。すると闘技場の地面が一斉に震え出し、あちこちから水が噴き出した。それは水柱となって、荒々しくフローレンスを飲み込もうと襲いかかってくる。


「我が身を守れ、鉄鎧!」


フローレンスは咄嗟に防御魔法を展開した。ヴィオレッタの魔導書から学んだ闇の防御呪文。毎晩眠い目をこすって練習した成果が、今ここで試される。


水柱がぶつかると同時に黒鉄の壁が出現し、激しい水の奔流を受け止める。魔法同士の衝突に、場内からはどよめきが起こった。


「やるじゃない。じゃあ、これはどうかしら。“大滝の昇り龍・水竜連打”!」


ロクサーヌが再度呪文を詠唱すると、先ほどの水柱がさらに膨れ上がり、巨大な龍のような姿を成してフローレンスに襲いかかる。その速さと勢いに、フローレンスは足をすくわれ、派手に転倒してしまった。


観客席からは悲鳴とざわめきが上がる。


(このままじゃ押し切られる……でも、この水柱、逆に利用できるかもしれない!)


「そろそろ限界なんじゃない? 初等科の魔導士見習いさん。」


ロクサーヌは余裕の笑みを浮かべて挑発する。だが、フローレンスは目の奥に決意の炎を宿して立ち上がった。


「いいえ、まだこれからよ。“いでよ、凍てつく悪魔の狂風”!」


フローレンスが放ったのは、屋敷で見つけた魔導書の中でも特に強力とされていた禁呪の一つ。唱えた瞬間、空気が一変し、凍えるような冷風が吹き荒れた。


闘技場はたちまち薄暗くなり、辺りに氷の粒が舞い始める。

やがてその風は渦となり、水柱の一つを根元から凍らせた。


「“氷竜の演舞”!」


続けざまにフローレンスが叫ぶと、凍りついた水柱がまるで氷の龍と化し、勢いよくロクサーヌの方へ襲いかかる。


「防げ、“水の盾”!」


ロクサーヌもすぐさま防御魔法を展開しようとするが、彼女が作り出した水の壁は吹雪に触れた瞬間、見る間に凍てついていった。


「きゃっ!」


凍りの一撃が直撃し、ロクサーヌはその場に倒れ伏した。


「勝者、闇属性寮――ヴィオレッタ!」


勝敗が告げられると同時に、観客席からは大きな歓声と拍手が巻き起こった。


試合を終え、フローレンスは息を切らしながら闘技場を後にする。胸の奥で、張りつめていた糸がふっとほどけるように、安堵の息を吐いた。


「ヴィオレッタ様! やりましたね!」


控えていた闇属性寮の生徒たちが歓声をあげて駆け寄ってくる。


「ヴィオレッタ様なら、きっとやってくれると思っていました!」


「さすがは私たちのエースですわ!」


「ま、まあ、私にかかればこの程度当然よ。」


フローレンスは、いつものヴィオレッタになりきって高飛車に返すが、その声は少し震えていた。


(……よかった。本当に、負けなくてよかった……)


内心では冷や汗が止まらず、胸を撫で下ろすばかりだった。だが、周囲の称賛の言葉が、ほんの少しだけ、フローレンスの背を押してくれるような気がした。


* * *


──そのころ。


観客席にて、光属性寮の生徒たちと共に試合を見守っていたラファエル大魔道士は、眉をひそめていた。


(……なぜヴィオレッタが、あんな古い呪文を? 一体どこで習得したというのだ)


それは学園で教えることのない、極めて古く危険な闇魔法だった。

使用するには強い魔力と精神力が求められる。


(彼女にそんな資質があるとは……)


ラファエルは驚嘆しつつも、その力の源に不安を覚えていた。


(……目を離さない方が良さそうだな)



* * * 


──そしてもう一人。


試合の様子をじっと見ていたヴィオレッタ本人は、唇を噛みしめていた。


(あの子……予想以上に手強い。初戦で敗退するはずだったのに)


(姿を入れ替えた際、魔力の源である魔法石を奪ったはずだったのに。

自分と入れ替わったフローレンスが、なぜ未だに力を保っているのか、彼女にはまだ理解できなかった。



計画は崩れつつあった。

(このまま、あの子が決勝戦まで勝ち進んでしまうことだけは阻止しなければ。)


不愉快を滲ませたヴィオレッタは、席を立ち、フローレンスの次なる対戦相手である火属性寮の代表選手のもとへ、秘密裏に向かっていった。

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