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魔法学校で魔女と姿を入れ替えられて無実の罪で追放された私ですが、突然現れたドラゴンを下僕に従えて無双できました  作者: 秋名はる
第二章

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戦闘実技

午前中のもう一つの授業は、危惧していた「戦術実技」の科目だった。

生徒たちは、いつもの教室ではなく、学園の敷地内に設けられた広い屋外運動施設へと集められていた。


「ごきげんよう、生徒諸君」


短髪の似合う若々しい女性教師が、はつらつとした声を響かせた。


「今日は初年生たちが立派な狩人(ハンター)になるための授業を行います。戦術実技といっても、皆さんはまだ一年生。いきなり危険なドラゴンの巣窟に放り込んだりはしませんよ」


そう茶化すように言って、生徒たちの緊張を和らげる。


「まずは基礎訓練です。魔物と戦うための戦術と、それを繰り出す体力作り。これから皆さんには二人一組になって、簡単なゲームをしてもらいます」


そう言って、教師は傍らに積み上げられていた棒の山を指し示した。


「この杖を一本ずつ持ちなさい。これを使って簡単な決闘をしてもらいます。杖を駆使して相手の足をくじき、相手が膝をつけば勝ち。

もちろん魔法の使用は禁止です。正々堂々と戦うこと」


教師の説明に、血の気の多い男子生徒たちは唸り声を上げ、やる気をみなぎらせていた。

そんな中、一人だけ浮かない顔をして青ざめているのは、他でもないフローレンスだった。


(さすが闇魔法の見習いたちね。みんな勇猛果敢すぎるわ……)


士気の高い生徒たちにまったくついていけず、フローレンスはひとり身震いした。


「大丈夫? 気分がすぐれないなら休んでいた方が……」


コートの端で様子を見ていたニグレスが駆け寄ってくる。


「いいえ、大丈夫よ」

フローレンスは無理に微笑み、そう返した。


「それよりも、これ以上授業で失態を犯したら、単位を落としてしまうわ。そうなれば、学園に残ることさえできなくなる……」


「無理はしないで。でも、そんな難しい実技にも見えないけど。ゲームみたいなものだろう?」


ニグレスは首をかしげるが、フローレンスは覚悟を決めたように顔を上げた。


「ニグレス、言ってなかったかもしれないけど……実は私、運動音痴なの」


フローレンスは衝撃の事実を白状した。

そう、フローレンスは生まれつき運動の類が全くダメだった。かけっこはビリだし、球技やその他のスポーツもセンスのかけらもない挙動をしてします。一緒に遊ぶ仲間達には幾度となく戦力外通告を受けている生粋の音痴なのだ。


「走るのもまともにできないのに、杖を駆使するなんて無謀よ。」

フローレンスが泣きそうになりながらいうと、ニグレスは笑った。


「それは初耳だったな。でも今のその体はヴィオレッタのものだろう?今までとはまた様子が違うんじゃない?」


「どうかしら。」

ニグレスはそういうが、果たして体を別のものに入れ替えただけで運動神経は変わるものなのだろうか?


そうこうしている間に、先生からの掛け声が上がり、生徒達は一斉に自分の対戦相手を見つけて二人組みを作っていった。

一人動けずに右往左往していたのはフローレンスであった。なるべく穏便に済ませようと大人しそうな生徒を探して目を泳がせていたところ、突然後ろから野太い声が上がった。


「ヴィオレッタ、この前の試合のリベンジだ。俺と組まないか?」


フローレンスが恐る恐る振り向くと、そこには精悍な体つきの背の高い若者が立っていた。

ヴィクトルと名乗るその生徒は、爽やかそうな金髪の短髪に、青い瞳をしていた。ガッチリした体の見た目の通りスポーツ万能で、クラスからの評判の高い。



「え、私?」


「ああ、前回は舐めてかかってこてんぱんにやられた。でも、今回はそうはいかない」


フローレンスは絶望し眼の前が真っ暗になったが、ここで逃げるわけにはいかなかった。


「ええ、望むところよ」


ふと視線を横に向ければ、二グレスが不安そうにこちらを眺めている。

フローレンスはそんな二グレスに向かって、安心させるように頷いた。


ヴィクトルとフローレンスは、校庭の真ん中に陣取って、対峙する。


(どうか、お手柔らかに……)

杖を両手で握りしめ、祈るような気持ちで試合に臨む。


「行くぞ、ヴィオレッタ。覚悟!」


ホイッスルが鳴ると同時に、ヴィクトルが猛然と突進してきた。

フローレンスは咄嗟に杖を構え、なんとか一撃を受け止める。


攻撃が当たらず安堵したのもつかの間、今度はヴィクトルが隙を狙って次なる一撃を繰り出してくる。

だが、次々に繰り出される攻撃に、フローレンスは反射的に防御を重ねる。思ったよりも体が動くことにきがついた。


(あれ……私、こんなに動けたかしら?)


フローレンスは無意識のうちにヴィクトルの動きを見切り、華麗にかわしながら背後に回り込む。


「やるなフローレンズ、俺の攻撃を交わすとは。」

そう言ってヴィクトルは、むむっと唸った。


「だが、そうして逃げているだければ俺は倒せないぞ。」


いうやいなや、ヴィクトルは本気を出したように先程よりも早いペースで乱れ打ちの攻撃を打ち出した。

フローレンスもまた寸前のところで華麗にかわして、更に相手の背後に回ってターンした。


気がつけば、フローレンスは自分でも信じられないくらいの俊敏さを発揮して、ヴィクトルを圧倒していた。迫りくる攻撃はどれもフローレンスを捉える事は叶わない。

彼女は、軽やかに走り、ときに軽快なステップを踏むように跳躍した。そうしているうちにだんだんと相手の攻撃のリズムが掴め、その隙が見えてくる。


(いけるかもしれない_。)

フローレンスはタイミングを見計らい、ヴィクトルの脇腹めがけて杖を振りかざした。


「ピピーッ!」


終了のホイッスルが鳴る。フローレンスは、ヴィクトルを倒すことこそできなかった。しかし相手の攻撃を一度設けず、代わりにヴィクトルに一撃を加えた。試合はまたしてもフローレンスの勝利となった。


「またやられたか、さすがはヴィオレッタ」


ヴィクトルは悔しそうに唸った。

さらに、試合の様子を見守っていた周囲からも称賛の声が上がった。


「流石はヴィオレッタ様。本日も鮮やかな身のこなしですわ。」


「魔力もさることながら、ヴィオレッタ様は体力と戦術にも長けておられる。」


フローレンスは、初めて実技の授業で手応えを感じ、ほんの少しだけ誇らしげに胸を張った。

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