魔法学校への帰還
ある日、屋敷に来訪者が現れた。
窓から門の方を覗いたフローレンスは、そこに魔法学校の制服を着た二人組が立っているのを見つけた。
「まさか、もう居場所が知られてしまったのかしら。」
フローレンスは顔を真っ青にした。
「どうだろう、なんだか様子が変だ。」
ニグレスが窓の外に目をやり、二人組の様子をじっと見つめる。
二人組は屋敷の玄関口に立ち、こう叫んだ。
「ヴィオレッタ様。お迎えにあがりました。
どうか我々と共に学園へお戻りください。」
「ヴィオレッタ様が偉大なるドラゴンを使役しているとは知らなかったのです。どうか話だけでも聞いてください。」
生徒たちの声を聞いたフローレンスとニグレスは顔を見合わせた。
「君を捕まえにきたのではないみたいだね。どうする?」
ニグレスが尋ねる。
「警戒するに越したことはないけれど、彼らの言っていることが本当なら、私の罪が晴れたということかしら?話だけでも聞いてみましょう。」
フローレンスは悩んだ末、二人を屋敷に招き入れることにした。
屋敷の中で、二人の生徒たちがフローレンスを見つめながら言った。
「おお、ヴィオレッタ様、
ご無沙汰しておりました。相変わらず見目麗しいお姿。」
「お変わりないようで安心いたしました。」
フローレンスは戸惑いながらも微笑んだ。
「そ、そう。どうもありがとう。」
彼女はその言葉に答えながら、二人の顔を見た。
どうやら彼らはヴィオレッタの仲間であり、彼女の姿をしたフローレンスに話しかけているようだった。しかし、フローレンスにとってこの二人は初対面であった。
「それで、わざわざここへきた要件を聞かせてもらおうか?」
ニグレスは警戒した様子で生徒たちに問いかけた。
「単刀直入にいいます。どうか私たちと学園へお戻りください。」
「あなたは先の村々で魔物たちを退治したとのこと。
是非その力を貸して欲しいのです。」
「我々、闇属性の生徒たちは、ヴィオレッタ様を失うことに反対しておりました。にもかかわらず、悪名高い光属性寮生たちがあなたを学園から追い出したのです。」
「お陰で学園は今や光属性たちが牛耳っております。
今までは我々闇属性たちが幅を利かせていたのに、このままでは、我々はおしまいです。」
「どうか力をお貸しください。ご心配なさらずとも、すでに学園へ戻る手筈は整っています。」
「あなたが村々を救った功績を讃えて、学園長もあなたを復帰させることを了承しました。」
フローレンスはその言葉に、驚きと疑念が入り混じった表情を浮かべた。
「そうだったのね。」
光属性の生徒たちが学園を牛耳っているとは、おそらく偽フローレンスとして学園に潜伏しているヴィオレッタのことを指しているのだろう。
未だ彼女の影響がある中で、こんなにも早く学園に戻れることになるとは思いもよらなかった。
「慎重に考えた方がいい。学園に戻れば君がまた危険な目に遭うかもしれない。」
浮足立つフローレンスをよそに、ニグレスはフローレンスを心配そうに見つめ、そう諭した。
「でも、私を陥れた本人は今も学園にいるのよ。これはチャンスかもしれないわ。」
フローレンスは決意を込めて言った。
そう、これは自分の姿を元に戻すまたとない機会だ。
ヴィオレッタに再び接近することができれば、彼女の陰謀を阻止することができるかもしれない。
不安そうに見つめる二グレスをよそに、フローレンスは学園への復帰を決心した。




