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魔法学校で魔女と姿を入れ替えられて無実の罪で追放された私ですが、突然現れたドラゴンを下僕に従えて無双できました  作者: 秋名はる
第一章

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炎の呪文

「僕に任せて」


そう言って、ニグレスはフローレンスを病院の外へと連れ出した。


「僕に命じてほしい。君が呪文を教えてくれれば、その力を借りて病魔を祓い、消し去ることができるかもしれない」


魔導士が魔獣と主従の契約を結ぶことには、明確な意味がある。


魔獣――たとえそれがドラゴンであっても、単独では多彩な魔法を扱うことはできない。強大な肉体と本能的な力こそあれど、魔導士のように複雑な術式を駆使することはできないのだ。


だが、契約を交わせば話は別だ。


魔導士の意志と魔力を通じて、魔獣は本来持ちえなかった魔法の力を発揮することができるようになる。


ニグレスは村の中央にある広場へと足を運び、そこで再びその姿を黒き竜へと変えた。強烈な突風が巻き起こり、瞬く間に広場には巨大なドラゴンが現れる。


その異様な光景に、病院にいた人々もざわめき始めた。


「我が僕である黒竜ニグレスへ命じる」


フローレンスは右手を高く掲げる。その手には、魔力を増幅する魔宝石が煌めいていた。


「――”治癒の炎(サニターテム)”よ、疫病を焼き尽くせ!」


高らかな声が空に響く。


ニグレスはそれに応えるように咆哮を上げ、翼を広げて天へと舞い上がる。そして空中で旋回すると、村全体を見下ろす位置に陣取り、その口から紫色の炎を吹き放った。


それは普通の炎とは違った。


猛々しい炎でありながら、人も建物も焼くことはなかった。ただ煙のように空間を満たし、やがてすっと消えていく。


「……この炎は、災厄を滅する治癒の炎。物理的な損傷を与えるものではなく、災厄そのものを浄化する特別な力なんだ」


事前にフローレンスが呪文について問いかけたとき、ニグレスはそう答えた。


つまり、彼はその紫の炎によって、村に蔓延していた疫病の菌を滅菌していたのだ。


「わ、わあああ! いったい何をするんだ!? 助けてくれぇ!」


当然、村人たちは突然現れたドラゴンとその咆哮に驚き、阿鼻叫喚となって逃げ惑う。だが、炎に包まれた彼らの身体は焼かれることなく、代わりに――


「……あれ? さっきまで、こんなに胸が苦しかったのに」


「私もです。高熱で立ち上がるのも辛かったのに、今は……すごく体が軽いわ」


村人たちは、自らの異変に気付き始める。炎に包まれた後、体の中から重苦しさが消え、不調が和らいでいたのだ。


次々と村人が病院から出てくる。誰もが顔色を取り戻し、足取りも軽やかになっていた。


「魔導士様……まさか、あのドラゴンを使役して、この病魔を……!」


「そ、そうなの。調子はどうかしら? ニグレスの呪文が効いてくれてるといいんだけれど」


フローレンス自身も、まだ半信半疑だった。


だが――


「はい、本当に体が楽になりました。あの炎に包まれたときから、嘘みたいに元気になったんです。本当に……ありがとうございます」


「なんとお礼を言ったらよいか……!」


気づけば、フローレンスの周囲は、感謝を告げる村人たちの人だかりとなっていた。


彼らの目には、彼女の姿が神聖なもののように映っていた。


村の疫病が完治し、村人たちは歓喜に沸き立っていた。


今にも息絶えそうだった人々が次々と立ち上がり、やがて広場では自然発生的に祝宴が始まった。もちろん、フローレンスはその中心人物として熱烈な歓迎を受けることとなる。


「我々をお救いくださった聖女様!」 「偉大な魔力をお持ちの、竜使いの賢者様!」


――などと、村人たちは口々に賛辞を送ってきた。


王都では罪人として手配されているフローレンスだが、ここではまるで救世主。住民たちは彼女の素性など知らず、ただ純粋な感謝を捧げてくるのだった。


「ニグレス……村人たちが私たちを歓迎してくれるのは嬉しいけれど、こんなに目立つことをしてしまって……王都にこのことが知れたら、彼らは私たちを追ってくるかもしれないわ。」


不安げにフローレンスが漏らすと、隣のニグレスは軽く笑った。


「心配いらないよ。僕がついている。ドラゴンである僕の翼に敵う者なんていないのだから。来たって、何もできやしないさ。」


その言葉と微笑みは、どこまでも頼もしかった。

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