後編
〇 火災・飢饉・流星・彗星・反乱
舒明朝では災害が頻発していました。
舒明天皇は百済大寺を建立しました。
□ 舒明8年(636年) 岡本宮が火災
□ 舒明8年(636年) 大飢饉が起きる
□ 舒明9年(637年) 流星が現れた
□ 舒明9年(637年) 彗星が現れた
□ 舒明9年(637年) 蝦夷反乱
□ 舒明11年(639年) 百済大寺の建立
――舒明天皇が住んでいた岡本宮が火事で焼失しました。宮を遷しています。
舒明「はぁ………何か凶兆であろうか」
宝女王「旦那様は心配性じゃの。しっかりするのじゃ」
――早魃のため大飢饉が起こりました。
宝女王「お天道様は気まぐれじゃ」
舒明「これは大王たる私の徳がないから………?」
――空に流星が現れました。僧旻は「天狗の吠え声」と主張しました。
宝女王「天狗じゃ、天狗の仕業じゃ」
舒明「ふ、不吉じゃ………」
――空に彗星が現れました。僧旻は「飢饉の前ぶれ」と予言しました。
舒明「うわぁぁぁ、この世の終わりだぁぁぁ………」
宝女王「落ち着くのじゃ、旦那様」
――蝦夷が叛きました。
宝女王「生意気じゃ、ぶち殺すのじゃ」
――舒明天皇は?
宝女王「布団にくるまって震えておるのじゃ。討伐命令はわらわが代わりに出すのじゃ」
――欽明天皇と蘇我蝦夷は蝦夷に討伐軍を出しました。
舒明「決めたぞ、私は決めた」
宝女王「何をですのじゃ?」
舒明「天災も飢饉も反乱も私の徳の無さのせいだ。仏にすがるために寺を建立する!」
――舒明天皇は百済大寺を建立しました。最初の天皇家発願の仏教寺院となります。飛鳥文化の代表的な建築物ですね。
〇 舒明天皇崩御
舒明天皇が崩御しました。
古人大兄皇子、中大兄皇子、大海人皇子の三人の皇子がいましたが、次の大王としての最有力候補は自らと皇位を争った山背大兄王でした。
□ 舒明13年(641年) 舒明天皇が崩御
――舒明天皇が崩御しました。享年四十九歳です。
舒明「私の出番これだけ?」
――どうもありがとうございました。
舒明「はあ、では帰る。皇后も帰るぞ」
――宝女王にはもう少しお話を聞かせていただきますので、お先にお帰り下さい。
舒明「今回のメインゲストは私では………大王なのに影が薄い………天狗の仕業じゃ………」
――舒明天皇もお帰りになったところで、崩御後の話をお伺いします。
宝女王「部屋の隅でのの字を書いておるが、それはおいといて話を聞かせてもらうのじゃ」
――次の大王について群臣たちの話し合いが行われましたが、古人大兄皇子と山背大兄王で意見が割れました。舒明天皇の皇子である古人大兄皇子が血筋的には良いのですが、年齢的には山背大兄王が相応しいので収集がつきません。
宝女王「聖徳太子の名声は未だに健在じゃからの。山背大兄は舒明朝と距離を置いておったので今の政権中枢の豪族からは受けが悪いのじゃが、逆に言えば舒明朝で冷や飯を食っていた連中が担ごうとしておるのじゃ」
――宝女王は古人大兄皇子を推しているのですよね。
宝女王「そうじゃな、中大兄は十代半ばでさすがに若すぎる。旦那様の血を引く古人大兄は次善じゃが、山背大兄王よりはマシじゃ。
――古人大兄皇子は蘇我馬子の娘を娶り皇子をもうけています。蘇我蝦夷は古人大兄皇子を推しているようです。
蘇我蝦夷(以下「蝦夷」)「ご相談があります」
宝女王「突然じゃな。旦那を亡くしたばかりの未亡人に何の用じゃ」
蝦夷「次の大王についてです」
宝女王「わらわには決定権はありはせぬ。大王とは群臣らの推薦によって決まるのじゃ」
蝦夷「我らの推薦により皇后様が次の大王になっていただきたく」
宝女王「………おぬし、父の馬子と同じことをするつもりかえ」
蝦夷「繋ぎの大王となり山背大兄王の即位さえ防ぐことが出来れば、その次は古人大兄皇子か中大兄皇子となりましょう」
宝女王「中大兄の名をそこで挙げるか………おぬしも悪なのじゃ。面白い、その策に乗ったのじゃ」
――蘇我蝦夷は宝女王を担ぎ上げると大王に推薦しました。宝女王は即位して皇極天皇となります。