Episode 1 夜明けの水平線
見渡す限りの海、目に見える範囲に他に大きな島はない。しかし、絶海の孤島と表現するには広大すぎる。よくある空からの眺めでは、ただのなんの変哲もない巨大な島にみえる。その島は、不自然なほどにきれいな円を描いている。
自然に囲まれた沿岸部、その中で一ヶ所、整備された港になっている。
停泊している幾つかの漁船に比べて、数十倍はあろうかという巨大な船の周りでは、あわただしく人が動き回っている。
港から島の中心に向けて、自然を割くようにして、町が広がっている。一画には牧場、畑。生活に近いものが、港を中心に整備されている。
島の中心には、町の様子からは想像もつかないほどの巨大な塔がそびえている。塔の下には、森が広がり石造りの門が守る大きな建物が建っている。塔との様式の違いがこの島の異様さを物語っているようだ。
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卒業試験を前に下校時刻になっても、教室、校庭共に人で溢れている。
ハルトは、図書館の窓から裏の森の中に佇む塔を眺めていた。あの塔についての詳細は、第二王子であるハルトすらもほとんど聞かされていない。
歴史学を専攻したハルトは、興味や畏怖、疑問など入り交じる眼差しでよく、塔を眺めていた。
「やっぱりここにいた。」
エドワードとラカムが、木剣を片手に入ってくる。
「ハルト様なんでたそがれてるんすか」
「そりゃ、待望の保護区入りだからじゃないか?」
商人一家のキャンベル家からの叩き上げラカムと、対照的に上品なエドワード。
2人のやり取りを、ハルトが「クスッ」と見守る。
平和な空気もつかの間
「いた!!ラカム!
アンタ何してるのよ!
説明してもらいますからね!」
アイリーンの大きな声が図書館こだました。