表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

第2話



 「彼女」が死ぬとわかった時、その結末を見届けることが怖くて足がすくむ。


 目を閉じた瞼の下で、暗闇が訪れる。


 次いで聞こえてきた、誰かの悲鳴声。



 耳を塞ぐ。


 フェンスから遠ざかる。


 心の中で、何度も叫んでいた。



 ダメだダメだダメだダメだ


 ……絶対に、ダメ…!



 迫り来る未来。


 最悪のビジョン。


 変えられたはずの未来の結果を、変えられなかったという思い。


 救うことができたはずの命を、助けられなかったという絶望。


 その「全て」を、否定したいと思った。


 …全部、やり直したいと思った。



 速度を増す重力加速度。



 後藤さんの体にのしかかる約400Nの力が、未来を変えたいと願う私の思考回路と、凄まじい速度で交差する「現在」。


 お互いが、まだ生きていられる時間。


 そして、——距離。



 後藤さんが落下するまでの時間は、何秒もないだろう。


 運命という名の歯車に乗り、世界がひとつの結果と、コンマ1の速度に向かって落下していく。


 この「瞬間」、——私が、目を閉じた瞬間、後藤さんはまだ「空中」にいた。


 恐るべき速度の現在の中に。


 未来へと遠ざかる「1.74秒」。


 彼女の心臓はまだ、動いている。


 空気抵抗を受けながら、


 落下速度16.117661599342m/s


 という最中に、浮遊していた。


 「過去」と「未来」の、その両方に触れられる、中間に。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ