表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

第1話


挿絵(By みてみん)





 屋上にいたはずの時間。それから、距離。


 ひと繋ぎの時空の真ん中に立ちながら、私は手を伸ばしていた。


 まだ、助けられる距離にいた。


 そう思う心と、合致しない現実。



 後藤さんは、すでに自由落下の渦中にいた。


 ボタンを押し、スタートを切ったストップウォッチ。


 その先端のコンマ1の麓に立って、体を地面へと傾けている。



 もう、間に合わない…!



 そう直感したのは、フェンスの向こう側へとダイブする彼女の姿が、突き進む時の針の向こう側へと消えていこうとしていたからだ。


 必死に追いかけたが、すでに届かない場所にいた。


 前方に倒れていく彼女の体の後ろで叫んだのは、もう、彼女のいる「距離」に届くものが、「声」しかないと思ったからだ。



 音の速度。


 1秒に340m進む速さと一緒に、足を前に出す。


 できるだけ前に前に。


 彼女に「近い」ところに。



 でももう、わかっていた。


 「時間」が巻き戻せない位置にあることを。


 現在と未来の中間で、絶対に届かない距離があることを、コンクリートの床の上で感じていた。



 タッタッタッタッタ!!



 フェンスまでたどりつき、走った勢いのままガシャン!!!と、フェンスの金網にぶつかる。



 網を掴んだ両手。


 屋上から落ちた彼女の行方を追う視線の先で、空中に飛び出したその姿を追いかけた。



 生から死へ。



 「現在」から「未来」へと移り変わるいちばん早い時の流れを、止めることもできないまま。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ