理想の人かもしれない
「涼風さん、涼風さん!」
涼風さんにこっそりと呼びかける。
「何だい? 黒白委員長」
「友だちってこの子からの相談なの? そもそも本当に委員長なの⁉」
僕らの目の前で、小動物のように震える兼平さん。
……こんな純粋そうな子がどうやって「に組」委員長になれたんだ⁉
一見して真面目で清純そうな子だ。
彼女のようなタイプは、うちのクラスなら委員長どころか生きていけないかもしれない。
「その辺りも込みで、本人に聞いてみたらどうだろう?」
芝居がかった仕草で前髪をかき上げる涼風さん。
彼女の動きに合わせて、舞う水と風の精霊の輝きが憎い演出になっている。
「ちなみにしきちゃんと呼んであげたらいいかな」
「そんなに気安く呼べないよ⁉」
涼風さんは優雅な仕草で、怪しく笑う。
「ふふふ……黒白委員長も可愛らしいね」
気さくなやり取りがお気に召したのか、涼風さんが僕を見つめる。
僕よりもやや高い位置にある涼風さんの顔。
ずっと見ていられる程の、整った顔立ちだ。
物語の王子様にしか見えない。
「きょうえい、遊んでる場合じゃない」
しんかの一言で、我に返る。
僕の目を覗き込む涼風さんと、動けなかった僕を無表情で見つめるしんか。
無表情美少女。
王子様系長身美女。
小動物系美少女。
3人の同級生に囲まれて、心に少しの優越感が生まれる。
……死の気配⁉
不意に生まれた悪意に対して、身体が反射的に動く。
僕の右足は大地を蹴り、その場から離脱を果たす。
……訓練していてよかった!
僕が立っていた場所。
空中から見下ろせるその場所には、突き刺さる不可視の槍とせり上がる土の拳。
……一体誰だ⁉ こんなことをするのは!
警戒して周囲を見渡す。
休憩所には何人もの学院生たち。
……犯人はこの中にいる。
十中八九「は組」の男子連中が犯人だろうけど。
「きょうえい、遊んでる場合じゃない」
先程と同じセリフを、しんかは繰り返す。
「しんか、今のは遊びじゃないよ! 僕の命がかかってるんだよ⁉」
……今の二撃は下手したら死んでたよ⁉
女の子と話しているだけで、攻撃を仕掛けてくるような常識知らずたち。
やって良い事と悪いことの区別がつかないのだろうか。
担任の土浦先生には、是非とも彼らに倫理観というものを叩きこんでもらいたい。
索敵のため周囲へ風の精霊を放つと、割と近くに馴染みのある気配を2つ程発見する。
……この二人が犯人か?
風の精霊によって、会話を聞き取ると、
「ゆうき、汗かいてるよ」
「自分で拭くからくっつくなよ!」
仲睦まじいやり取りが聞こえてくる。
野球部の風山君とマネージャーの豊水さんの二人だ。
このやり取りを聞くに、彼らは僕を襲った犯人ではないだろう。
それにしても仲がよさそうで何よりだ。
「きょうえい」
「うん? どうしたの? しんか」
「その火の精霊たちは何?」
僕の手元に集まる火の精霊たちは密度を増して、赤く輝いている。
……これかい? 裏切り者を処刑するために使うのさ。
ほんの少しだけクラスメイトが女子と楽しそうに話していたら、躊躇わず攻撃を仕掛ける奴らの気持ちが理解できた。
「に組」委員長――兼平しき。
気弱という情報はあったけど、実際はそれに輪をかけてオドオドしている。
隙あらば涼風さんの後ろに隠れようとする姿は、さながら小動物だ。
……でも。
その仕草がまた可愛らしい。
しんかやつむじ、らんちゃんを例に同級生たちには整った顔立ちの子も多い。
目の前の涼風さんも例に漏れずその部類に入る。
ただ、彼女たちには強い存在感を感じると同時に、それに比した圧がある様に思える。
話しかけにくい隔絶した雰囲気のようなもの――圧のようなもの――がある気がするのだ。
しかし兼平さんにはそれが非常に少ない。
ないといっても良いかもしれない。
咲き誇る大輪の美しさというよりは、野に咲く可愛らしい花というか。
……ひょっとすると可愛らしさだけなら、彼女は同級生の中で1番かもしれない。
「ど、どうかしましたか?」
僕にじっと見つめられて、慌てる兼平さん。
この辺りも常識人らしい反応で、好感度がうなぎ上りだ。
……可能ならこんな子と結婚したい。この子のために毎日味噌汁を作りたい。
僕がそう思っても仕方ないだろう。
それ程、兼平さんの可憐な在り様は魅力的だ。
一癖も二癖もあるクラスメイト達に囲まれた僕にとって、彼女のような存在は喉から手が出るほど希少なのだ。
――可愛らしい委員長。「に組」委員長、兼平しき君をどうぞよろしくお願いします!
本作『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』をお読みいただき、誠にありがとうございます!
今後も第三章「緑の侵攻」編を頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。
※現在、並行して1話目から編集し、書き直したりもしています。
気になる方はそちらもお読みいただけると嬉しく思います!
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