初等男子学生理論
「何それ?」と、紅蓮の少女は再び首を傾げる。
「初等男子たちは、女子に意地悪する子が多いのを知っているかい?」
「うん」
「初等男子学生理論」
それっぽく言ってみたが、要するにあれだ。
初等学生あるあるだ。
……良かった。あまり人と関わりが無かったしんかでも知ってたか。
それならと、話を続ける。
「じゃあ、なんで意地悪をするんだと思う?」
僕の問いに、しんかは少し考えて、
「嫌いだから?」
僕の想定通りの答えを返してくれる。
「そこが間違ってるのさ!
初等男子で、意地悪をする子の9割以上は、大体その子のことが好きなんだよ!」
僕の答えに、赤の少女は釈然としないような表情を浮かべている。
「好きなら親切にした方が良いんじゃ?」
「そう! そうなんだよ! でも、それを恥ずかしいと思っちゃうのが初等男子学生なのさ!」
「でも――」
と少女は一呼吸おいて、
「それは親切をしない理由にはなっても、意地悪する理由にはならない」
……手強いね、しんか。
ちゃんと話の要点を掴み、適切にツッコミを入れてくる。
僕に助けを求めたメガネ先輩よりも、役者が一枚上というわけだ。
……まあ、でも。
そうくるのは織り込み済みだ。
「じゃあ、しんかはそんな風に意地悪されたことはあるかい?」
「ある」
少し話の方向を変えると、即答が返って来る。
その時の状況を思い出したのか、可愛らしい顔の眉根が寄せられている。
「その子たちの事は覚えているかい?」
「覚えてる。隅から隅まで」
……淡々と言われると怖いなあ。
普段無表情の彼女には珍しく、沸々とした怒りが感じられる。
「思い出させて悪いけど、ちなみにどんなことをされたの?」
しんかは怒りに燃えながら、
「ブスとかチビとか言われた。絶対に忘れない」
答える。
……マズいなあ。
そう思う理由は単純。
熱くて――暑いからだ。
しんかの感情に呼応して、火の精霊たちが彼女から漏れ出ている。
このままいけば、狭い生徒会室は火の海と化すだろう。
この話をする原因となったメガネ先輩の表情は、その精霊保有量にひきつっている。
ようやく彼は、誰にケンカを売ってしまったのか理解したようだ。
ちなみに、その隣に座る松風生徒会長の反応に変化はない。
ニコニコと、こちらのやり取りを見ている。
……見かけによらず、肝が据わっているようだ。
まあ、そうでないと生徒会長なんてできないのかもしれない。
さて――
思い出し怒りに燃えるしんかに告げる。
「そう、それが狙いだよ」
「うん?」
少女は怒りよりも疑問が勝った様で、火の精霊たちの動きが止まる。
「どういうこと?」
意味を理解していない少女の言葉が重なる。
だが、言葉の通りだ。
しんかのこの状態こそが、ある意味初等男子の狙い通りでもあるのだ。
「しんかは何年も経ってるのに、そのことを覚えてるじゃない?
それって言い換えれば、しんかの視界には入ってることになるよね?」
「まあ、それは……そうだけど」
引っかかりのある物言いだが、彼女の言葉はあえて無視する。
「つまり、しんかに憶えてもらう……アピールすることができたわけだ」
「……」
赤の少女は黙り込む。
「つまり彼らの狙いは、しんかを刺激して反応してもらうこと。
しんかにアピールして、気にしてもらうこと自体が、彼らの狙いなのさ!」
僕の至った結論に、
「……それに何の意味が?」
赤の少女の疑問が、鋭く刺さる。
「一説には、それで好きになってもらえると思ってるみたいだよ?」
あくまで、男子側の意見だ。
されている女子からすると、嫌であることを、彼らは残念ながら理解していないのだ。
憐れなことに。
「なるほど……」
しんかは、少し考えると、
「きょうえいもやったの?」
僕に矛先を向けてきた。
……何だ、この状況は⁉
火の精霊たちは活動を止めているのに、汗が流れ落ちる。
……どうして僕が追い込まれているんだ?
どう答えるのが正解なのか。
無駄に思考をフル回転させる。
……有無だけで考えれば無い。
そんなことをする理由もなかったし。
しんかレベルの可愛い子と関わりたいのなら、つむじたちと鍛錬してれば良いだけだったからだ。
つむじにらんちゃん。
外見だけなら、しんかに負けず劣らずの二人である。
……そういえば、二人もよくからかわれてたなあ。
彼女らにちょっかいを出していた連中は、きっちり締められていたが。
今、彼らはどうなっているのだろうか。
さて、そんな現実逃避を終えて、
「な、無いよ?」
正直に答える。
後は鬼が出るか蛇が出るかだが――
「……そう。納得はいかないけど、理解した」
火の精霊たちが、霧散していく。
……どうやら僕は賭けに勝てたみたいだ。
生きていることの幸せを、心から噛みしめる。
「となるとメガネ先輩は――」
しんかはちらりと紅蓮の瞳を、メガネ先輩に向けると、
「生徒会長が好きだけど敢えて好きじゃない風に見せて、アピールしてるっていうことで合っている?」
恐ろしい一撃を言い放つ。
「さすがは僕のご主人様だね!」
素晴らしい理解力だ。
……どうですか、メガネ先輩。
僕のフォローに感謝して、敬ってくれてもいいんですよ?
そんなことを考えながら、メガネ先輩に視線を向けると、そこにあったのは鬼の形相。
顔が真っ赤であることから、きっと赤鬼だ。
「早く席につけ! 貴様ら!」
こうして僕らは、生徒会室に来て早々に、二度目の文句を頂戴することになったのだった。
――初等男子学生理論。
共感性羞恥を書きながら味わっている今日この頃です。
本作『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』をお読みいただき、誠にありがとうございます!
今後も第三章「緑の侵攻」編を頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。
新しく『どうして異世界に来ることになったのか。』という作品の投稿も始めました。
少しでも気になるという方は、そちらもお読みいただけると嬉しいです。
※現在、並行して1話目から編集し、書き直したりもしています。
気になる方はそちらもお読みいただけると嬉しく思います!
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