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憐れなメガネ先輩

 いつも通りの一日を過ごし、放課後の時間帯。

 

「生徒会室は二回目」


「まあ、一回目はここじゃなくて、隣の教室だったけどね」


 僕としんかは、生徒会室の扉の前に立っていた。

 一度目はクラス代表委員会。

 各クラスの委員長が集う中で、隣の赤の少女に召使いだと紹介されたあの時に訪れている。


 とは言っても、生徒会室の中に入ったわけではなく、目前の扉に張られた案内の張り紙を見て、移動したのだが。


 つまり今回は、内部初潜入。

 

 ……松風生徒会長。


 あの優しくも愛らしい、理想のお姉さんに会えると考えると、ほんの少しだけ緊張する。


「きょうえい、下心は良くない」


「そそそんなことないよ⁉」


 少女は紅蓮に輝く瞳で、僕を真っ直ぐに見据える。

 透き通った赤色。

 全てを見透かしていそうな赤色である。


 ……やめて! そんな純粋な目で僕を見ないで⁉


「最近、『比翼連理』を使ってなくても、なんとなく分(・・・・・・)かってきた(・・・・・)


 そう言って、赤の少女は拳を作る。


 ……何が分かってきたのだろうか。

 

 まさか、僕の心の内とかじゃないだろうね?

 その拳は、気合を入れているだけで、僕を殴るためのものじゃないよね?


「?」


 慌てた僕に、少女は首を傾げると、拳を扉の前へと持っていく。


 ……良かった。僕の危惧は、杞憂で済んだようだ。


 しんかは、握った拳で、


 コンコンコン


 三度ノック音を響かせる。


「はあい、どうぞー」


 中から穏やかな声色が聞こえてきた。


 ガチャリ


「「失礼します」」


 扉を開けると、中には二台の長机に、奥の座席に着く男女。


 一人は生徒会長で、期待の理想のお姉さんこと松風ゆうか先輩だ。


 緑色のセミロングの髪と、同色の瞳。

 一年生よりも着慣れたような制服の胸元には、髪と眼と同色の紐リボンが揺れている。


 そんな松風先輩は、僕たち二人の入室に、ニコニコと可愛らしい笑顔を浮かべている。


 ……確かに似ている。


 言われてみれば、土浦先生の奥さんにそっくりだ。

 顔立ちも、精霊の流れも。


 僕の理想のお姉さんであることも、瓜二つである。


「どうぞ、その席に二人とも座ってね」


 着席を促す声もまた美しい。



 生徒会長の優雅な所作に見とれていた僕たちに、


「おい、なに会長を見ている!」


 隣に座る男が、険のある声を出す。


 メガネだ。

 フレームの鋭いメガネの男。

 神経質そうな顔。

 今にも自身の感情を爆発させそうな様子。

 怒鳴るような声も含めて、非常に感じの悪い男の人である。


 彼の発言に、


「会長を見たらダメなの?」


 しんかが何故か僕に尋ねる。


「いや、別にダメってことはないと思うよ?」


「じゃあ、どうしてあのメガネ先輩は、ダメって言ったの?」


 重ねて僕に質問するしんか。


 ……できれば発言したメガネ先輩本人に聞いて欲しい。


 僕だって、彼が何を言いたいのか分からないんだから。


 ……仕方ない、ここは僕が適切なフォローを入れて、しんかを納得させてあげよう。


 こちらを睨みつけているメガネ先輩に、パチンとウインクをかまして、しんかに告げる。


「しんか、多分、あのメガネ先輩は松風会長のことが好きなんだよ。

 だから、僕たちが会長を見るだけで、嫉妬してるのさ」


 僕の言葉に、


「ああ、なるほど」


 赤の少女は納得すると、


「メガネ先輩、貴方の好きな松風会長を見過ぎてしまって、すみませんでした」


 素直に謝罪する。


 そんな純粋な謝罪に対して、


「だだ誰が、会長の事を好きだって⁉ そんな邪な気持ちでここにいるわけではない!」


 醜い言い訳をするメガネ先輩。


 この焦り様に、真っ赤な顔。

 どうやら僕の雑な発言は、当たりを引いてしまったらしい。


「メガネ先輩、人を好きになるのは邪なの?」


 しんかの矛先が、遂にメガネ先輩の発言に向く。


 純粋で真っ直ぐな瞳。

 嘘を許さない純真無垢の瞳だ。


「そ、それはだね火光委員長。

 人を好きになるのは悪い事ではなくて――」


 そんな瞳に晒されて、悪意のあるメガネ先輩にも気まずい思いがあったらしい。

 しどろもどろに発言を重ねていくが――


「それならメガネ先輩だって、会長を好きでもいいはず。

 私たちは間違っていない」


「そ、それは……」


 しんかの追撃が止まらない。

 憐れなメガネ先輩。

 しんかに逆らおうだなんて考えるからだ。

 ざまあみろ。


 そんなしどろもどろのメガネ先輩が、僕に助けを求める。

 自業自得な面も大いにあると思うし、そのまま永遠にしんかに詰められていて欲しい気持ちはあるが――


 ……仕方ない。今回は助けてあげるか。


 このままじゃ、話が始まらないし。


「しんか。しんか」


 ちょいちょい


 僕の呼びかけに、赤い瞳が反応する。


「なに、きょうえい?」


「しんか、違うんだ。さっきの発言は、メガネ先輩の本音じゃないんだ」


 僕の説明に、しんかは首を傾げる。


「生徒会長への好意を邪だと言ったのが、嘘ってこと?

 でも、じゃあなんで素直に好きって言わない?」


 気になることだらけの少女に、僕は結論から話すことにする。


初等男子学生理論(・・・・・・・・)さ」


 ――初等男子学生理論とは。


 本作『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』をお読みいただき、誠にありがとうございます!


 今後も第三章「緑の侵攻」編を頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。


 新しく『どうして異世界に来ることになったのか。』という作品の投稿も始めました。

 少しでも気になるという方は、そちらもお読みいただけると嬉しいです。


 ※現在、並行して1話目から編集し、書き直したりもしています。

 気になる方はそちらもお読みいただけると嬉しく思います!


 感想もお待ちしております!


 評価とブックマークをしていただいた皆様、本当にありがとうございます。

 皆様に読んでいただけているということが、僕の書く意欲になります!

 

 もし『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、今後も本作を書いていく強力な励みとなりますので『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非よろしくお願い致します!


 ではまた次のお話もよろしくお願いします!

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