実戦試験⑩~反省を活かして~
「それで黒白。今回の敗因は何だ? 言ってみろ」
「そうですね――」
色々と敗因はあるとは思う。
まあ、それでも強いて言うなら――
「『は組』生が役立たずだったことですかね?
特にバカな男子たちが」
「「「お前が言うな!」」」
「なにさ⁉
先生への怒りに支配された結果が、これじゃないか!」
「お前だってそうだろうが!」
「モテないからって、先生のことを強面なんて言いやがって!」
「それは皆だって言ってたじゃないか!」
……僕が先生の事を、そんな風に罵るわけないのに。
このバカどもは、何を言っているんだろう。
責任転嫁なんて人として最悪だ。
ほんと、救いようのないクラスメイトたち だ。
彼らはもっと一生懸命働いている僕や先生に、畏敬の念を持った方が良い。
「とりあえず私のことを強面と呼んだ連中は、放課後居残りをさせるとして――」
「「「えええぇぇぇぇぇ」」」
先生は僕に向き直って、
「問題点は『は組』の戦力以前の話。情報収集だ」
情報収集。
もちろんその重要性は理解している。
むしろ今回に関しては――
「それくらい、僕らも理解してます。
だから先生の情報は、ちゃんと集めましたよ?」
先生の戦闘スタイルの情報を集め、全員と共有していた。
過去の実戦試験情報から、先生の学生時代の戦闘情報まで。
調べ尽くしたのだ。
全ては、先生を確実に仕留めるために。
立てた予想と対策だが、今回はそれが全て外されただけで。
「そうだ。
お前たちは情報を集めた――集め過ぎたからこそ私は裏をかけたんだ。
学年総代決定戦では、ほぼ初見の相手ばかりだっただろう?
敵がどんな手に出るか分からない中で、用意した策を用いながら手探りで勝ちを獲りにいく。
言ってしまえば、アドリブだな。
お前たち『は組』のそれは、強みだ。
だが、次の戦い――生徒会選挙からは、そう簡単にはいかない。
2,3年生相手なら事前情報も多いからな。
その事前情報を元に、作戦を練らなければならないし、敵もそれを読んでくる。
だからこそ、事前情報を精査し、立てた対策が通用しなかった時のことを、考えなければならないんだ」
「まあ」と先生は続ける。
「今回と学年総代決定戦での君たちの実力を見る限り、応用力はある。
後は事前準備と、その場でのアドリブ。
結局のところバランスだ。
双方を万全にすれば、お前たちなら先輩相手でも、勝つことは可能だろう」
そういうと、先生は踵を返して、
「今回の評価は学期末に出る。
一年生最初の実戦試験で、これだけやれるのなら上々だ。
結果を楽しみにしているといい」
去ろうとする。
「「「先生!」」」
……なんていい先生なんだ。
嫉妬心から命を狙った僕らに対して、アドバイスまでくれるなんて。
僕らは今回の事をきちんと反省して、今後の戦いに臨まなければならない。
そのためにも――
「どうした、お前たち」
「先生のお言葉、感銘を受けました!」
「俺たち、これからも頑張ります!」
「そうか……」
強面の目にも涙。
僕たちの言葉に、先生は感激の涙を浮かべる。
……これまでは、ただ怖がられていたからこそ。
見たことないくらい、嬉しそうな顔の土浦先生。
……よし。
「もっと俺らに、戦い方とか教えてくださいよ!」
「先生、マジ尊敬です!」
「ついでに美人の奥さんとの経緯も教えてください!」
「待て待て。そんなに一斉に質問されても、答えきれないだろう」
男子の質問攻めに、満更でもなさそうな土浦先生。
皆の細かい質問に、彼は丁寧に応えていく。
「まず戦い方はだな――」
顔の怖さ以外は、完璧な先生。
真面目な性格で、僕たちからの質問に逐次答えようというその姿勢。
その律義さが、自身の首を絞めているとも知らずに。
質問している生徒以外が、戦闘態勢へと入っていく。
実戦試験は確かに敗北したかもしれない。
けれど、僕たちの目的は実戦試験に勝つことなのだろうか?
否。
試験など、その時の調子に左右される結果でしかない。
試験結果など、その場その場での一時的なものでしかないのだ。
大切なことは、戦いの意味。
その時の戦いによって、何を得られるのか。
僕たちのこの質問の時間などもまた同様。
質問自体に意味はなく――これは敵を油断させる前振りでしかない。
「さすが先生! 分かりやすいですね! だから――」
視線が互いを鼓舞する。
ずばり、目の前の強敵を排除せよと。
「「「「だからこの場で死ねえぇぇぇぇぇ!」」」」
「お前らに反省の心はないのか⁉」
試験を終えたからと言って、この戦いを終わりにする気などない。
だって先生は未だに美人の奥さんがいて――幸せ者なのだから。
――実戦試験終了。
この後は先生と男子の血で血を洗う争いがありますが、それはカットで。
本作『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』をお読みいただき、誠にありがとうございます!
今後も第三章「緑の侵攻」編を頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。
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