実戦試験⑦~先生の猛攻~
「し、死ぬかと思った……」
……危なかった。
目前には土の盾。
僕らを囲む、大地の壁。
「何が起きたんだ?」
「槍じゃねえぞ⁉」
「きょうえい、これは……」
そしてそこに突き刺さるのは、夥しい数の――
「土の針だ。
土浦先生は、投げた土の槍を制御して、無数の針へと変えたんだ」
投擲した時には、確かに一本の槍だった。
それはつむじを――白組を狙ったもの。
けれどつむじに躱されたことで、投げ槍としての役割は終わりのはずだが……。
「多分、つむじに躱されることを予測してたんだ。
だから、それも計算に入れて槍の速度と精霊量を増やしたんだ」
つむじに躱されたとしても、後方待機組に届く様に。
僕らに届いたのなら、できる限り被害を大きくするために。
一度放った攻撃を、途中で変化させるなんて超絶技巧をやってくるとは思わなかった。
手元から離れた精霊の制御は難しい。
仮にできたとしても、それを敵への攻撃として成立させるには――
正確な精霊制御。
針への変化時機の見極め。
全てを乗り越えるには、相当の集中を要しただろうに。
……流石は央成学院の教師ってことかな。
伊達に顔が怖いだけの人じゃない。
「つまり先生は……僕らを本気で殺る気だったってことだね」
僕の言葉に、
「本当に先生か⁉」
「こんな外道が教員なんて、世も末だぜ……」
「こんな危ない奴に、美人の奥さんは相応しくないよな!」
口々に先生への不満が出てくる。
……どの口が言ってるんだ、こいつらは。
そう思わないでもないが、先生の可愛い奥さんが妬ましいので黙っておく。
それにしても、
「……つむじが対処していて良かったよ」
「どうして?」
赤の少女の疑問に、
「これだよ」
空色の少女の起こした結果を見せる。
「これは――」
空中で別れ、降り注いだ幾千もの土の針。
それらの攻撃は――
「ほとんどが届いてない?」
彼女の言う通り。
僕らに届いた土の針は盾で防いだ。
しかし、大半は届かずに手前の建造物へと突き刺さっている。
回避のためにつむじが槍の持つ速度を削ったことで、針の飛距離も落ちたのだ。
……もしつむじがそれをやらなきゃ、被害が出てたかもしれない。
幼馴染に感謝だ。
「白組連絡! もし、標的が槍を投げたら全力で迎撃して!
堕としきれなくても、速度を削るだけで良いから!」
狙いは先行したつむじたち――それが叶わなければ、僕たち。
嫌な打ち手だ。
一手で複数の道筋を読んでいる。
……力の差というよりは、戦闘経験の差が大きいか。
「皆!」
故に呼びかける。
士気を上げなければ、あの強敵は倒せない。
「土浦先生は、卑怯にも――僕らを狙ってきた。
可愛い奥さんがいるという、大罪を犯しているのに――僕ら正義の使者を討とうとしている!
僕らを討つことで、罪を隠匿しようとしているんだ!
皆、そんなの許していいのか?」
「は組」の鉄の掟。
それを担任が破るだなんて、言語道断だ。
「許せねえよ!」
「可愛い奥さんなんて、俺でもいないのに!」
「弁当を作ってもらってたんだよな⁉
やっていいことと悪いことがある!」
「あの……奥さんがいるのは別にいいんじゃ――」
比較的落ち着いた女子の声を、
「そうだ! 皆! 悪は滅ぼすべきだ!
この戦いで、どんな手を使ってでも土浦先生を更生しなきゃいけないんだ!」
「「「おう!」」」
男子は聞かない。
……心優しい彼女たちは、土浦先生相手でも、慈悲を持って接してしまうだろうからね。
今必要なのは、優しさではなく厳しさ。
敵に加減などしない厳しさだ。
「やるな」
……出来れば一撃で仕留めておきたかったが。
土の手応えはない。
おそらく損害は与えられていないだろう。
……男子を可能な限り削っておきたかったが。
実技試験における強敵は、男子たち。
特に頭である黒白。
奴が厄介だ。
精霊の扱いもさることながら、指揮官としての能力が、末恐ろしい。
使えるものを全部使いきり、泥臭く勝利を狙いに行く。
勝利の為なら、自分たちの恥すらも武器とする。
担任としては心強いが、敵にすれば、これほど危険な相手もいない。
「とりあえず……やるか」
槍は周囲に大量に用意してあるのだ。
それを手加減なしで投げ込み続けてみよう。
……どう対処してくるだろうか。
教え子たちの対応が楽しみだ。
「『対牀風雪』があれば……」
自身の精霊繋装が、恋しい。
次々と投擲される土の槍を幼馴染の指示通りに堕とし、速度を削り続けてはきたのだが。
……しかしこれは――
「数が多すぎるよ⁉ きょうえい!」
……聞いてない! この数は聞いてない!
先生の投擲した槍。
それだけなら、初撃で速度もタイミングも捉えたのだが――
「何か……別方向からも撃ち出されてるんだけど⁉」
先生からの攻撃だけでなく、先生の前方の大地。
そこには、先生が用意した無数の槍が増え続け――射出されているのだ。
「痛っ⁉」
「ぐえっ⁉」
「あいたたたた⁉」
白組の皆がその攻撃に晒されている。
直接投擲される槍よりも、威力は低い。
しかし如何せん――数が多い。
手数を大地の槍の射出で補い、自身の投擲には威力を求める。
先生を警戒しすぎれば、大地の槍を当てられ。
大地に気を取られると、先生によって撃ち落とされる。
風山君曰く、大地の槍の精霊密度は低いらしいが――無駄な怪我を白組にさせたくない。
「白組! 自身の身を護るのを最優先!
無理に攻撃を削りにいかなくていいよ!」
……無理なものは無理だから、後は自分で頑張れ――きょうえい!
――先生に関する持論は「顔の怖さと強さは比例する」です。
本作『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』をお読みいただき、誠にありがとうございます!
今後も第三章「緑の侵攻」編を頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。
※現在、並行して1話目から編集し、書き直したりもしています。
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