学年総代決定戦3日目㉜~勝つために~
精霊を見る。
その継ぎ目を見る。
言葉ほど易いものではない。
刹那の時。
数秒それを見ようとしただけで、眼は熱を持ち、頭痛が脳を叩く。
それでも決して止めないのは、
「絶対に総代になるんだあぁぁぁぁ!」
勝利への執念。
想いが身体を動かしている。
黄金を切り裂く紅の斬撃。
しかしそれは――
「なるのは私だあぁぁぁぁぁ!」
一際輝く黄金の打撃もまた同じ。
玉桜君の土の精霊の動きを学習した代償として、
「攻撃を見切ったの⁉」
「やられた分のお返しだ!」
刃の先にある「天涯比隣」の精霊密度は――生成された黄金とは比べものにならないくらい濃い。
……どうしよう。斬れる気がしないなあ。
「天涯比隣」がというより、精霊繋装という存在自体に破壊できるイメージが湧かない。
人知を超えた存在故だろうか。
距離を取りながら、牽制の意を込めて、無数の炎を放っていると――
「きょうえい――」
精霊通信。
連絡相手は、大地さんを連れて行ったしんかだ。
……マズいぞ。
彼女の声色からは何も読み取れない。
玉桜君との戦いを楽しみ始めたことに、気付かれただろうか。
真面目なしんかが、どんな反応をするのか少し怖いが、
「――時間稼ぎをすればいい?」
「……えっ⁉」
気付いたどころか、僕に協力してくれようとしている。
「ど、どうして⁉」
「だって、楽しそうなのが伝わってくる――『比連』から」
「あ……」
精霊繋装「比翼連理」の能力。
あらゆるものを相棒同士で共有する能力。
すっかり忘れてたけど、もしかして――
「僕の考え……筒抜けだった⁉」
「? きょうえいが何を言いたいのか、よく分からない」
けど、
「好きなようにやっていい。
きょうえいの尻拭いは私がする。
きょうえいが楽しいと……私も楽しい」
確実な徹底した勝利ではなく、僕が楽しむことを優先してくれるのか……。
声に熱はない。
それでも彼女の言葉に嘘がないのが、なんとなく理解できる。
……しんかって神様の化身とかなんじゃないかな。
いずれ作るか……しんか教。
「ありがとう、しんか――」
「お礼は美味しい料理が良い」
「ちゃんとお礼は要求するんだね⁉」
……その内容はしんからしいけども!
彼女は続ける。
「そもそも倒すつもりだったでしょう?」
「……な、何を言ってるのさ!」
時間稼ぎをして、しんかが大地さんに勝つのを待つ。
それが効率的かつスマートで楽な一手。
……聡い僕が、わざわざ玉桜君と戦うなんて選択肢を取るはずないじゃないか!
「でもきょうえいの残してる策は、対玉桜君用」
……まったく。
「しんか? まさかとは思うけど、僕が総代戦の作戦を立てた段階で――」
「こうなると思ってた」
……恥ずかしい! 相棒に完全に読まれてる!
一応最後の策は、念のためのものだったんだけど――
「それなら、早目に言ってよ! そうしてたら、もっと別の作戦に力を入れてたよ!」
「嘘。どうせ玉桜君と戦ってた……絶対」
力強い断言。
僕への理解度が高すぎる。
「流石しんかだね。
つむじみたいな、名ばかり幼馴染とは格が違うや」
「きょうえい、それはつむじに怒られる」
「大丈夫、大丈夫。バレなきゃ問題ないよ」
……つむじは今頃忙しいはずだし――大丈夫だよね?
「きょうえいが良いなら、それでいいけど」
僕の相棒は、
「とりあえず――大地さんは私に任せて、やりたいことをやっていい」
望みを叶えてくれる最高の相棒だ。
「ありがとう!」
「ううん――私もお嬢ちゃんと楽しむから」
大地さんの身に何が起きるのだろう。
敵ながら彼女の身が心配に――はならないか。
しんかはいい子だし。
最悪の場合でも、しんかが大地さんをお嫁にするくらいか。
そうなったらなったで、玉桜君の邪魔ができるわけだし……悪くない。
「さて、それじゃあ――」
最後の作戦だ!
火花が残る、自在の軌跡。
あらゆる方向から迫る刃に対して、こちらは追い縋るのがやっとだ。
「空中戦はやはり厳しいか」
金塊を蹴る、空中での移動。
火光委員長の真似をすることで、どうにか空中機動を可能にしていたが――その分のデメリットも存在する。
敵の選択肢の増加。
平面上の八方だけでなく、三次元の上下移動が加わることにより、攻撃予測自体が難しい。
ありがたいのは――
「私に勝つつもりなことだな」
機動力に任せて、逃げに徹されれば確実に敗れていただろう。
事実途中までは、その動きをしていたはずだが――
「揺らいだな? 揺らぎは自身の首を絞めるぞ?」
「ゆゆゆ、揺らいでなんかないやい! 元々の作戦だったし!」
……嘘くさい。
まあ、そのおかげで、ここまで食い下がれているわけだが。
黒白委員長の上方からの接近。
「丁度いいタイミングだ!」
金塊を蹴りつける。
「何⁉」
金塊を受けた敵をその場に残し、地上に向けての加速を図る。
重力も私に味方した結果――接近する紅蓮よりも先に、大地を踏みしめる。
溢れる土の精霊たち。
……地上は――私の領域だ!
「ここならば――私は負けない!」
「っ⁉」
宣言と同時に黒白委員長へと放たれるのは――
「行け!」
私の精霊ではなく、この地に存在する精霊を用いた多数の土の槍。
迫る紅蓮の意表を突いたはずの突きは――
最小限の回避によりいなされる。
……精霊の動きを通じて――起きる事象を視ているのか⁉
しかし――
「それだけで終わると思うな!」
攻撃の本命は別だ。
土の槍に隠された、更なる土の精霊たち。
土の攻撃に、土の精霊を紛れ込ませる。
そこから放たれるのは――逃げ場のない土の針だ。
「っ⁉」
躱すことのできない針はしかし、纏った炎で焼き払われる。
「これにすら――初見で対処できるというのか⁉」
回避後の隙を狙った攻撃。
それすらも――視えていたのだろう。
……どこまで視えているのだ⁉
槍と針の濁流を、燃やすでもなく、刃で弾くでもなく、縫うように泳いでいく。
赤光の軌道には迷いがない。
「くそっ!」
交わる「天涯比隣」と「翼理」。
「黒白委員長! お前――何が視えている⁉」
「えっ⁉」
一瞬逡巡して、
「視力は3.5だから――」
「そんな話をこの場でするな!」
……誤魔化しているのか、バカなのか――全く分からない。呆れた奴め!
黄金の籠手と燃え盛る刀。
籠手を補助するように、大地の槍が合間を突く。
……この地の精霊を利用して――ようやく互角か⁉
時の経つのが早い。
久しい感覚。
この気持ちはそう――焦燥感。
……私が焦っているというのか。
この男との戦いが長引くほど、すいかがやられる可能性が高まっていく。
相手は火光委員長。
この黒白委員長と対になる一振りを持っているとなると、すいかの荷が勝ってしまう。
……狙うべきは「翼理」か?
精霊繋装「比翼連理」が片翼。
莫大な火の精霊を統べる、炎の刀。
黒白委員長自身の精霊保有量は平均的で、火の精霊自体は「翼理」から生じていると聞く。
ならば――敵の「翼理」を狙い打ち、黒白委員長を弱体化させる。
速やかに奴を排除し、すいかと共に火光委員長を討つ。
……それに望みをかけるしかない!
「食らえ! 黒白委員長!」
これまで通りの土の槍を放つ。
ダメージを与えられないのは、百も承知だ。
本当の狙いは――奴の進路を絞ること。
「ふっ!」
私の誘いに奴は乗る。
赤光の来るのは正面。
膨大な熱量に、何度目かわからない死の感覚。
これまでなら刃を受け止めていた。
しかし、今回は受けるのではなく――
「はああぁぁぁぁぁぁ!」
カウンター。
狙いは奴の刀「翼理」の迎撃。
全力の拳を、刃に打ち込む。
……信じているぞ! 「天涯比隣」!
お前なら――斬れないはずだ!
衝突する刹那――さらに拳を握り込む。
この拳に全てを乗せろ!
「くっ⁉」
「良し!」
澄んだ音と共に、打刀が宙を舞う。
これで――
「僕の勝ちだ!」
「何⁉」
ここに至って気付く――大地の震え。
……何だ⁉ これから何が――起こるというのだ⁉
戸惑う私に向けて、敵の口が弓を引く。
「撃てえぇぇぇぇl! つむじいぃぃぃぃぃ!」
叫びと同時に――蹂躙する嵐の槍が降って来た。
――最後の一撃の行方はいかに。
本作『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』をお読みいただき、誠にありがとうございます!
今後も第二章「水の蛇・金の龍」編を頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。
※現在、並行して1話目から編集し、書き直したりもしています。
気になる方はそちらもお読みいただけると嬉しく思います!
感想もお待ちしております!
評価とブックマークをしていただいた皆様、本当にありがとうございます。
皆様に読んでいただけているということが、僕の書く意欲になります!
もし『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、今後も本作を書いていく強力な励みとなりますので『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非よろしくお願い致します!
ではまた次のお話もよろしくお願いします!




