学年総代決定戦3日目㉖~スキ~
「これで戦力は揃った!
しんか! 大地さんを討って!」
「了解」
「させるか!」
応えるや否や大地さんに向けて飛び出す赤光に、黄金が対応する。
再度の跳躍は自然落下による下降分を補って、あまりある大跳躍。
僕との戦闘中には見なかった、力任せの跳躍だ。
それによって、大地さんの元へ向かうしんかを、迎え撃つつもりなのだろう。
「しんかの邪魔はさせないよ!」
……僕がさせないけどね!
しんかと玉桜君の間に割って入る。
「金は払うからどけ! 邪魔だ!」
全力の加速。
しかし、隙だらけの加速だ。
「僕はそんな安い男じゃない!」
彼に見せつけるように、空を踏む。
……お手本を、今一度見せてあげるよ!
爆風による加速。
その勢いのまま――「翼理」を玉桜君に叩きつける!
「くっ⁉」
「どうしたの、玉桜君!
随分と焦ってるみたいじゃないか!」
僕のカウンターを、どうにか「天涯比隣」で受ける。
しかし、雑念のある疾走だった故に、彼の体勢は整っていない。
「翼理」を振り抜く勢いのままに、
「弾き飛べえぇぇぇ!」
「邪魔をするなあぁぁぁぁぁ!」
後退させる。
いつもの泰然とした態度が嘘のような焦り。
明らかに精彩を欠いている。
振るわれる拳すら、先程までのキレはない。
「どけ! 黒白うぅぅぅぅ!」
「そんな大振りの拳に、当たるかあぁぁぁぁ!」
悠長な大振りが唸る
空気を巻き込むように、振りかぶられた拳。
そんなものは――所詮見た目だけだ。
僕が正眼に構えている「翼理」。
その「翼理」ごと、正面から殴り潰そうとする一撃。
「そんなの……食らうかあぁぁぁ!」
それは「翼理」と「天涯比隣」の衝突の瞬間に起きる。
玉桜君の拳の握りが、最も強まった瞬間に――
「何⁉」
「翼理」を仕舞う。
予想外の受け――いや、受けですらない。
衝突するはずの刀が消え、彼の表情に驚愕が浮かぶ。
けれどこの程度の大振りなら、
「どりゃあぁぁぁぁぁ!」
「翼理」すらいらない。
迫る拳を見切り、彼の剛腕を取る。
鍛え上げられた筋肉。
練り上げられた、天然の鎧。
しかし今は、
「筋肉が泣いてるよ!」
「くっ⁉」
宝の持ち腐れだ。
左手は彼の腕を。
右手で彼の制服を取る。
両手の連動と共に、身体を回転させる。
以前、幼馴染にやられた、
「つむじ直伝、背負い投げだああぁぁぁぁぁ!」
……そのまま地面に叩きつけてやる!
玉桜君は黄金の輝きを纏ったまま、僕の投げに抵抗できず――
地面に叩きつけられた。
「ぐはっ⁉」
叩きつけられた衝撃によって、肺から空気が吐き出される。
焦り。
単純な不安があった。
いつもは「P.G.D」に乗っているからこそ、味わうことのない恐怖だ。
すいかの危機に、私がこんな風になるなんて……思ってもみなかったのだ。
……未熟だな私は。
その未熟さ故に、
「たー君⁉」
赤光に迫られながら、私を心配するすいか。
今にも泣きだしそうな表情だ。
すいかにあんな顔をさせてしまった。
「たー君! 大丈夫なの⁉」
……大丈夫だ。だから――
「勿論だ! 私は金を得るまでやられん!」
……そんな顔をするな。
「たー君!」
安堵した表情。
泣かせずに済んだようだが、私の好きなお前の表情はそんなものではない。
「捕まえた。持ち帰る」
赤光は水を迎撃し、その間合いにすいかを捉える。
振るわれる凶刃を、
「いやあぁぁぁぁ!
連れ去られるうぅぅぅぅぅ!」
怯えながら受けるのは、すいかの生み出した鉄の刃だ。
拮抗する二刀。
「大人しくして。
きょうえい……この子可愛い。やっぱり貰ってく」
「ぐうぅ! 思いっきり誘拐じゃないのおぉぉぉ!」
しかし、出力の差は如何ともし難い。
余裕のある火光委員長と、必死に抗うすいか。
生み出した鉄の刃はぐいぐい押し込まれ、今にも焼き切られてしまいそうだ。
「すいか! 私が行くまでもたせろ!」
無茶なことは分かっている。
それでも、私の命令に彼女は――
「了解よ!」
笑顔で応える。
絶対の信頼。
玉桜たつやならば、やってくれるという疑いのない真っ直ぐな笑顔だ。
……そうだ。その顔だ。
私はお前の、その顔が好きなのだ!
「させないよ! 玉桜君」
立ち塞がるのは、もう一条の赤光。
相手にとって……不足はない。
――焦りを乗り越え、「ろ組」役員コンビは絶好調に。
主人公たちは、彼らを倒せるのか、楽しみながら読んでいただけると嬉しいです。
本作『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』をお読みいただき、誠にありがとうございます!
今後も第二章「水の蛇・金の龍」編を頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。
※現在、並行して1話目から編集し、書き直したりもしています。
気になる方はそちらもお読みいただけると嬉しく思います!
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