学年総代決定戦3日目㉑~「は組」役員の連携~
紅蓮と黄金の輝きが、空中で尾を引きながら交差する。
速力は紅蓮の方が圧倒的だ。
黄金は赤光に追いつけない。
故に遠距離から炎を撃たれる。
その炎も最早漠然とした炎ではなく、弾や刃、槍といった種々の形で放たれる。
しかし――
紅蓮の放つ炎を、遅いはずの黄金は躱す。
空中での更なる跳躍。
大地を踏むのと等しいレベルの跳躍には――どこか覚えがある。
もっと近くで見ようと、二色の輝きが入り混じる場所に、私――火光しんかは足を運ぶ。
すると――
「危ない」
打刀「比連」を持って、飛来したものを斬り落とす。
「これ――金?」
斬り落とした物体に目をやると、玉桜君とよく似た黄金の輝き。
金塊だ。
非常に重い金塊が「比連」によって斬り落とされていた。
「どうして――」
と考える間もなく、再び私に向かって飛来する金。
次々と飛んでくる金ではあるが――
……私を狙った攻撃じゃない?
指向性が感じられない。
私を狙ったというよりも――偶々私の元に飛んできた。
そういった方が正しい気がする。
進行方向から度々飛んでくる金塊。
「いてえ⁉ 皆気を付けろ! 敵からの攻撃が降ってきてるぞ⁉」
「脱落した俺らに攻撃なん――いったあぁぁぁぁ!」
「血が! 血があぁぁぁぁぁ⁉」
「この金、売れるのかなあ?」
クラスメイトたちからも被害の声が聞こえてくる。
金塊の飛んでくる方向。
それは勿論、玉桜君である。
そして、金塊が飛んでくるタイミングは――
「あ――」
黄金が空中を駆けた直後である。
それも黄金の軌跡とは逆方向に、金塊は飛んでいく。
すなわち黄金の移動方法は――空へ生み出した金塊を足場にした跳躍。
つまり――
「あれって……私のやつだ」
水の精霊で攻撃され、身動きが取れなくなった時。
きょうえいの生み出した金属板を踏んだあれである。
「真似された……私の隠し技を」
「僕のおかげで出来たやつだよねえ⁉」
ショックを受けていた私に、精霊通信が入る。
交戦中の相棒にして、友だち兼召使い。
黒白きょうえいからの通信だ。
「僕のおかげで出来たやつだよねえ⁉」
僕のツッコミにしんかは淡々と、
「でもショックはショック。この戦いが終わったら特許申請する」
自身の技術の保有について語る。
これ特許申請通るんだろうか、という疑問はさて置き。
空を駆ける黄金の輝きに目をやる。
金塊を踏んでの空中跳躍を繰り返す玉桜君にはしかし――速度はない。
生身の跳躍故だ。
精霊発見以前と以後で、人類種の身体能力は大きく変化を遂げている。
精霊が人体に与える影響。
精霊が生物にもたらす恩恵。
その研究は日進月歩を重ね、精霊を因とした 紅蓮と黄金の輝きが、空中で尾を引きながら交差する。
速力は紅蓮の方が圧倒的だ。
黄金は赤光に追いつけない。
故に遠距離から炎を撃たれる。
その炎も最早漠然とした炎ではなく、弾や刃、槍といった種々の形で放たれる。
しかし――
紅蓮の放つ炎を、遅いはずの黄金は躱す。
空中での更なる跳躍。
大地を踏むのと等しいレベルの跳躍には――どこか覚えがある。
もっと近くで見ようと、二色の輝きが入り混じる場所に、私――火光しんかは足を運ぶ。
すると――
「危ない」
打刀「比連」を持って、飛来したものを斬り落とす。
「これ――金?」
斬り落とした物体に目をやると、玉桜君とよく似た黄金の輝き。
金塊だ。
非常に重い金塊が「比連」によって斬り落とされていた。
「どうして――」
と考える間もなく、再び私に向かって飛来する金。
次々と飛んでくる金ではあるが――
……私を狙った攻撃じゃない?
指向性が感じられない。
私を狙ったというよりも――偶々私の元に飛んできた。
そういった方が正しい気がする。
進行方向から度々飛んでくる金塊。
「いてえ⁉ 皆気を付けろ! 敵からの攻撃が降ってきてるぞ⁉」
「脱落した俺らに攻撃なん――いったあぁぁぁぁ!」
「血が! 血があぁぁぁぁぁ⁉」
「この金、売れるのかなあ?」
クラスメイトたちからも被害の声が聞こえてくる。
金塊の飛んでくる方向。
それは勿論、玉桜君である。
そして、金塊が飛んでくるタイミングは――
「あ――」
黄金が空中を駆けた直後である。
それも黄金の軌跡とは逆方向に、金塊は飛んでいく。
すなわち黄金の移動方法は――空へ生み出した金塊を足場にした跳躍。
つまり――
「あれって……私のやつだ」
水の精霊で攻撃され、身動きが取れなくなった時。
きょうえいの生み出した金属板を踏んだあれである。
「真似された……私の隠し技を」
「僕のおかげで出来たやつだよねえ⁉」
ショックを受けていた私に、精霊通信が入る。
交戦中の相棒にして、友だち兼召使い。
黒白きょうえいからの通信だ。
「僕のおかげで出来たやつだよねえ⁉」
僕のツッコミにしんかは淡々と、
「でもショックはショック。この戦いが終わったら特許申請する」
自身の技術の保有について語る。
これ特許申請通るんだろうか、という疑問はさて置き。
空を駆ける黄金の輝きに目をやる。
金塊を踏んでの空中跳躍を繰り返す玉桜君にはしかし――速度はない。
生身の跳躍故だ。
精霊発見以前と以後で、人類種の身体能力は大きく変化を遂げている。
精霊が人体に与える影響。
精霊が生物にもたらす恩恵。
その研究は日進月歩を重ね、精霊を因とした人類種の能力変化の原理は着実に明らかにされてきている。
しかし――それでも。
人類種の身体能力が大きい変化を遂げたといえども。
爆発を、炎を、風を踏む。
しんかの生死がかかった駆動には遠く及ばない。
彼女を手本とした僕の動きも同様だ。
だからこそ生まれる速力の差。
追いつけない距離の開き。
しかしそんな中でも彼は「翼理」の炎を躱す。
躱し、いなし、時には精霊繋装の籠手で叩き落とす。
「ちっ! しぶといよ!」
「金を稼ぐのに最も大事なことは何か知っているか? 黒白委員長!
それは……諦めないことだ!」
咆哮と共に、幾度の炎を超える。
狙いはわかりやすい。
接近戦だ。
でもそれは――
「僕に近づけなければ、君に勝ち目がないことの証左でもあるよね⁉」
遠距離の武器がないということだ。
「そうだ! お前の言葉は正しい」
だが、と彼は続ける。
「この場で戦っているのは……私だけではない」
「なっ⁉」
背筋が冷えるのと共に、玉桜君に正面から相対していた身を半身にしたのが功を奏した。
僕の制服の胸元を――水の弾丸が掠めていく。
水の精霊による狙撃だ。
らんちゃん程の威力ではないにしろ――痛い。
「ちっ! しくじったわ! なんて危機察知能力なの⁉」
大地さんだ。
彼女による地上からの精密射撃。
取り巻く水の精霊の滑らかな動きが、彼女の練度の高さを証明している。
「くっ⁉」
崩された体勢。
……距離が――時間が欲しいね。
玉桜君と距離を置こうとする僕。
それを牽制するように、水弾は僕の進行方向を切り裂く。
遠距離の大地さん。
近距離の玉桜君。
二人の連携は、
「捉えたぞ!」
僕の応手を確実に減らしていく。
「まだまだあぁぁぁぁぁ!」
紅蓮の刃と黄金の拳。
一撃必倒の一振りが、朝の空で火花を散らす。
――二対一を卑怯とは言うまいな?
本作『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』をお読みいただき、誠にありがとうございます!
今後も第二章「水の蛇・金の龍」編を頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。
※現在、並行して1話目から編集し、書き直したりもしています。
気になる方はそちらもお読みいただけると嬉しく思います!
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