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学年総代決定戦⑰~トンネル、その先~

「なんて力だ!」


「P.G.D」(桃金竜)が、拘束されているだと⁉


 竜尾の抵抗どころか――竜自体の身動きを、火光委員長によって制されたかと思えば、


「その状態で動作自体を封じられるとはな」


 驚嘆に値する。


「P.G.D」は土の精霊によって形成された桃金(ピンクゴールド)の竜。

 その質量は在るだけで、圧倒的だ。


 まだ。

 まだ火光委員長のように物理的な攻撃によって、動きを封じるのなら理解できる。

 同じように質量をもつ物質を用意できる水・木・土で対抗するのもまあ、わかる。


 しかし、それを風で成したことが恐ろしい。

 どれほどの精霊量が必要なのか想像もつかない。


 ……まあ、流石に。

 最後までは保てない(長時間はできない)はずだが。


「この数日でどれほどの成長を……」


 私たちが文字通り山内で待機している間に、覚醒したのだろう。


「精霊繋装か」


「P.G.D」を抑えられる程の風であれば、十中八九精霊繋装の担い手として目覚めたに違いない。

 そういう意味では海風書記のいる場所を無傷で切り抜けられたのは、幸運だったのかもしれない。


 


「たー君、『ろ組』()落ち着いたよ!」


「よくやった! すいか」


 暗闇(トンネル)の中を「P.G.D」は進み続ける。


 周囲には何も見えず。

 行き先すらわからない。

 唯、ひたすらに転がり続ける。


「委員長! 大丈夫でしょうか?」

「怖い……どうなるんだ?」

「死にたくない……」


 鍛えられた「ろ組」生といえども、恐怖にかられて仕方ない状況だ。


 そんな浮足立った私たちを落ち着かせたのは、すいかの


「全員、動きを止めなさい!

 まずは自身の安全確保! 

 その後、竜爪・竜尾組は被害報告。

 竜頭・竜脚・竜核組は、現在の稼働状況を逐一私に報告して!」


 という指示だ。


 焦りの中で、自身のやるべきことを自覚させる。

 それだけでも、私たち(「ろ組」)なら自分を取り戻せる。


「副委員に恵まれたな」


「え? 何?」


 本人に自覚があるのかは分からないが。




「感知班、行き先はどこだ?」


 落ち着きを取り戻したのなら、今後の事を考えなければならない。


 滑り行くのは致し方ないとして、行方くらいは知る――少なくとも予測位はしておくべきだ。


「このトンネルは、昨日『は組』が『い組』へ攻め込む際に使用されたものと思われるので……おそらく『い組』拠点に向かっているものかと――」


「委員長! 後方よりさらに風が!」


 ぐんと風にさらに押される感覚。

 海風書記は、未だに風を放ち続けているらしい。


「P.G.D」に損傷はない。

 ということは狙いは――


「攻撃じゃなくて、移動させるための風ってこと?」


「だろうな」

 

 そしてその風に押されて行き着く先には、朽縄らんたち(「い組」)がいるというわけだ。


 朽縄(くちなわ)らん。

 盲目の水蛇。

 青髪青目の薙刀使い。

 水の精霊繋装「刎頸之交(ふんけいのまじわり)」を所有する、歴代でも最強クラスの担い手。


 水流(つる)副委員長や他の「い組」生も油断ならない。


「ろ組」(私たち)と「い組」をぶつける気か?


 双方の戦力を減らすために。


「いや――違うか」


 昨日の「い組」と共同戦線の激戦。

 詳しい内容は分からないが、それはもう終わっている。

 でなければ、「ろ組」(私たち)との戦いに踏み切れないはずだからだ。


 となると、


「『い組』も共同戦線に取り込んだか?」



 そう考えるべきだ。


 故にトンネルの(この)先には、


「『い組』が待ち構えている」


 ならば――


「総員に告げる。

 このトンネルの先には敵――『い組』がいる可能性大だ。

 迎撃準備に入る!

 各員各所、稼働状況を改めて報告せよ」



「竜爪組、損害は大きいけど稼働可能です!

 やってやりますよ!」


「竜脚、問題なし」


「竜頭、いくらでも行けます!」


「竜尾各員、問題ありません!」


「頼もしいな、各員」


 凛々しく響く声々。

 全員で勝つという、強い意志の表出。

 それだけでも値千金といえるだろう。


「よし、良い働きをした者には、特別功労賞として報酬(ボーナス)を出そう!」


「「「よっしゃあぁぁぁぁぁ!」」」


 意気も高々な我々に新たに響く声。


「たー君!

 前方に光!

 おそらく朝日よ!」


 この戦いが始まって数時間。

 暗かった空は、もう明るくなっているようだ。


「すいか! 風の拘束はどうなっている?」


「まだ続いてる!

 ただこの状態であれば、丁度トンネル出口付近で解けるわ!」


 よし。

 であれば――


「あの灯は私たちを勝利に導く朝日だな!

 総員、戦闘準備に入れ!

 トンネルを抜けるぞ!」


「「「応!」」」


「すいか、合図を」


「OK! 

 トンネル通過まで3、2、1、0!」


「P.G.D」は速度を保ちながら、トンネルを抜ける。

 閉塞感からの開放感。

 

 各戦闘員の準備は整っている。

 ここからが私たちの反撃――


 ザバン


「っ⁉」


 想定外の音。

 

「P.G.D」が水に触れたような音だ。


 そして私の視界(目の前)には、嘘のような光景が広がっている。


「水の……球か?」


「P.G.D」が巨大な水球に捕(・・・・・・・)らえられている(・・・・・・・)


「くっ⁉」


 想定の斜め上の状況だ。

 私たちが飛び出した先は空であり、そこから攻勢を仕掛けるはずが――先手を取られた。

 

 なぜこれ程の水球に、感知班は気づけなかったんだ?


「……氷のトンネルか!」


 無論「P.G.D」を運ぶ目的もあったんだろうが。

 氷をトンネル全てに張ることによって、水の精霊でトン(・・・・・・・)ネルを満たした(・・・・・・・)


 トンネルの出口――その先に配置された巨大水球の気配を感じさせないために!


 そして厄介なことに――


「沈まないのか」


 密度で考えれば「P.G.D」は水球内部で沈み、底から抜けるはずだが……自然の理に反して、空中の水球から逃れることができない。


「P.G.D」は水球に覆われたまま、中心から動けない。


 物理法則に反する水。

 それで「P.G.D」全体を覆った上で、制御しきる精霊制御能力。


 この敵は――


「やはり朽縄委員長(精霊繋装持ち)か!」


 地上には朝日に煌めく青。

 精霊繋装を顕現させた薙刀使いが立っている。


 ――トンネルを抜けるとそこは水国だった。


 本作『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』をお読みいただき、誠にありがとうございます!


 今後も第二章「水の蛇・金の龍」編を頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。


 ※現在、並行して1話目から編集し、書き直したりもしています。

 気になる方はそちらもお読みいただけると嬉しく思います!


 感想もお待ちしております!


 評価とブックマークをしていただいた皆様、本当にありがとうございます。

 皆様に読んでいただけているということが、僕の書く意欲になります!

 

 もし『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、今後も本作を書いていく強力な励みとなりますので『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非よろしくお願い致します!


 ではまた次のお話もよろしくお願いします!

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