学年総代決定戦3日目④~金属塊の正体~
「やっぱり、この金属塊は君の仕業か!
玉桜君!」
夜の闇に僕の声が響く。
この金属塊は――彼らの策。
これを皮切りに、何かを仕掛けてくるのだろう。
「そうだ。これが私たちの力。
その一端だ」
力の一端。
私たち。
この言葉が意味するのは――
ドン!
これまでで一番の轟音に思考が遮られる。
しんかだ。
しんかが、金属塊に爆炎を見舞っていた。
火の精霊繋装の片割れにして、打刀「比連」。
放出される炎は正しく光焔万丈。
敵対するすべてを焼き尽くす、紅蓮の炎。
しかし――
「頑丈」
正面から炎を受けたはずの金属塊に、一切の損傷はない。
「凄まじい熱だ……火光委員長。
しかしそれだけでは、私たちには届かない」
「じゃあ……これは?」
きょうえい持っててと、「比連」を投げ渡すや否や――
しんかの姿が消える。
聞こえるのは短い加速音。
小規模の加速用爆発が、空へと刻まれていく。
音は重なり連続する。
しんからしき赤光の尾はみるみる伸びていく。
速さは助走。
その勢いこそが威力となる。
速度の集中した彼女から繰り出されるのは――
「いっけえぇぇぇぇ! しんかあぁぁぁぁぁ!」
「はあぁぁぁぁぁ!」
一切を乗せた右の拳。
紅蓮の少女による金属塊への打撃は果たして――
大気を震わせ、鳴動にて大地を揺らす。
「きゃああぁぁぁぁぁ! 何? 次は何が起きたの?
たー君!」
金属塊から……玉桜君以外の声?
それが意味するのはつまり。
「……見事だ。火光委員長」
しんかの拳によって、金属塊が陥没していた。
「すごく堅い」
しかし……破砕には至らない。
「そんな⁉」
精霊繋装持ちの一撃なのに⁉
どれほどの土の精霊を費やせば、この強度を生み出せるんだ?
「何?」
しんかの攻撃に応えるように、金属塊が上下に開く。
その中には鋭い牙。
研がれた刃の様に鋭い牙が無数見える。
その様子はまるで――
「口?」
獲物を捕らえる生物。
その捕食する光景によく似ている。
「いけない!」
自身を飛ばす。
加速先はしんか。
彼女を捕らえると、その勢いのままに空へ。
僕たちを掠めて、開いた口が勢いよく閉じる。
「危なかったね……」
「きょうえい……ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
しんかに食いついた金属塊。
金属塊のあの動きに、その形状。
それを僕は知っている気がする。
「ねえ……火光さん、今いいかな?」
「大丈夫」
しんかに向けての精霊通信。
ひょっとすると今の一連の攻防で、何か気付いたことがあったのかもしれない。
その声は出し抜けに――
「抱かれ心地はどう?」
なんて恐ろしいこと聞いてくれてるんだ⁉
まずい、この流れは――
「しんか、答えなくて――」
「ぐっど」
「「「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」」」
「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!」」」
黄色い歓声と野太い怒声。
前者は女子で、後者は男子だ。
「黒白、手前えぇぇぇぇぇぇ!」
「卑怯者!」
「どんな匂いがしやがるんだ、このクソ野郎!」
次々と男子勢から抗議通信が入る。
知ったことか!
こっちが真面目な時に、このやり取り。
邪魔この上ない。
「君たちには一生無理だろうね! ドンマイ!」
「「「絶対――」」」
事実だけを述べて、強制的に連絡を断つ。
バカの相手をしてる場合じゃないんだよ、こっちは!
「玉桜君!」
「どうした? 黒白委員長。
火光委員長をお姫様抱っこしてる件を口止めしたければ、金を払え!」
何て卑劣な!
でも、既に「は組」にはバレている。
そんな脅迫に僕が屈することはない!
「今のしんかの打撃に、声を上げたのは、大地さんかい?」
「……さて、どうだろうな?」
確実に聞こえた「たー君」と呼ぶ声。
玉桜君をそんな風に呼ぶのは、大地さんしかありえない。
それを彼ははぐらかそうとする。
「もしかして、金属塊に皆いるのかな《・・・・・・》?」
「……」
1年「ろ組」。
異例の1クラス全員推薦クラス。
全てを乗りこなす操士と整備士資格を全員所持。
そして――全員が竜騎士の称号を持つ。
真偽不明のそれらの噂。
しかし全て事実だと仮定すれば、それらから導き出される結論は――
「それが竜なんだね?」
「……どういうこと?」
僕の腕の中で、しんかが尋ねる。
距離が近い。
いい匂いがして、変に緊張してしまう。
「そのままだよ。
あの金属塊が竜だ!」
そして、しんかへの攻撃を見る限り――
「恐らくあれは……竜の頭!」
「ふふふ――よくぞ気付いたな。
お前の答えは千金にも値する」
金属塊――いや、竜の頭部から響く玉桜君の声。
「では答え合わせだ。
ただし――」
山を住処とする土の精霊たちが輝き始める。
それに反応するかのように地が揺れ、遂には山頂が崩れ開く。
「共同戦線!
警戒レベルを最大に!
竜が来るよ!」
山頂が失われる代わりに、一頭の怪物が誕生する。
「五肢試運転終了。
『P.G.D』本格起動開始
いけるわ! たー君!」
「正解したからといって、勝てるわけではない。
お前たちに見せてやろう。
これが私たちの真骨頂!
桃金竜『P.G.D』!」
黄金の巨躯の咆哮。
破壊の桃金が、そこに顕現していた。
――実は流れていた「ろ組」の噂は、全て事実だったりします。
本作『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』をお読みいただき、誠にありがとうございます!
今後も第二章「水の蛇・金の龍」編を頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。
※現在、並行して1話目から編集し、書き直したりもしています。
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