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学年総代決定戦2日⑳~精霊繋装「対牀風雪」~

「これが私の精霊繋装(せいれいけいそう)……」


 精霊繋装「対牀風雪(たいしょうふうせつ)」。


 一見すると、下半身のみの西洋鎧(・・・)


 靴と脛当て鎧(グリーブ)の装備が、膝を超えて腿まで覆い、私のスカートから伸びた脚全体が鎧に覆われている。

 色は元の脛当て鎧の水色から変化はない。

 ただ、周囲は常に風の精霊が漂うことで、常に白く輝いている。

 

「精霊たち――」


 こんなにいたの?


 風の精霊が増えたのか、私がより深く風の(・・・・・・・・)精霊を知覚できるよ(・・・・・・・・)うになったのか(・・・・・・・)

 

 さっきまで、らんちゃんの水の精霊に覆い尽くされていたような大気には、多くの風の精霊たちが私の覚醒に共鳴するかのように息づいている。


 今の私なら――


「世界の果てまで見えそう」


 私の世界が拡張する。


「あ……きょうえい」



 地上にいるきょうえい(きょうかちゃん)見つける(・・・・)


 らんちゃんとの決着はついたのだろうか。


 らんちゃんと空を見上げて、何か楽しそうにやり取りをしているのまですべて見える(・・・・・・)


「それにしても――」


 きょうえい(やつ)は、どこまで分かっていたのだろう。

 まさか私が精霊繋装まで使えるようになるって、考えてはなかったはずだよね……?


「うわっ⁉」


 見えないはずなのに!

 にこりときょうかちゃんに笑いかけられた気がした。

 


「つむじ、風の精霊がすごい」

「ほんと凄いわねえ」


「しんか! きょうかちゃん!」


 空の異変を察したのだろう。

 二人から連絡が入る。


「つむじ……精霊繋装?」

「よくわかったね!」

「私も『比翼連理』持ってるから……お揃い」

「そうだね! お揃いだね!」

「嬉しい」 


「二人共、仲が良いのは良いことだけど――そろそろいいかしら?」

「仲良しー」

「あ、ごめん。きょうかちゃん」


「今日はもう、疲れたわ」

「私は元気」

「しんかちゃんたちは捜索だけだからよ。こっちなんて穴を掘ったり、らんちゃんと戦ったり――」

「雲と戦ったり」

「羨ましい」

「ホント戦い好きねえ」


 まあ、そのおかげで精霊繋装が目覚めたわけだけど。


「でも――そろそろ夕焼けが見たいわ(・・・・・・・・)

「夕焼け好きー」

「……そうだね。私もだよ」


 時間ももう夕暮れ時だ。


 朝から作戦会議が始まって、今の今まで戦い続けている。

 おそらく「に・ほ」組も、限界が近いはず。


「じゃあ、二人とも。私が見せてあげるよ(・・・・・・・)

「楽しみ」

「待ってるわ」


 いい加減「い組」との決着を着けよう。

 私たちの戦いは、まだ続いていくのだから。




 精霊通信をしている最中も、私の周囲は静かだ。


 風の精霊が、常に(・・)私を守ってくれている。


 雲から放たれる氷撃。


 それも全部――意味はない。


 撃ち落とそうとすら考えていない。


 私から漏れ出る風の精霊によって、自然に巻き起こる暴風(・・)

 ただそれだけで、これまで苦戦していた雲の攻撃から守られている。




「これが精霊繋装の恩恵……」


 もう雲の攻撃は怖くない。


 これまでの攻撃は、私に通用しないのだから。


 吹き荒れる雨も氷も、すべて私を取り巻く風に弾かれる。


 けれど――


「さすがらんちゃんだね」


 再度雲が変化する。

 正確には、保有する水の精霊の動きが。


 生み出されるのは、今日初めて見る氷の造形だ。

 無かったのが不思議なくらい、武器に向いた鋭さ。 

 下方に存在するものをすべて貫かんとする、その姿はまさしく――

 

 氷柱(つらら)だ。

 

 これまでの攻防が鼻で笑える程の水の精霊が、あの一本には込められている。


 でも――


「なめられたもんだね」


 雲はこれまで、手加減してたってことだ。


 この私相手に!


 自動制御(オート)雲のくせに生意気な!



 雲は周囲の水の精霊たちを取り込み、氷柱へとつぎ込んでいく。


 けれど、消費する水の精霊量が増えることで、雲本体も目に見えるほど縮んでいく。

 

 

「うーん……」


「対牀風雪」が目覚めたとはいえ、さすがにあの氷柱は危ないかな?


 それなら――先手必勝!


「やらせないよ!」


 強化シーンを待ってあげる義理なんてない!


 氷柱が放たれる()に、私は身を投げ出した。

 突風による加速。


 いつも飛んでいる感覚で、前方に踏み出すと――


 それだけで私は雲を置きざりにする(・・・・・・・)


「わっ⁉」


 勢いが良すぎた⁉


 私は雲を突き抜けていた(・・・・・・・)


 危険だ。これは――


「ちゃんと練習しないと、きょうえいが酷いことになりそうだね……」


 らんちゃんの精霊()が相手で良かった。

 安心して全力が出せる。

 壊しても問題ない。



 雲の水の精霊が輝く。

 それと同時に放たれる氷柱。


 でも――軌道は見えている(・・・・・・・・)


「ここでしょ?」

 

 私の言葉に一呼吸遅れて、氷柱が私の身体の在った(・・・)ところを通り過ぎる。

 

 精霊繋装「対牀風雪」の目覚めと共に、私自身(・・・)の能力も目覚めている――そんな感覚。


「見える……」


 見え過ぎる(・・・)


 次に放たれた氷柱を掴む(・・)


「危ないね……返すよ!」


 そうして、投げ返す(・・・・)


 音を立てて飛ぶ氷柱は雲を貫き(・・)、風を伴って彼方へと消えていく。



「貫いたのに、まだ機能してるんだね」


 次々と空に水の精霊の線を引いていく氷柱たち。

 速い。でも――

 

「もうこれ以上はなさそうだね」


 私には当たらない。

 その合間を縫うように進む。



 とても静かで凪いでいる。

 

 私に見える世界はとても穏やかで……美しい。


「ありがとね」


 巨大な雲の前に立つ。

 もう私たちの間には何もない。


 この雲には感謝してる。


 でも――許せないこともある。


「さて……それじゃあ――」


 力を込めて、せーの!


「私の制服の恨みを食らええぇぇぇぇ!」


 ズタズタにされた制服は高い。


 苦学生の嘆きを思い知れえぇぇぇぇぇ!



 私の「対牀風雪」が横薙ぎに雲を捉えると――


 抵抗なく雲が真っ二つに切断される。


「ついでに行くよ!」


 重ねて3撃。


 雲は文字通り八つ裂きになる。



「もう二度と見たくないからね」


 雲を全て(・・)覆いつくす風の精霊たち。


 恐怖に震えているかのように揺れているらんちゃんの雲。


 安心して欲しい。

 これは瑞風だ。

 私たちにとってめでたい風。


 勝利を示す……私の風だ。

 


「どりゃああぁぁぁぁぁぁ!」


「対牀風雪」は、風の精霊たちの力をもって――


 らんちゃんの雲を跡形もなく消し飛ばしたのであった。

 ――覚醒したつむじさんは、超カッコイイです!


 本作『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』をお読みいただき、誠にありがとうございます!


 今後も第二章「水の蛇・金の龍」編を頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。


 ※現在、並行して1話目から編集し、書き直したりもしています。

 気になる方はそちらもお読みいただけると嬉しく思います!


 感想もお待ちしております!


 評価とブックマークをしていただいた皆様、本当にありがとうございます。

 皆様に読んでいただけているということが、僕の書く意欲になります!

 

 もし『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、今後も本作を書いていく強力な励みとなりますので『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非よろしくお願い致します!


 ではまた次のお話もよろしくお願いします!

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