学年総代決定戦2日⑯~応援~
「『は・に・ほ』全員に通達!
『い組』委員長による雲が上空に発生!
攻撃手段は雨!
当たったら水の精霊で濡れ濡れにされて、刺されるよ!
特に上空で戦闘中の『に組』男子は注意して!」
雨を避けながら、雲へと飛ぶ。
一粒一粒の威力は高くない。
けれど雨の名に恥じない数だ。
これに地上に居る共同戦線組がこれに晒されたら、戦力を少しずつ削られていくのは間違いない。
「おい、海風さんが俺に語りかけてるぞ⁉」
「バカ、俺に決まってるだろ!」
「はあ⁉ アホな男子たちはこれだから……」
「そうそう。海風さんは女子にしか興味ないんだから!」
「「「ええぇぇぇ⁉」」」
混精が激しいみたいで、色々な声が入る。
余裕がありそうで何よりだ。
本当に彼らは戦闘中なのか怪しいけど。
「おい……『い組』委員長に刺されるってマジかよ……」
「どうする? プライド捨てるか?」
「あのお嬢様に貫かれるなら構わないぜ!」
バカな会話をしているのは……「は組」の連中だ。
今日の「は組」の役割は、私ときょうかちゃんを除けば、「ろ組」の捜索。
彼らは今日、こちらとはほとんど関係ないのに、どうして混精が……。
もし彼らが遊んでいたのだとしたら――
リタイアしてくれた方が平和かもしれない。
「働かないなら……ここで引導を」
「か、火光さん⁉」
「ごめん! 許して!」
「「「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」」」
爆音が混精から響く。
天罰が下ったらしい。
けれど――
バカな会話の直後に、私に迫る雨の勢いが増す。
「ちょっときょうかちゃん!
雨が酷いことになってるんだけど⁉
これってもしかして、ウチの連中のバカなやり取りのせい?」
「つむじちゃん……そうよ。
どうやら朽縄さんに聞こえてしまったみたいなの」
「らんちゃんの地獄耳には聞こえてたの⁉ 怖い!」
聴覚や嗅覚に特化しているとはいえ、どれだけ地獄耳なんだ。
「らんちゃんを説得できなくてごめんなさいね。
でも私は貴女を信じている。
貴女なら絶対に雲を止められるわ」
「本音は?」
「私たちの勝利のために、馬車馬のように働いて?」
「この外道!
人でなし!
きょうえい!」
「その言葉と名前を並べられるのは、心外なのだけど」
この子、私を使い潰す気だ……。
幼馴染虐待だ! 訴えてやる!
どこに行けばいいんだろう。
裁判所とかだろうか?
「つむじ――」
「……な、なにさ」
急に男らしい声に戻るきょうえい。
聞き慣れた声なのに、なぜか緊張する。
「不安なの?」
私の目が正しければ……精霊繋装を使用したらんちゃんと同等の量の水の精霊が、発生した雲に籠められている。
あのらんちゃんと向き合った時の絶望感。
死を覚悟しながら彼女の懐へと飛び込んでいったものの――
一度やったから二度目も平気かと言われたら……それは違う。
あの恐怖を知ってしまったが故に……同等の存在に挑むのは怖い。
「不安だったから……どうなのさ!」
「つむじ……不安?」
しんかの声。
先程のクラスメイトとのやり取りから、ずっと繋がっていたらしい。
「でも、つむじなら大丈夫」
「どうしてそんなこと言えるのさ!」
しんかは強いから。
精霊繋装を持っているからそう言える。
でも、私は――
「朽縄さんや、あの雲なんかよりも、炎の魔人の方が強かった。
つむじはその魔人でサッカーしてたから大丈夫。
怖がる必要はない」
「サッカーのつもりで蹴ってはいなかったよ⁉」
「ボールみたいに飛んでた。
火の精霊が散らばって、花火みたいだった」
この子、切羽詰まったあの状況で、こんなこと考えてたの⁉
大物過ぎる。
「そうだね。
つむじの蹴りの被害を受けている僕だから言えるけど、あれは――」
「黒白てめえぇぇぇぇぇ! 海風さんの蹴りを受けてるだと⁉」
「許せねえ! 毎日ご褒美かこのクズが!」
「つーか今日どこに居やがる! 処刑してやる!」
「今すぐ腹切りしろ!」
「うるさいバカ共! 今話し中!」
静かになる。
なんだかんだと委員長命令は聞くみたいだ。
「……きょうえいの変態」
「誰が変態だ!」
思わず笑ってしまう。
中々のピンチなのに、彼らのいつも通りが頼もしい。
「まったくもう――つむじ!」
「何?」
「僕たちが保証するよ。
君にならなんでもできる。
だから――頑張れ」
本当に不思議だ。
ただの普通の応援なのに。
いつも言われているような、何でもない言葉なのに。
……声を聴くだけで勇気が湧いてくるのだから。
「……了解! 楽しみにしててね! 皆!」
「「「行け! 海風書記!」」」
雨は未だに降り続いている。
それでも私の心は軽い。
これから晴れた空が見られるのが楽しみだ。
――皆の応援が彼女の力になります。
本作『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』をお読みいただき、誠にありがとうございます!
今後も第二章「水の蛇・金の龍」編を頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。
※現在、並行して1話目から編集し、書き直したりもしています。
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