学年総代決定戦2日目⑫~勝つ方法はないのか~
「容赦ないな……」
動き回っていても、私に向けて穿断水をじゃんじゃん撃ち込んでくる。
こちらが攻勢に回ろうとすれば、精霊を撃ち抜き――止める。
「なら……精霊切れを狙う……?」
それも無理そうだ。
精霊繋装「刎頸之交」。
あの薙刀によって、らんちゃんの精霊量は常識外のレベルにまで高まっている。
その上、穿断水は水の精霊量の消費は少なくて済む。
私の攻撃の先読み。
それに合わせての迎撃と牽制。
常に飛び続けなければならない私の方が、先に力尽きるだろう。
「らんちゃん、そろそろ疲れたんじゃない? 一旦休まない?」
「貴女を倒したら休みますの!」
駄目か。
それどころか――私への攻撃が激しくなった気がする。
不規則に動き続ける。
何か手はないか。
「風よ!」
「無駄ですの!」
やはり風を起こす精霊たちを撃ち抜かれる。
私の風は不発に終わってしまう。
でも――
無駄じゃない。
「つむじさん――貴女!」
「どうだいらんちゃん! これは迎撃できるかな?」
何十――何百――何千!
風の精霊たちを同時に動かす。
らんちゃんへの攻撃ですらない。
ただほんの少し、風を起こすだけだ。
しかし彼女は、全て撃ち落としていく。
「私のスタミナ切れ狙いなら、無駄ですのよ!」
「無駄かどうかは分からないよ?」
そんなことは分かっている。
私の狙いはそこじゃない!
軽口を叩きながらも、私の風の精霊たちは撃ち抜かれ続ける。
「手数が多いですのね! さすがの軽さですわ!」
「この程度で軽いなんて、重女は違うね!」
「重女っていうなですわ!」
その手数を全て潰してくる人が何を言ってるんだか!
空に何百、何千と糸を引いていく水の精霊たち。
それらは私の風を余さず撃ち抜いた結果生じたものだ。
でも……数多の風は囮!
私はまた行くだけだ!
「行くよ!」
「⁉」
私の動きを、彼女は敏感に察知する。
しかし――
「なんて膨大な!」
「くっ!」
大量の風の精霊を、らんちゃんは迎撃せざるを得ない。
風の精霊の起こりを感じているらんちゃんは、どんな風が起こるかまでは感じられていない。
さっきまではできていたのに。
その理由は恐らく――
「はあぁぁぁぁぁ!」
「まだ諦めませんの⁉」
精霊繋装「刎頸之交」。
水の精霊に特化した薙刀によって、水の精霊量が増えすぎたがために――風の精霊への繊細な感覚が失われているのだろう。
海に一滴酒をこぼしたところで、海に変化がないように。
攻撃とそれ以外を判断することができない。
故に躱せる!
「1!」
2、3、4!
私への穿断水は、囮につられて減っているはずだから!
加速と停止を繰り返し――
私を通り過ぎていく水の糸を数える。
「集中! 集中!」
一手誤れば……怪我では済まない。
自身の鼓動まで聞こえてきそうだ。
10を超えて――
「届け!」
「そうはいきませんの!」
「⁉」
斜め下から薙刀による切り上げ⁉
どうにか脛当て鎧で防ぐ。
けれど――堪えることはできない。
「ぐあっ!」
薙刀の勢いのまま、空中へと打ち上げられる。
それでも止まるわけにはいかない!
「私の『刎頸之交』を相手に、ここまで粘れることがすごいですの」
「褒められてる気はしないねえ!」
「でも……残念」
「どういう意味?」
らんちゃんから放たれる穿断水を躱しながらの問答。
大分タイミングはつかめてきた。
形勢は私に傾いてきてるはずだ。
次は必ず彼女を捉える――
「もう終わりですの」
「まだま――」
痛い⁉
切り裂かれた方とは逆の肩に、突き刺さるような痛みが走る。
「どうして⁉ らんちゃんは――」
穿断水を放っていないのに⁉
「くっ⁉」
「無駄ですよ」
移動しようとして再び水が刺さる。
肩を切り裂かれた時よりも、痛みは少ない。
でも――らんちゃんからは何も感じられない。
「うっ⁉」
拳にまで水が刺さる。
これは――
「まさか……上⁉」
「気付きましたのね……空はもう満ちました」
快晴だったはずの空には雲が。
大量の水の精霊を保有しながら、浮いている。
――幼馴染同士のプライドをかけた戦い。
本作『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』をお読みいただき、誠にありがとうございます!
今後も第二章「水の蛇・金の龍」編を頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。
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